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失った腕(詩)

芳しい薔薇の花
黄昏の底なし沼に
実体のないものは引きずり込まれ
秒刻みで容ちを失う皿
刻を射る弓を取り出し
無口な影となってゆく
彼の人の後姿のまぼろしを
的にして倒れた薔薇
ー花を数えるのは
 一輪、二輪、ではなく
 ひとり、ふたり、という
 ひとり、ふたり、
 さんにん、よにん、
首のもげた穴があく
黄金の穴があく光り
ー真実を知っているわけではなく
 嘘を言ってるわけでもない
なくなったものはもとへ戻らず
太陽が沈むままに闇へ沈んだ
そういう世界がかつて存在した

森 ルカ

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