Last Letter, Love Letter 【#短篇小説】
"Last Letter, Love Letter"
「それじゃあね」
そう言って彼女は涙も拭かずに背を向け、少しだけ高いヒールを鳴らしながら駆けていった。
果たして、封筒ひとつを手に持ったまま「うん」と頷いた僕は、彼女の視線に収まっていたのだろうか。きっと、ピントも合っていないだろうし、手ぶれだってひどいはずだ。もう彼女の中には、僕を収めておけるくらいの隙間なんてありやしないのだ。
もう一度だけでも話をしよう——。
そんな考えは、結局甘いのかもしれない。
せ