飛車落ち戦記〜対北島忠雄七段

ねこまどオンラインで北島忠雄七段による飛車落ちの指導対局を受けました。今回もたっぷりと感想戦に時間を割いていただき、教えていただきました。

※太字の棋譜が実戦の進行になっています

いつもどおり、遠山流を目指し右四間飛車+elmo囲いに構えます。

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今回はこの局面で、△64銀と変化されました。前回の指導対局では53銀型で勝たせて頂いたので、変化してくださったのだと思います。
上手の△64銀も右四間飛車定跡の典型的な変化ですが、指す機会は少ない印象です。多くの定跡書では53銀型の解説に多くの分量が割かれています。53銀型でガッチリと受けるのは、下手に力を発揮させるための指導対局の上手らしい戦い方だと思います。上手としては、しっかりと体制を整えて下手に攻めさせたほうが実戦的には戦いやすいということもあるかもしれません。△64銀は一見すると4筋が弱くなり良くなさそうですが、簡単には崩れません。実際に評価値も53銀型での変化ともほとんど同じ程度で推移し、手強い変化です。

下手は既に仕掛けに十分な体制なので、仕掛けます。
▲45歩 △同歩 ▲同桂 △44歩 ▲33桂成 △同金
桂馬の交換には成功しますが角交換は拒否されて、次の局面まで進みます。

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最後の△同金では△同角も考えられるところです。同角の場合は角交換も狙いやすいので▲45歩〜▲35歩といった手順で積極的に攻める展開が考えられます。

一方本譜のように△同金と応じられるとしばらくは角交換は難しそうです。さらに44の地点への利きは△同角と較べて一枚多くなっています。それでも、右四間飛車はチャンスと見れば一気に攻めきってしまうのが良いので▲45歩と再度歩を合わせて攻めることにしました。対局中は、上手が△同歩と応じてくれれば、▲35歩から攻めが繋がると考えていましたが、AIによると▲45歩には△84桂と切り返す手があります。以下、▲66角△45歩▲35歩△同歩▲45銀△55銀のように64銀型を生かして反撃されると簡単ではありません。
そこで、AIは単に▲45歩に代えて▲66歩と指すことを推奨しています。上手の33の金の位置が悪い事を主張として、単に2次駒組みに移る手が良かったようです。具体的には▲66歩以下、△32金▲65歩△53銀▲67銀△33角▲68金といった駒組みが考えられます。また△32金ではなく△55歩と銀を追い返す手には、▲65歩と返して切り合えば、後手の形が悪い分先手の有利が拡大します。

実戦は、
▲45歩 △55桂 ▲66歩 △45歩 ▲65歩 △53銀 ▲45飛 △44歩 ▲46飛
と進みました。

上手の△55桂は右四間飛車の角と飛車を抑え込む常套手段です。elmoの弱点である67の地点に利いていのも気になるところです。しかし、この桂を打たせてしまえば、上手からは動きにくくなります。実戦ではここで2次駒組みに移行すれば良いと考えていました。しかし、感想戦で▲44歩と一度歩を取り込んで上手陣を乱してしまってから駒組みに移行すればよかったと教えていただきました。対局中は上手陣が手順に盛り上がってきているように感じ避けましたが、上手が陣形をまとめるには更に数手かかります。本譜は何事もなく44歩と収められてしまい、▲45歩の一手がほとんど1手パスになってしまいました。


駒が集まっている右辺からの攻撃は難しいので玉頭側で厚みを築くために
△32金 ▲52金 △33角 ▲77銀 △74歩 ▲66銀 △62金
と進めます。

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ここから更に▲68金、▲49飛の2手が入れば下手は十分な駒組みでした。上手は少しずつ手詰まり状態になってきます。対局中は更に玉側に金銀を寄せられることで駒の働きの効率化を図られることを気にしていましたが、その場合は手薄になった2筋などからゆっくりと突破を目指せば十分でした。

上手が△64歩からの歩交換して、67歩の叩きを見せられることを気にしていました。これは65歩が拠点となり下手から64に駒を打ち込む手も発生し、さらに玉のコビンも空くため指しにくいようです。

実戦の展開では玉頭から仕掛けて
▲75歩 △73金 ▲68金 △75歩 ▲同銀 △74歩 ▲66銀 △84歩
と進行します。

ここで少しでも利を稼ぎたいと▲75歩から仕掛けたものの、△73金に対し▲74歩と取り込むと△85金と出られる手が気になりだして▲68金と手を戻しました。すぐに厳しい手はありませんが金で玉頭に重しを置かれることは少し損と考えました。指し手が一貫せず明らかに乱調です。

互いに陣形の整備を更に進めます。
▲86歩 △83金 ▲77金 △73桂 ▲76金 △52金
そして次の局面を迎えます。

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ここでは▲87桂と打ち75歩を狙う手がありました。しかし、読みに誤算があり、
▲75歩 △同歩 ▲同銀 △74歩 ▲66銀 △62金
と進めます。完全に1手パスです。当初は▲66銀に代えて、▲74同銀とする予定でした。しかし、△同金▲75歩△65歩▲同金△同桂▲同銀と応じられるとあまり乏しくないと感じました。実際に更に△64銀▲同銀△同歩▲76銀△62玉と進むと、評価値は600程度まで落ちてしまいます。ここでじっと我慢したことで、62金の局面ではまだ評価値は1500程度で、まだまだ、指しやすい局面です。

ここでもまだ▲87桂打が良い手でしたが、見つけられませんでした。下手を持った私は指し手に窮しつつあり、
▲29飛 △42角 ▲25歩 △同歩 ▲同飛 △24歩 ▲29飛 △64
と進みます。

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上手の角が62に移動し争点となる6〜8筋方面を狙いよく働き始めている一方、下手は飛車を転換し、2筋の歩を手持ちにするのみです。玉頭の戦い向け、上手の駒が効率よく働き始めているのに対し、下手の飛車の働きが悪く、評価値を落としていきます。駒組みで得た評価値をほとんど失いつつあります。
そして、満を持して上手から△64歩と仕掛けてきます。

続いて、
▲77桂 △65歩 ▲同桂 △同桂 ▲同銀右 △73桂
と進行します。

単に▲同歩と取り返すと75の地点へ駒を呼び込むことを恐れ、▲77桂を選びました。しかし、この局面では▲同歩の一手だったようです。以下は△同銀▲65歩△75歩と進みます。ここでは▲64桂と切り返し△61玉に▲45歩△同歩▲44歩△同銀▲55銀直のような形で戦えば、下手は上手玉を攻める終盤になり、わかりやすく戦えました。

しかし、次の局面で判断ミスがあり一気に形勢は上手に傾きます。

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▲74銀 △同金 ▲75歩 △65銀 ▲同銀 △同金 △同金 ▲同桂

銀一枚捨てても75に拠点を残し上手の桂頭を攻めれば良い勝負と考えて、▲74銀と切り込みましたが△65銀の切り返しが厳しく、下手が攻めていたはずの上手の金と桂を捌かれてしまいます。

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△65銀に対して▲74歩で金を取り返すと△76銀と金を取られると87に空間があり更に55の桂がよく働いていて、一気に寄ってしまいます。実戦も結局、上手玉が安定している一方で、下手玉は2枚の桂がよく働いている上に6,7筋に歩が打てるため受けきれなくなってしまい、万事休す。

まとめ。
上手の64銀型は指導対局で出現することは少なめですが、AIで調べる限りは53銀型と比較しても遜色のない戦い方のようです。北島先生の”飛車落ちは奥が深いですね”とおっしゃっていた言葉が印象的でそのとおりだと思いました。
本局に関して言えば、中盤からじっくりと再び駒組みをする展開に戻り、その局面が長くなると棋力差の分だけミスを重ねやすくなるという、下手にとって難しい展開になってしまいました。
角交換ができないと手の作り方の難易度がぐっと上がります。盤上の大駒の活用方法の方針をもう少し考えたいところです。

また、今回のように新しい変化に対して勝ちにくくなってしまうのは、終盤力の弱さにあると感じました。序盤から仕掛けまでは、事前準備でなんとかなりますが、それを外れても勝てるようになるには、終盤に力に裏付けられた勝ち方が必要であると感じました。
また次回に向けてがんばります。



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