飛車落ち戦記~対遠山雄亮六段
私の飛車落ち戦の愛用戦法"elmo囲い+右四間飛車"の提唱者である遠山先生に、ねこまどオンラインで指導対局を受けました。
直前にも遠山先生のオンライン講座を受講していて、プロ棋士の研究とその量の一端に触れ感嘆していたので、とても楽しみにしていました。
将棋は"elmo囲い+右四間飛車"を本家にぶつけようと駒組みを進め、次の局面を迎えます。
上手が△52玉と変化してきた局面です。
よくあるのは△62玉や△72玉と戦いの起こりそうなところから離れるのですが、玉を直接守備に使う作戦です。少し考えて、手薄になった7〜9筋方面を位取りや地下鉄飛車で狙うには効率が悪そうと判断しました。それよりは角と玉が接近した悪形を咎めようと考えました。
指導対局の序盤では上手が変化してくることは少ないですが、私は変化や勝負手が出てくると構想力が試されているようで楽しんでいます。
ここから、
▲16歩 △14歩 ▲37桂 △31玉 ▲26歩 △24歩 ▲28飛 △74歩 ▲66歩
と進めます。
様子見のつもりで突いた▲16歩でしたが上手玉が1筋に近づけば、端攻めを見せることができるので、良かったかもしれません。上手玉が31まで来たのを見て攻める方向を2筋へ変えるため、飛車を▲28飛と転換しました。そして、相手の角を捌かせないで攻撃の的にするために▲66歩としました。しかし、これが良くない手で、AI(水匠2)の評価値で1200代から1000弱まで落ちてしまいました。単に下手の角が使いにくくなってしまいました。
その後、下手が2筋を攻めあぐねて駒組みを進め、上手が仕掛けた図の局面。
対局中は私は矢倉崩しの理想形が組めつつあるため、いい勝負と判断していました。
しかし、この局面では既にAIの評価値は300弱です(2億局面程度読ませているので、ある程度信用できると思います)。これは平手で先手が主導権を握って局面を進めている程度の評価値です。
また、飛車落ちの初期配置の評価値は下手側に900程度で、例えば定跡通り進み、角桂を手持ちにできれば、駒野損得なしでも1500程度までになります。つまり、この局面は既に下手の利を失った苦しい局面と言えます。
感想戦では、このあたりでは上手が指しやすくなっていると感じていたこと、また26の角はAIは評価しない場合が多いことを教えてくれました。
AIでの分析中にこの評価値に気がついたときには、飛車が1枚足りず、駒の損得もない状況にもかかわらず、ほぼ互角の局面へ持っていくプロの技術に感激していました。
プロ棋士の先生は指導対局では決して厳しいことは言わないため、AIで調べて初めてこのことに気がつくことができました。AIを指導対局の分析に使うことは、プロの技術に触れる新しい方法かもしれません。
確かに、
・下手の攻撃陣の飛車、角、銀が、上手の金銀玉のブロックに抑え込まれている。
・上手の54の銀が攻防によく利いている。
・下手の69金が中途半端で玉頭が弱い。
と、冷静に見れば評価値が悪化している理由は納得です。角を3手かけて4筋を狙うのであれば、はじめから▲66歩を突かずに居角のままで戦うべきだったのだと思います。
以下は、
△75歩 〜 △76歩 〜 △66歩
とされ、そのまま攻め込まれて、為す術なく負けてしまいました。
△75歩は、▲同歩とすると△75角となり△66桂が厳しくなるため、取りにくく、既に角銀桂歩による上手の玉頭攻めが受けにくい局面になっています。
今回わかったことは2つです。
1つ目は、42玉の変化に対しては、右四間飛車で攻めたほうが良いということ。
2つ目は、指導対局の分析にAIを使えば、自分の棋力だけでは気が付きにくいプロ棋士の凄さを体験することができること。これは自分の対局だということが大きいですね。