飛車落ち戦記~対北島忠雄七段戦


ねこまどオンラインにて北島忠雄七段の指導対局を飛車落ちで受けました。
北島先生の指導対局は90分の二面指しなので、いつもとても丁寧に感想戦をしていただいています。
北島先生には飛車落ちで2連敗中なので、なんとしても一矢報いたい思いで、対局に挑みました。

さて、いつもどおり遠山流"エルモ囲い+右四間飛車"で駒組みを進めて、図の局面を迎えます。

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上手が△24歩としているので、遠山流の理想的な仕掛けができます。
▲45歩 △同歩 ▲25歩 △同歩 ▲45桂 △同桂 ▲22角成 △同金 ▲45飛 △44歩 ▲25飛 △23歩 ▲48金 △32金 ▲29飛
と次の局面まで進めます。

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▲45歩と仕掛けて角、桂と歩2枚をそれぞれ交換して手持ちにします。更に2歩を手持ちにして▲29飛と引きます。途中角の打ち込みを防ぐために▲48金と上がります。ちょうど角換わりの将棋のような配置になります。
この局面の評価値は既に下手側に1600となり、大きく優勢を拡大しています。具体的な理由として、
飛車が一枚少ない上手陣は打ち込みの隙きが多く、角交換で動きにくくなった。
上手の陣は駒組みが飽和していて有効な指し手が少ない。
逆に下手は玉を固めるなど、有効な手が多い。
下手は角、桂と歩2枚を持ち駒にしていて、仕掛けの手を作りやすい。
が挙げられます

そこで、2次駒組みに移り、
△74歩 ▲66歩 △84歩 ▲77銀 △73桂 ▲68金 △73桂
と進めます。

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下手は▲66歩から陣形を整備し、玉を固めます。88玉まで進めて銀矢倉まで組んでしまう手もありますが、上手が33角と自陣角を打ち、下手玉のコビンを狙う戦い方があるので、78玉で戦うのはわかりやすい戦略と思います。
さて、上手が△63金と上がったこの局面で絶好の仕掛けがあります。▲15歩△同歩▲12歩△同香▲21角が厳しい攻めです。43の銀のヒモが切れるため△22金と12の香取りを受けることができません。△14香と逃げれば▲12角成と馬を作り、23の地点の突破と香を取りに行くことを見せれば、優勢が拡大します。

しかし、私は実戦ではこの順をすっかり忘れてしまい、
▲67金 △45歩
と進めてしまいます。

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▲75歩から玉頭で戦うため▲67金とあがりましたが、これがあまり良い手ではなかったかもしれません。
△45歩と突かれてポイントを稼がれます。これを▲同銀とすると△55桂▲68金△47桂成と飛び込まれ、▲同金には△38角があり取れません。ちょうど直前に上がった金が狙わるかたちになっています。ここでは冷静に47の成桂を取らずに44歩と打って攻めれば、上手陣を崩すことができます。しかし、思いもよらない方向から飛んで来た手に対して慌ててしまい、丁寧な読みができなくなっていました。

ここから玉頭を攻めて、
▲75歩 △同歩 ▲74歩 △85桂 ▲88銀 △55歩 ▲47銀 △95歩 ▲同歩 △76桂 79銀
と進みます。

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▲74歩には△同金と勝手読みしていたため、逆に△85桂に来られ焦ってしまいました。△22銀を引いて86歩と打ち桂馬を取りきって上手の攻めを切らす作戦を選択をしましたが、ここでは86銀と出て強く玉頭で戦うべきでした。
また、銀を取りに来る△55歩にも▲同銀と取り、△54歩には▲44歩と反撃すれば先程と同じように、上手陣が突破できました。
さらに△76桂にも強く▲同金と取れて▲同歩には、▲75桂と攻めることができたようです。ただし、以下の手順はわかりやすくないため、選びにくそうです。
チャンスを逃すことを繰り返し、少しずつ評価値を下げていきます。

玉頭でのねじり合いが続き、
△74金 ▲86桂 △73金 ▲77歩 △92歩 ▲同香 △93歩 ▲同桂 △77桂成 ▲同金 △94歩 ▲85桂打
と進みます。

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この▲85桂打が北島先生にも褒めていただいた好手で、取られそうな97の桂馬に最後の働きをさせています。この瞬間に失った評価値を取り戻し、1700程度まで戻っています。

そして、寄せを狙って、
△97歩成 ▲73歩成 △同金 ▲同桂成 △同玉 ▲41角 △52角
と進みます。

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▲73桂成が疑問手で最後の大きなチャンスを失ってしまいました。ここは一度▲81角と打って寄せれば、わかりやすく勝ちになっていました。
さらに図の局面でも▲同角△同銀▲74歩とすれば上手玉が狭くまだ良い勝負でした。

しかし、実戦は
▲74歩 △62玉 ▲52角成 △同玉 ▲73歩成 △85桂 ▲67金 △98と ▲69玉 △88と ▲52玉 △79と ▲63金 △42玉 ▲51角 △同玉 ▲53金 △78角
と進みます。

対局中は下手のと金が大きいと思っていましたが、手順に上手玉を広い1〜4筋方面へ逃してしまいました。そこからは下手は完全に戦力不足で、上手からはと金の活用で確実に迫られます。▲51角から駒が手に入れば詰ませる形を作り食い下がりますが、△78角打ちがあまりに厳しい決め手となり、打つ手がなくなります。

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ここから
▲49玉 △67角成 ▲38玉 △24香 ▲同飛 △同歩 ▲44香
とします。

早逃げでなんとか駒を手に入れての逆転に一縷の望みを繋ぎますが、△24香ですべての望みがなくなります。▲44香は形作りです。

最終図

ここからは下手玉の即詰みです。北島先生はノータイムで指され、以下数手後に投了です。
せっかくなので詰将棋として残しておきます。詰手順は本文の最後に載せておきます。

本局の課題は上手の揺さぶりに対して冷静に読み切れていないことだと思います。
何度もチャンスがあったにも関わらずことごとく逃してしまいました。
もう少し線で読むだけでなく、落ち着いて各局面ごとに点で読むバランスを増やさなければならないと思っています。もちろんどの局面で読むべきかの嗅覚は大局観を鍛えなければならないので簡単ではありませんが、少しずつ上達していきたいと思っています。



詰手順
本譜は、
△39角▲同金△37銀▲同玉△25桂▲26玉△27金
にて下手が投了しました。以下は
▲同玉△49馬▲38金△37飛▲18玉△27金▲29玉△38飛成▲同銀△28金
までの詰みです。
最短の手順としては例えば、
△39角▲同金△37金▲同玉△25桂▲27玉△26飛▲同玉△37銀▲27玉△49馬▲38飛△28金
などがあります。

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