飛車落ち戦記〜対青嶋未来六段

ねこまどのオンライン指導対局会で青嶋未来先生の指導対局を飛車落ちで受けてきました。

序盤は愛用の遠山流の"elmo囲い+右四間飛車"で駒組みを進めます。
elmo囲いは、飛車の打ち込みに強い、79金のおかげで端攻めにも強いし端攻めもしやすい、76に桂を飛ばれたときに77銀と上がって受けやすい、などのメリットがあります。また右四間飛車は、飛車落ちの古典定跡を応用できることや、平手の居飛車の定跡を応用できることもメリットだと思います。

初手から
△34歩 ▲76歩 △44歩 ▲46歩 △32金 ▲48銀 △42銀 ▲47銀 △43銀 ▲56銀 △56歩 ▲48飛 △33桂 ▲36歩 △62銀 ▲68玉 △53銀 ▲78玉 △62玉 ▲37桂 △52銀 ▲68銀 △64歩 ▲79金 △74歩 ▲96歩 △94歩 ▲16歩 △14歩 ▲24歩 △63金
と図の局面まで進みます。

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最後の△63金に代えて△24歩であれば、遠山流ですぐに▲45歩△同歩▲25歩△同歩▲45桂△同桂▲22角成△同金▲45飛△44歩▲25飛と仕掛けて、角桂歩を持ち駒に加えることができます。このあと2次駒組みに移行することになりますが、豊富な持ち駒を使って上手陣の隙を狙えるので、下手が戦いやすくなります。
なので△24歩と突き返してこない上手の変化は時々出てきます。下手がさらに▲59金や▲66角などと待てば、上手は△73桂、△84歩、△72玉などの指し手が考えられます。しかし、いずれも上手陣の傷となる可能性があり、なかなか指し手が難しいようです。
また、玉を62に残したまま戦うのも上手の工夫の1つですね。守備に利かせつつ、左右どちらにでも行けるメリットがあります。

実戦はさらに
▲38金 △84歩 ▲45歩 ▲同歩 ▲同桂 △同桂 ▲同銀 △44歩
と進行しました。

▲38金は仕掛けて角交換のあとの△37角を消すための備えです。上手の△84歩を見て、▲45歩から仕掛けました。83の地点に桂馬を打ち込む隙ができたためです。

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この局面で長考。じっと、▲56銀と引く手と▲44同銀と強く踏み込む手を考えました。▲56銀は次に▲83桂の狙いがあり、時間はかかりますが着実な戦果が得られそうです。一方、▲44銀△同銀直▲56桂△32桂▲42歩は駒損はしますが一気に終盤に持ち込めそうです。ただ、経験上この踏み込みは評価値を大きく下げることが多いため、成算がなければできません。

結果、この局面で8分以上(持ち時間は40分と30秒の秒読み)も考えてしまいます。青嶋先生が声をかけてくださり、2つで迷っているということ読みを伝えました。「どちらもある筋ですが、今回は銀を引いてはどうでしょうか。」とアドバイスをいただき、銀を引くことにしました。
平手の実戦状況であれば確実に読めている方を選ぶのですが、プロの先生が相手であると肩に力が入ってしまいます。
実際に▲44同銀の評価値は1000程度、▲56銀は1500程度なので、踏み込む手順は難しい展開になりそうです。

続けて、
▲56銀 △32銀 ▲83桂 △93香 ▲91桂成 △73桂 ▲92成桂 △65歩 ▲93成桂 △64桂 ▲83成桂 △56桂 ▲同歩 △64角 ▲46歩 △52玉
と進みます。

下手は狙い通り83に桂馬を打ち込み成桂を作り活用します。その間に上手も64のスペースから動いてきて、要所の銀が桂と交換になり、下手の飛車を封じられます。

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この局面では上手の次の△75歩が気になっていました。下手は寄せに入りたいが角桂香では直接迫るのは難しく、上手玉の左辺も広いのが気になっていました。ここでもしばし長考。青嶋先生が「上手からは早い攻めがないので確実な手を」とのアドバイスをいただきました。
そこで1歩補充しつつ、△75歩に反撃を狙う▲84成桂を指しました。AIによると次の▲83角の狙いが厳しいため、良い手であったようです。

局面図からは
▲84成桂 △75歩 ▲74香 △76歩 ▲73香成 △同金 ▲同成桂 △同角 ▲85角 △42玉 ▲25桂 △52銀
と進みます。

△75歩に私の実戦では▲74香と反撃して73の地点で精算して金を手に入れます。感想戦では▲74香に変えて▲47金や▲69玉として△76歩と呼び込むことで▲74歩とする手を教えていただきました。
そして▲85角〜▲25桂でやっと上手玉が捕まりそうになってきました。
評価値は殆ど変わりませんが、最後の△52銀では△41桂の受けもあったようです。AIによると▲75桂から角を責めて動きを封じてしまえば良いようですが、少し難しそうです。

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▲63金 △同銀 ▲同角成 △62金 ▲33銀 △同金 ▲同桂成 △同玉 ▲25桂 △42玉 ▲33金 △51玉 ▲73馬 △同金 ▲43金 △52銀 ▲33桂成 △86歩 ▲42銀 △62玉 ▲51角
と寄せていきます。

まずは63金を打ち、角を敵陣に近づけ馬に代えます。いつでも馬を切れる状況にして、今度は▲33銀と打って右から攻めます。攻めの種駒を盤上から消さないように注意して、寄せていきます。
途中△84歩から反撃が来ますが、elmo囲いの右辺への逃走経路が生きて放置できます。
上手玉の上辺への脱出が気になりますが、▲51角で防げます。この手順は青嶋先生にも褒めていただきました。

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さらに、
△72玉 ▲53銀成 △同銀 ▲同金 △75桂打 ▲74歩 △87歩成 ▲69玉 △74金 ▲63銀打 △83玉
と進みます。

ゴールが見えてきています。▲53銀成から使い切った金駒を補充しながら上手玉に迫ります。上手の追撃には▲69玉から広い右辺へ逃げます。

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▲72銀打 △92玉 ▲74銀成
まで104手で下手の勝ち

図の局面では▲74銀成△同玉▲84金△64玉▲73銀△53玉▲62角成の簡単な7手詰めが生じています。ですが最後の角成の1手詰めが見えず、詰ますことができませんでした。未だに中空の玉を捕まえるが苦手です。最後は▲72銀打から確実な必死がかかることわかり、思考を止めてしまいました。実戦のプレッシャーの中で詰みを探す良い機会だったので、最後まで一生懸命考えるべきだっと局後に反省しました。

ポイントはやはり▲56銀の局面と▲84成桂の局面だったと思います。
いずれも相手がプロ棋士であることで冷静な判断を下せなくなっていた部分がありました。形勢差をできるだけ広げたいという気持ちが強すぎて、判断を遅れたり迷いが生じたに思います。実戦で局面を考えるのは楽しいですが、ただ決断できず迷うことは避けられるようになりたいです。
また、終盤力が上がればいずれの局面での選択も自然にできたように思います。結局は終盤力ですね。

青嶋先生とはこの半年間で3戦目でやっと勝利です。岐路の局面ではアドバイスを頂きましたが、全体としてはかなり上出来な戦い方ができたと思います。

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