力石先生、ロボットと人間って何が違うんですか?(前編)

2020年2月1日(土)放送分 ザックリ文字起こしバージョンです。

【登場人物】

力石武信先生(ちからいし たけのぶ)東京藝術大学でロボットを使った芸術を研究している研究者。ロボティシスト。プロフィール

樋口一(ひぐち はじめ)シンガーソングライター。実はTI系出身。この番組の生みの親です。音と動画のコンテンツ担当。Twitterはこちら

高山由香(たかやま ゆか)理系のライター、エッセイスト。テキスト系コンテンツ担当。ホームページ

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<はじめに>

第1回はロボットと人間は何が違うんですか?をテーマにお送りしたいと思います。

樋口)この間見せていただいた人間そっくりロボットっていうのは、 人間そっくりでしたよね。息をする肩の動きとか。

最初から核心からいくんですが、リスナーの皆様的には、テレビラジオでロボットのことを聞くけれど、何が昔と今と違う?とか、ロボットてナンダ?っていうことがワカラナイかたも多いと思うのですけれど、いろいろ種類はあると思うのですが、今回は人型ロボットに特化して話したいと

そして、分類としては、ロボットのカラダ、知識、心、自我に分類して、人間と比較していきたいと思っております。

<見た目のこと>

樋口)まず、カラダについてなんですけど、わたし、藝大で非常に精巧なのを見させていただいた。人間ソックリですよね。何にもしていない時が一番ホントそっくりで、すごいですよね。瞬きしたりとか、肩ね、息、動いたりするんですけれども。そこまで再現できちゃったら、ロボットのカラダは人間と大差ないって考えちゃって良いんですかね?

力石)それはちょっとまだまだ足りなくて。人間の体ってとっても複雑で、医学部とか行くとねその骨の名前とか筋肉の名前とか、覚えるだけで凄く大変ですよね。この前見ていただいた人間そっくりロボットっていうのは、 動かせる関節が19くらいしかなくって、人間に比べたら全然圧倒的に少ないんです。

樋口)少ないんですね!

力石)はい、少ないんです。 動く仕組みももちろん全然違って、 成分も、有機物かミネラルでできているかが違う。細胞で動いていて、怪我をしたら細胞が修復できますというのが(生物)。 あのロボットはシリコンと金属と、 エアーアクチュエーターという空気圧で制御するというものでできているので、見た目は人間に似ていますけれど、中身は人間と全然違います。仕組みが違うんです。

樋口)成分も筋肉と 部品で、 模倣はできるけれど、ものは違うよということですね。

<脳味噌の方は…?>

樋口)次ですね、『知識』。AIを含めてですね。SiriとかAlexaを相手にしていると、「もう自然な会話デキルじゃん!」って感じます。自然な会話ができるレベルだって考えちゃって良いんですか?

力石)そうですね、SiriとAlexa、とおんなじプログラムを入れることは出来るので、SiriやAlexaと同じように受け答えできるかもしれないですけれど、それとイコールでロボットに心があるか。例えば、『お前のこと嫌いだよ』っと言って、悲しい気持ちになるとか、『きみのこと好きだよ』って喜ぶとか、そういう心の動くっていうことは、まだまだ出来ていなくて。単に、パターン認識で言葉を拾うっていう、まだそれだけで、それに対して、反応は蓄えられているデータベースから取り出して、アウトプットするということはできる、と。

樋口)なるほどね。
知識として、こういう風に言われたら、こう喋るよっていうデータから持ってきているだけで、別に考えているはない、と。

力石)そういうことですね。

<じゃぁ、心の方はどうなの?>

樋口)まさに今、話にも出てきたのですが、心・自我ですね。心・自我っていうのは哲学の域に入ってきちゃいますよね。

力石)そうですね。

樋口)ロボットで果たして心・自我があるのか?持てるのか?っていうのがあるのか、持てるのか?ってう話なんですけれども

力石)そこの話が複雑でして。まず、ロボットの前に、人間、自分のことを考えてみたい。僕っていう人間がいて、僕の中に心があるって、僕が感じるのは当たり前。

樋口)はい。

力石)誰にとっても、心が1コあるって感じていると思うんですけれど

樋口)はい。

力石)じゃぁ、僕という人間が別の人と向き合ったとき、別の人の中に心があると分かるのは、多分、直接分かる訳じゃなくて、ただの想像、ですよね。

樋口)あー、相手の顔の動きとかを見て

力石)そうですね。例えば、涙を流しているっていうことは、きっと、この人はきっと悲しいのだろうと想像する。
 けれども、それは、相手の心が分かったのでではなくて、自分の心の中に涙を流して悲しい経験があるから、

樋口)あーー、はいはい

力石)相手の見えている振る舞いが、自分の心に結びつけて考える。

樋口)追体験というか、そういうことですよね

力石)そうです。これは、帰属っていうんですけどね。
相手の気持ちを自分の方に帰属させているだけで、相手の気持ちをテレパシーとかで感じている訳では無い。

樋口)なるほど。仕草とか、そういうモノで感じているということ。

力石)そうです。

樋口)でも、その仕草、人間はその木元を以て仕草をするけれども、ロボットはそれを意識があってやってるわけではないですよね?

力石)そうです。ロボットは、そういう風に制御するプログラムを書いて、あたかも人間がやっているのと同じように見せている。そういうために、意図的にプログラムを書いている。

樋口)ほーーー!

<これからの進歩って、どうなるだろう?>

樋口)今後ですね、心とか自我とか持たせることができるとお考えですか?

力石)それは、なかなか難しい問題ですよね。

樋口)はい。

力石)哲学者から、賛否両論ある話で。

樋口)持たせない方が良いとか、そういう話ですか?

力石)いや、可能かどうか。

樋口)可能かどうか?

力石)一つ言えるのは、未来のことは想像するのが難しいので今の技術だけで考えると、僕らが今使っているコンピューターっていうのは、ユニバーサルチューリングマシーンっていう数学モデルの末裔なんですね。

樋口)ユニバーサルチューリングマシーン…

力石)それはどういうモノかというと、チューリングさんっていう人がかんがえたんですけど、「どんな数式でも、このマシンを使えば解ける」っていう計算機なんですよ。

樋口)ユニバーサルチューリングマシーンっていうのは、要するに計算機なんだ。それが、今の、とっても素晴らしい計算機がロボットなんだと?

力石)そうですね、ロボットの中身ですね。逆に言うとです、数式なら解けると言うことは、数式になっていないモノは何も解けない。

樋口)あーー

力石)数理モデルになるモノは、コンピューターに扱えるけれども、モデルにならないモノは扱いずらい。

樋口)心と哲学が数理モデルにならない限りは無理だ、と。

力石)そうですね。僕らの心はどこにあるか。いくら考えても…。僕らが、心が今ここにあるっていう気持ちが、本当に脳という物質に宿っているのかっていうと、それはみんななんとなく『そうだな』っていっているだけで。

樋口)そうですね。本当にそうかは、

力石)証明は、なかなか難しいですね。

<できるの?でいないの?なんでやっているの?>

力石)ましてや、それを数理モデルにするなんていうのは、追いついていない話で、数理モデルを作れていない状態で,今のコンピュータに心が宿るって考えるのは、ちょっと浅はかかなぁと。

樋口)持てるとか、持てないとかの前に、定義出来ないだろうと。
 これですね、ロボットなんですけれども、心自我の話になってきたんですけれど、力石さん自身は、何故ロボットを作ろうと思ったのですか?

力石)僕自身も、なんかワカラナイけどやっているんですけど。ただ、自分に似たものを作るっていうのは、自分をもう一度考え直すきっかけにはなりますよね。

樋口)確かに、言われてみないと、自分はどう意識しているのか、なんでそう『自分には意識がある』と言い切れるのか?考えたこともないですね。

力石)さっき、あの、ロボットがまがばきすると自然な感じがしましたねって

樋口)はい、はい

力石)じゃぁ、どうやって動いているから自然なのか?とかね、僕らは普段自分でどうやってカラダを動かしているかって、

樋口)たしかに

力石)知らない人が来たときに、こういう顔を僕はするのだろうか?だれか、するのだろうか?とか、親しい人にはこういう顔を見せているとか。
 一から、こういうロボットを作っていくっていうことを考えると、もう一度自分を考え直すきっかけにもなるし、人間ていうモノを考え直すっていうのは、結局のところ人間に対する問いであり、哲学であり、科学であり、それが芸術。

樋口)なるほどねー。
しかし、そのロボットで、しかも人間に近い形をえらぶっていうのが面白いですよね。

力石)そうですね。ま、それをやり始めたのは僕の恩師なんですが。昔から、概念として、人間そっくりのロボットっていうのはSFの世界で随分出てきている。

樋口)そうですよね。漫画とかね。

力石)そうですね。人間と区別がつかなくなっちゃうような神話なんて多分あると思うので、そうすると、今の問いにかえって来ちゃうんで寸けど、見分けがつかないですよ、と。
 で、ロボットと人間って何が違うんですか?っていうところにかえって来ちゃうんですよ。やっぱり、心自我が数値化出来なくて、それを持つかどうか?というところに尽きるんでしょうか?

力石)尽きるかどうかもわからない。

樋口)ハハハ!
 そうか、そこまで、逆に、我々が人間を定義出来ていないから…

力石)人間を見たことない宇宙人に人間を説明することは、僕は割と出来ないと思うんですよ。

樋口)できないですね!同動物と違う高等なモノだって自分たちは思っているけれど、果たしてそうなのか?何故そうなのか?っていうこと

力石)ですよね。

樋口)はーーー!ここにロボットが来るわけですね。
 ロボットだから人間に似せていくと、人間が分かるかもしれないということなんですね。

力石)もっともっと先を考えていくと、これが、
どういう風に暮らしていくと良いのか、どういう風に生活すると良いのかというのを考えると、だんだん、どんどん、自分の人生に近くなりますよね。

樋口)はーーーなるほどねー。
 でも…、これを、考え始めると、分かっちゃうのかな?って分かっちゃうのかなって、思うんですよね、心って何かが。で、数値化できたら、結果的に、ロボットが人間になっちゃいますよね?

力石)まぁ、それは、夢の夢…

樋口)面白いですよね。こういう研究を続けていくと、そんな夢も夢じゃないような気になってきますよね。

力石)そうですよね。

<結局、人間を探求しているの?>

力石)だけど、中身を考えるというよりは、僕は藝術としてロボットを扱っているので、外から見た人間を考えて。外から見た人間を人間にすることによって、もう一度みんなが自分を考えてくれると面白いなと思っています。

樋口)あーーーー、「ハッ」とするんですかね。これは人間ぽいって思って、『何で人間ぽいんだろう?』ってそういう考え方をする

力石)そうですね。だから、人間ってなんだろうって、多分、時代によって全然違うし。今、この時代は人間に似たものを作れるようになったので、もう一度人間っていうのを考え直すっていのが、きっとことができるのかな。

樋口)はーーーなるほどねー(゚ロ゚)
 どうしてか、気持ち悪いって思うことありますよね、人間に近づいてね。それも、なんだろう?おんなじ、近くなってきている、今のところは離れているけれど、近くなってきて、それを怖いと思うんですかね?

力石)そうですね。それもいろんな仮説が出されて入れ。ちょっとだけ似ていると気持ち悪く感じるのだけれど、本当に似ると、、もうその感情も無くなるといわれている。

樋口)えええ?
 そんな日が来るんだろうか?

力石)来るんですかね?

樋口)もしかすると、すぐ10年、20年後に来るのか…後半では、もっと掘り下げていきましょう。

CMでーす!




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