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建築学科の都市計画・都市デザインだから学べること

先日、日本大学理工学部のオープンキャンパスがありました。その中で、私は日本大学理工学部建築学科スペースを運営している1人です。

そこで、高校生の皆さんによく質問があるのは、

建築学科の都市計画とまちづくり系の学科、どこが違いますか?

というものです。
確かに、中から見ると違いはわかるけど、それは学んでいるからであって、学ぶ前に、外から見るのでは、違いがわかりにくいよね、と思ったわけです。

そこで、今回は、「建築学科の都市計画・都市デザインだから学べること」をまとめてみたいと思います。

以下は、この手の話のお決まりの但し書きです。

※この記事は、あくまで個人の見解です。
※説明のために他学科の話が出てきますが、良い悪いの評価はしておりません。そもそも良い悪いはなく、自分に合う合わないの話なので、その点を踏まえて読んでください。

ちなみに、受験生向けには、スタディサプリ進路にて、建築学科教員が発信をしています。建築学科で都市計画・都市デザインを学ぶことに対して、ヒントにご活用ください。

建築学科といっても、大学によってそのあり方は多様

まず、いいたいこととしては、一重に建築学科といっても、大学によってそのあり方は多様です。私自身の経験として、日本大学理工学部建築学科、明治大学理工学部建築学科、東京大学工学部都市工学科の3つの大学に関わり、そのうち、2つの大学の建築学科に関わってきました。大学は国立と私立大学で人数規模や雰囲気、仕組みなども異なるし、私立であっても大学には独自の文化や慣習があります。

なので、建築学科といっても、その大学の建築学科のホームページやカリキュラム、授業の内容(シラバス)、教員や研究室構成をよく調べておくといいと思います。

建築学科の中の都市計画・都市デザイン

建築学科は、建築学の多彩な専門分野を網羅して学修するようなカリキュラムが一般的です。例えば、一級建築士の一次試験の試験科目は、「計画・法規」、「環境」「構造」「施工」と4科目になっています。しかし、これらを学修するには、建築設計、建築計画、建築史、都市計画、建築法規、環境工学、設備計画、構造力学、応用力学、建築材料、建築施工などの広範な科目や分野を学修する必要があります。さらに、建築学科は、一級建築士の資格の取得だけを目的にしているというよりは、さらに広く、大きく、社会で活躍する建築家や建築エンジニアを育成することを目標に掲げているところがほとんどです。上記の一級建築士に直結した科目以外にもそれぞれの学科で広範な授業科目や専門科目が用意されているはずです。

その中で、建築学科の中で、都市計画の授業は必ずあります。主に、2−3年生から授業が始まるところが多いのではないでしょうか。大学によって科目数は異なります。ちなみに、日本大学理工学部建築学科の場合は、都市計画Ⅰ、都市計画Ⅱ、都市計画Ⅲ、建築法規、住環境計画、建築設計Ⅳ(都市開発系課題)が都市計画に関連する科目です。大学院には、都市計画特論、都市デザイン特論、都市再生特論などがあります。

建築学科の都市計画・都市デザインだから学べること

さて、本題の「建築学科の都市計画・都市デザインだから学べること」です。

「建築学科の都市計画・都市デザインだから」というところがミソかなと思います。

建築学科と聞くと、一つの建築物を想像する人が多いことでしょう。しかし、一つの建築をつくるには、様々な法規制をクリアして建築物を作る必要があります。その様々な法規制の中には、建築法規で習う、建築基準法の集団規定(容積率や建築物の高さ、用途地域、防火地域など)もあります。

また、そもそもどんな都市であるべきなのか。建築物が複数ある中で、道路や公園などのパブリックスペース、市役所や図書館などの公共施設、鉄道などの交通インフラ、それらを統合して、現代の都市はあります。都市のあるべき姿・ビジョン、コンセプトはどのようなものなのかを考えるのも都市計画・都市デザイン。

そして、それらの空間や建築は、人が都市生活を送るための手段です。いかに、人が快適で、豊かに、居心地良く、幸せに、都市生活を送れるのか。それを忘れてはなりません。

そこで、建築学科では、入学した1年生で、図面の描き方、模型の作り方、最近では、3DCAD(ライノセラスなど)などの建築設計・建築デザインのスキル・技術の習得をした後に、単位空間の設計、小空間の設計を行います。これは建築設計・建築デザインの基礎として、住宅やオフィスなどの機能を含めた建築設計をする前に、小さなスケールで地震で初めてオリジナルの空間設計をするというもので、コンセプトメイキングから、エスキス(デザインの個別指導)や図面・模型化、プレゼンテーションボードまでまとめて提出し、発表していく課題です。

課題の詳細は、例として、日本大学理工学部建築学科1年生のデザイン基礎Ⅱ(彫刻のためのギャラリー)の優秀作品をご覧ください。ギャラリーとはありますが、彫刻を見るための人の空間の設計となっており、いわゆるギャラリーに求められる細かな必要空間は求めず、造形や空間設計のトレーニングを中心に課題を出題しているところがあります。

やがて、2年生以降になると、住宅や子ども食堂、サテライトキャンパス、複合施設など、建築設計・建築デザインにおいて、課題で求められる具体的な空間や敷地が与えられ、建築の規模も少しずつ大きくなっていきます。

この、小さなヒューマンスケールな、人に近い空間設計から、徐々に規模が大きくなった建築設計・建築デザインに取り組めることが建築学科で都市計画・都市デザインを学ぶ上で、効いてくるところだと考えています。なぜならば、小さな空間から大きな空間の建築設計・建築デザインを経験しているのです。このヒューマンスケールの感覚、寸法を押さえた空間設計・空間デザインができるかどうかは、究極には、人の空間、人中心の空間デザインができるかどうかに大きく影響するのではないかと考えています。Googleマップで例えれば、広域の地図からズームアップして、ストリートビューにもいける。そんなスケールの行き来ができるようになるというのは、建築学科で都市計画・都市デザインを学ぶ一番のメリットであります。

そして、大学のカリキュラムによりますが、日本大学理工学部建築学科では、2年後期から3年後期にかけて、都市計画Ⅰ、都市計画Ⅱ、都市計画Ⅲと都市計画の授業が展開していきます。この辺りで都市計画・都市デザインの基本的な知識や素養を学び、進路選択や研究室配属などを選択していく形になります。科目数の違いはあれど、都市計画の授業が始まる時期は似ているのではないかと思います。ちなみに、日本大学理工学部建築学科に都市計画の授業が多いのは、学生数が多いことで、教員数もある程度確保でき、都市計画の教員も2名いるところもあります。ここは、学生数の多い日本大学理工学部建築学科のメリットでもあります。

ちなみに、都市計画研究室のホームページを共有しておきます。

他学科で都市計画・都市デザインを学ぶ

他学科でも都市計画・都市デザインを学ぶこともできます。これは良し悪しではなく、自分がどれが合っていると思うか、その興味・関心とどう合うかが大事です。

他学科は経験したことがないので、あくまで、私の考えです。

例えば、土木工学科、交通システム工学科、まちづくり工学科、海洋建築工学科。日本大学理工学部では建設系の学科で都市計画・都市デザインを学部ことができます。

まずは、そもそもの育てたい人材像が異なります。建築は、建築家や広く建築エンジニア。土木、交通、まちづくりとそれぞれの学科名称にある分野のエンジニアや公務員を育てていくというところを人材育成・教育の目標としているところがあると思います。それに伴って、学科のカリキュラムがあります。

また、先のスケールの行き来の話では、最初から広域なスケールを扱ったり、道路などの土木構造物、交通システムなど扱う空間が異なるところがあります。もちろん、都市計画の授業では共通している部分は出てきますが、そもそもの人材像、カリキュラムが異なるため、都市計画で学んだ知識、素養をどう活かしていくか、ここが大きく違うのではないでしょうか。

おわりに

そういった違いを見て、各大学、学科のホームページや資料、オープンキャンパスなどで、判断し、受験生はぜひ自分のあった学科を選んで欲しいと思います。

また、改めて、建築学科の都市計画・都市デザインだから学べることをまとめましたが、建築学科の学生、建築学科出身で都市計画・都市デザインの仕事に従事する人にとっても改めて再認識になれば幸いです。


Cover Photo by Shutterstock, DC Studio

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