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ダンボール

私の部屋に大きな箱がある
ダンボールの箱

それが狭い部屋の中で場所をしめており
ベッドと机の間にあるので机を使うことができない。
ジャマなら放せば良いのだけれど、そういうわけにもいかない。
それに不便なら不便なりで慣れてしまっているのだ。
この「慣れ」というのがタチが悪い。
「無関心」と言われても仕方がない。

その箱は私が実家に戻る際の引っ越しに使ったもので
ホームセンターで買った無地のダンボール。

行きつけのスーパーで空ダンボールを分けてもらえないこともなかったが
考えることは皆同じということなのか
適当な大きさのものは、残っておらず
ペットボトルが入っていた細々したものがほとんど。
そこそこに大きさがあっても
ポテチが入っていたような薄いダンボールも多く
強度に不安があり、中身に詰めるものによっては底が抜けかけない。
近場の個人スーパーでは
外に山積みの空きダンボールも有料で商品としていた。

「ダンボール一つ百円です」の貼紙
そんな高いのいらないよ!
誰もがそう思うだろうに
案の定、買い求める人は少なく
店の間口を埋めつくすほど積み上げられて
なんのお店かわからないほどだ。
同じお金出すなら
無垢のダンボールのほうがいい。
幸いにして新年度が近づいてくると
ホームセンターの暖房用品特設コーナーは
引っ越し用品や新生活用品が並び始める。
そういうところで扱っているダンボールは
大きさも選べて強度も申し分ない。
お店を何度か往復し
伸したダンボールを買い求めて引っ越しの準備をした。

ずっと札幌で暮らしていこうと決めていたけど
毎日終電(地下鉄)の終電ギリギリまで仕事なことも多く
漠然と夢は持っていたけれど
自分すら見失っているうちに、なんだかどうでも良くなって
そこまでこの地にしがみつく意欲は失ってた気がする。
ようするにヘタレちゃったってだけのこと。
休みの日といっても自分のものじゃないって感じだったし…
そのころは同系だけど他所の学校の
およそ美系とは思えないROCKな男子とダラダラ付き合ってて…
まてよ、ホントに付き合ってたっけかな? 
そういう関係じゃなかったかもしれない。
ただ一緒にいただけw
好き放題にされてたけど、その時はそうは思ってなかった。
それ付き合いに嫌気がさして引越を決めたわけではなく
この街が、なんとなく私のいる場所ではないと思い出していたのです。
 
大好きなお店 大切な親友
歩き慣れた小路 いつも見上げた町並み
当たり前のありがたい朝
そういうものから離れてみたかっただけかもしれないね。
次のことなど全く考えておらず
家には、いきなり「私帰るわ…」と強引な帰郷して数年。
身内のコネみたいなこともあって今の職場です。

すっかりこっちの暮らしに慣れて
こっちでのキャリアが増えていますが
いまだに引越の荷物は解き終わっていない。
それが例のベッド脇の箱。
置き場所がないわけではなく
中身を出しておくわけにいかないのです。

だって屍体だもの 人形じゃないんだから

椅子に座らせたり 抱きまくら風にベッド脇に置いておくものではないでしょう?
適切に葬るべきだったけれど無に帰してしまうのだけは気が引けた。
かといって永遠にかたわらに置いておくつもりもしていなかったのに…。

箱は引っ越し準備の時にテープで封印したまま。
封印したガムテープの糊も劣化してきたようで
端の方がベタベタしてきている。
あまりに時間が経ったので
箱詰めしたときのことも何だかおぼろげになってしまってます。
たしか…白系のニットのワンピース姿で、髪はストレートでロング。膝を抱えてうずくまる状態で座らせてあり、泣いているというよりも
うたた寝している感じがしてた。

あぁ 大事なことを話していませんね。
私が殺したわけではないです。 たぶんw
誰かが殺したクックロビン …でなくて
殺されてたんだっけかなぁ…
正直、はっきり覚えてないです。無責任ですが…


箱に納めたあと、隙間はすべて花で埋めました。
花といっても色紙を切り抜いたものです。
のんびりするほど時間があったわけではないけれど
ずいぶん手間をかけたと思う。
残念なのは、量に申し分なかったけれど
箱の高さが少し足りなかったのと
姿勢が姿勢なので頭頂部から後頭部は埋めきれず
その状態で封をしました。

開けて今の状況を確認したいところですが
花の中から掘り出して、その表情を身体を確認したいところですが
何も変わっていないでしょう。屍体なんだから。

それよりも対面した時に
彼女になんの感情も湧いてこないことの方が怖いのです。
感激も悲しみも思った以上に乾いていて
躊躇なく処分する気になってしまうことが恐ろしいのです。
やっぱりジャマだ!とメチャメチャに破壊して
どこぞに埋めに運んでしまうかもしれないです。

物言わぬ躯に過ぎませんが
その屍体は私自身なのですから。

というような自分の遺体と対峙して悩んでいる夢を見ました。
初夢ではないですよ。去年見た夢。

でも、こんな夢ってすっごい過去に執着してるみたいで
断捨離下手そうな気がしますw
シリアルキラーとは「めっさシリアルを食べる人」
と思っていたことがありましたが
それも今では良い思い出です。

箱?

そういう箱は確かにありますよ。ここに…

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