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心照古教〜『大学』を考える〜【二八】

天下を平らかにするには、

本文

所謂いわゆる天下を平らかにするには、
其の國を治むるに在りとは、
かみ ろうを老としてたみ孝におこり、
かみ ちょうを長としてたみていに興り、
かみ あわれみてたみそむかず。
これもっ君子くんし絜矩けっくの道有るなり。
上ににくむ所を以てしも使つかなかれ。
下に惡む所を以て上につかうる毋れ。
まえに惡む所を以て後にさきんずる毋れ。
うしろに惡む所を以て前にしたがう毋れ。
右に惡む所を以て左に交わる毋れ。
左に惡む所を以て右に交わる毋れ。
これ絜矩けっくの道とう。

「大学」

我流訳文

八条目の「天下を平らかにするには、其の国を治むるにあり」とは

君主が
老人を老人として敬意と労りを持って大切にすると、
民は自ら自分の親への孝養こうように励むようになる。

君主が年長者を年長者として大事に扱うと、
民は自ら兄や姉に対して素直さと情愛を見せるようになる。

君主が孤児を憐れんでよく面倒を見ると、
民は心から君主に従うようになる。

だからこそ、
君主には、君主として拠るべき基準となる道がある。

自分が
先輩や上司からされて
「こんちくしょう」と思うようなやり方で
後輩や部下を扱ってはならないし、

後輩や部下からされて
「それは酷くない?」と思うようなやり方で
先輩や上司に対応してはならない。

自分が
前任者からされて
「えぇ…無茶ぶり…」思うような引き継ぎを
後任になる人にしてはならないし、

後任になる人からされて
「こいつに引き継ぎたくないな」と思うようなスタンスで
前任の方に臨んではならない。

左右にいる隣人にもそうで、
相手の心を思いやって、自分が他人からされて嫌なことを自制することだ。

天下の人心は墨金すみかね(建築で、曲尺かねじゃくを使って必要な線を木材に引く技術。絜矩)のように相通じるものだからだ。

思うところ

君子と言いながら、
会社人間的な解釈をしてしまいました。
心を照らすための読み解きだから、ということでお願いします。

これをしようとするとなると、
やはり素直に真剣に
自分にあたわったものに向き合い続けていないと
難しいと思います。

心の持ちようは
日頃の所作とか言動でバレるのが人間社会ですし、
仮に、本当の気持ちを
自分でも気づかないくらい深層部に隠していても、
自分を偽ることで体に悪影響がでて
長く続けていられなくなるからです。

後輩・部下・後任者に
「こんちくしょう」とか「無茶振り…」とか思われるような
仕事の仕方がどんなものかを思い浮かべてみると、

表面上の誤魔化し方を覚えたことで、
芽生えた「侮り」の感情に流されるままに
いい加減にこなしていた日頃の皺寄せが
人前で明るみに出そうになった時、

・誤魔化すために立場が弱い者に責任を着せる
・もしくは立場が弱い者へのマウントで、論点をずらそうと試みる
・対処できないことを手近な相手に押し付ける

という形で現れるんではないかと想像されます。

私が会社で働いていた時は、前任の方に恵まれていたと思います。
「どういう機能のためにする仕事か」ということを
理解してやっている方たちだったから、
引き継ぎの時も頼もしかったし、
多くの人が関わるために起こっている複雑な事情への対応も
教えていただけました。

そういう方達を知っていたから、
後任の方への引き継ぎの時
どうすればわかりやすいかという発想ができたし、

日頃、表面上で誤魔化しながら
仕事の意味を理解しないでいい加減に時間を潰している人が
窮地にとる言動に対して、

適度な距離を保ちながら
冷静に対応ができたんだと思います。

…日頃の怒りの抑圧による消耗が激しくて
ダウンしましたけど。

なんであれ、
実務に誠実に向き合っている人を大事にして、
誤魔化しで世を渡ろうとする人を反面教師にしていれば
人間関係での間違いは起きないと思います。

…惜しむらくは、
当時の私が「自分の感覚」に誠実に向き合えていなかったことです。
迷惑を被っている相手とも調和を図ろうとして
怒りの感情を呑み込み続けた結果、
力尽きることになりました。

反動による完璧主義で
自分をキリキリ締め上げていたからです。

→君子は誠実に、かつ、ゆったりと構えている


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