『月だけが見ていた』
「お父さんとお母さん、離婚することになったの。あなたにこれからの事をちゃんと考えてほしい。」
突然の母の言葉に頭が真っ白になった。
「は?勝手に決めてんじゃねーよ!」
思わず家を飛び出したが、盗んだバイクで走り出す度胸はなく、暗い夜の街をひとりでフラフラさまよった。なんとなく買ったイチゴオレがやけに甘ったるい。何時間経っただろう。
スマホが青く灯る。見ると何度も何度も母からの着信。しかたなく出てみると
「ねぇ、どこにいるの?帰ってきてよ!」
叫ぶような声にハッと我に帰った。
気づけば空は白み、鈍色の街は色を取り戻し始めていた。
「自分でなんとかするしかねーか… 」
月だけが見ていたあの15歳の夜、俺は孤独を知ったんだ。
某企画「テーマ : 孤独」への投稿メモ