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「よりそう~手帳と万年筆のちょっといいはなし~」第1話

「うーん、どれもいいなぁ」

スーツ姿にビジネスバックを持ったまま、銀座で一番大きいステーショナリーショップの年末のシステム手帳フェアにやってきた。いつもの3階ではなく、フェア用の10階には、3列の棚には、すべてがシステム手帳が並べられており、やさしい色の革やきらりと輝く艶のある革など様々な革で作られたカバーが並んでいる。オレ、雲川竜馬は、もうすぐ閉店にもかかわらず、どれにするか迷い、棚を何周も回っては、いくつかのカバーを手にとっては、棚に戻して、もう30分以上経過している。

定番の有名ブランドから、国内クリエイターによる一点物まで、サイズもA5サイズからM5と呼ばれる(10センチくらい)のスーツの胸ポケットにも入りそうな手帳まで、たくさんの種類が並んでいる。さらにカラーのバリエーションまで入れると、、

(何種類あるんだろう。
会社でも使えて、できればいつでも持ち歩きたい。だけどちゃんと書き込めるものがいいなぁ・・)

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なかなか決めきれないでい竜馬に、

「どういう手帳をお探しですか」と女性スタッフに話しかけられた。

髪をポニーテールにまとめ、黒縁眼鏡をかけ、エプロンをしている。エプロンには高級そうなペンが2本差してある。結城さんというらしい。いかにも、ステーショナリー売り場の女性。あとで知ったが、実は、手帳のガイドムック本に何度も登場している手帳のスペシャリストの人だ。

「仕事でもプライベートでも使えて、持ち歩きやすくて、でもしっかり書き込めるみたいな。。。なんか贅沢なこといっているなぁ、すいません。」

「いえいえ、わかります。システム手帳を購入されるのは初めてですか?ほかに使っている手帳やノートはありますか?」

「仕事では会社で購入しているノートにメモくらいですかねぇ。」

「プライベートで普段使いのノートとかはしてないですか?」

「何かメモとりたいときは、スマホのアプリでいいかって思ってますけど、ほとんど使ってないですねぇ。」

「なるほど、なるほど。

お聞きしている感じだと、おすすめは2パターンですね。」

そこにあったっけという感じで大きさの違う手帳カバーが女性の後ろに用意されていた。

「こちらのA5やHB×WA5というような大きい手帳にノートの用途もこめて全部1冊に詰め込んでしまうか、マイクロ5やミニ6のような小さめのシステム手帳を母艦として、もう一冊ノートは別に持ち歩くパターン。」

「HB? 母艦?」 

聞いたことのない単語が連続で登場し、ややドン引くオレ。。
(普通、こういうときって商品の説明しないか。なぜ手帳の概論から。。)

「お仕事は外回り多めですか? プライベートのノートを開いたりはしにくい環境です?」 彼女の質問は止まらない。早く帰ってほしいのだろうか。

「そうですねぇ、外出はちょこちょこくらいですけど、プライベートのノート開いている人はあまり多くないんです。基本みんなPCにメモを取る人がおおくて。ただ、上司が机に置いている手帳がいい感じに味がある、仕事できる人みたいな感じで格好いいんですよ。もちろん仕事もすごいできるんで、自分もああなりたいというか。。。」

目をつぶりながら、うんうんとうなづいていた店員の女性が、パチッと目を開き、

「わかりました。ずばり、お伝えします。
あなたに向いている手帳は・・・・」

(えええ、自分で決めれないのぉ)

<第2話に続く>

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