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エロビデオ屋の独白#4「対決!ゼロパーセント爺」

最近質問箱を設置しました。気軽に投書してくださいね。

早速質問が届いたので返答させていただきます。

ありましたよ面白いこと、それも職場でね。
というわけで、そのことをお伝えいたします。

11月26日土曜日。いつものようにフロントに立ちながら「今日はもう誰もこないでくれ~」と呟いていると、願い虚しく来客を伝えるチャイムが鳴った。

ピンポーン♪

「いらっしゃいませ、まずはお好きなDVDを6枚までお選びくださいませ」

通常、客はDVDを選んでから代金を払って入室するのだが、その客はフロントにいる私に一直線で向かってきた。

「60分で」

しゃがれた老父がそこにいた。うちの客層は40から60代が主だ。なのでこの老父のような声の枯れた白髪の客も別に珍しくはないのだが…

私は体に染みついた接客を反射で行った

「お煙草は吸われますか?」
「はい?」

聞き返された。そんなに聞き取りにくい声量・声質ではないと思うのだが。
まぁここまでは別段珍しいことではない。前述のようにこの店は耳の遠い老人の来客も多いからね。

「お煙草は吸われますか?」
「あぁ、吸いません」
「それでは、現在空いているお部屋が3番タイプになりますがよろしいでしょうか」

1番タイプがリクライニングチェア、2番タイプがリクライニングマット、3番タイプがフラットマット、このうち3番しか空いてませんがよろしいですか?と尋ねたのだが…

「3号機?」

予想外の返答をされた。ロボットとかパチスロの話はしてないよ、お爺ちゃん。

ごめん、ちょっとめんどくさくなってきたから雑に入室処理は済ませちゃうよ。

「それでは3番タイプのお部屋にご案内させていただきます。代金550円でございます」
「はい」

頂戴した550円をレジに放り込み、伝票を爺さんに手渡す。

「退室予定時間が1時間後、301号室をご利用ください。ごゆっくりどうぞ」

最後の方は投げやりになってしまったが、なんとか入室処理を終えた。
あとは陳列されたDVDを爺さんが選んで、それにかかった鍵を外してそれで一安心、となるはずだったのだが、何分経っても爺がわたしの元にやってこない。あぁ、爺さんDVDの鍵を外さずに部屋に入ったな。

~~~
10分後。爺さんが鍵のかかったままのDVDをもって私の元にやってきた。

「このDVD開かないんだけど」

うん、でしょうね。私は爺さんの目の前で鍵を開けながら
「私の元に来ていただけないとDVDの鍵は外せませんよ」
と説明する。

「……(パカパカ)」

あ、これ理解ってないな。不服そうに鍵が除かれたDVDケースをパカパカしながら爺さんは部屋に戻っていった。

DVDの鍵というのはケースに埋め込まれているコレのこと


~~~
15分後。
掃除から戻ってきた同僚の金丸さんと談笑していると、爺さんがフロントに再びやってきた。

「使い方わからなかったので帰る」

爺さんの手元には鍵の開いたDVDのケース(中身は空)と、鍵のかかったものが2枚。
それを受け取り退店処理をする。

「あ・・・ありがとうござぃやした~」
「ンフーッwww」

横にいる金丸さんが笑いを抑えきれずに吹き出してしまった。この人は客だとか年功だとかは関係なく、気に食わない相手を嗤う人である。

「あの爺さんにはちゃんとDVDの鍵のことは伝えましたからね!?」
「ハイハイwww」

金丸さんは笑いながら爺の使った部屋を掃除しに行った。

~~~
5分後、掃除を終えた金丸さんが戻ってきた。

「ゼロパーーセントッッッ!」

彼が突拍子もないことを言い出すのはいつものことなのだが、今回は私にもなんとなく意味が通じた。

「えぇーっと…もしかして…」
「ゼロパーセントだったよゼロパーセンッ!」
「デッキの使い方がわからなかったか~」

曰く、部屋には電源の付いたTV、その傍にむき出しのDVDが置いてあったとのこと。

部屋のテレビにはDVDデッキとパソコンが繋がれていて、客の用途によって入力切替を行うのだが、そのことを知らない客は結構いる。
その時は部屋に備え付けられた内線でスタッフを呼びつけて、嫌々スタッフが入力切替のやり方を教えに行く。私の同僚(店長も含む)は爺さんが大っ嫌いなのでその仕事を大体私に押し付けてきて、私はヤレヤレとため息をつきながら対応に向かうのである。

がしかし、今回の爺はスタッフを呼びつけることもせず、AVでツコることを早々に諦めて帰ってしまったのである。もうちょっとだけ丁寧に当店の利用方法を説明しておけばよかったと雀の涙ほどの後悔を憶えた。


しかし。こんなことはnoteに書き綴らなければ1週間で忘れることなので・・・

「でもテレビの電源はついてたし、ゼロパーセントではないかw」
「そうですね、5パーくらいッスかねw」

どうでもいっか。こんな感じで笑顔と愚痴が絶えない職場である。
筆者は今日も楽しく生きてます。

続く










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