青い芒原

青い蝶を繰り返し繰り返し吐くおまえの その背が真夜に燐光をはなつ

秋日の網戸に掌をゆっくりと押し当ててみる(つよく) ああ 解体されたい!

凍蝶の乾いた翅を砕いてゆく素手に 昨夜の方角から硝子の足音が近づいてくる

脊髄の先端がじりじりと焦げていく 夕照の輪郭 その曲率に手指をひたす

ここに私を押し込める疼痛の背筋に爪を置いてみる しろい霧雨が来る

爪と肉との間に熱砂を流し込むときにだけ取り戻せる感情がある

秋天 このドラム缶の底でおれはいったい何を焼いたのだろう

この感情に補助線を引いてくれ 帽子のなかで土星の輪だけが正しく回る

流星から見る都市の人びとは夜盲症で櫂を握りしめたまま眠っている

舗道の暗がりを這う無数の蛇・蚯蚓・雨滴 そのアンダーパスにけっして向かうな

なぜだろうまた靴下を焼いてしまった 青い芒原で風に打たれて犬になる

両足を真っ青に濡らしておれたちは 川辺から戻ることができないままだ

芒原に火を入れる たくさんの犬が走り去り風が鳴る 巻かれるなよ巻かれるなよ巻かれるなよ