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BlindRugby ぶららぐの面白さ#4 配慮と遠慮

Blind Rugbyは、視覚障がい者と晴眼者が共に楽しめるRugbyです。パラスポーツのラグビーでは、ウェルチェアラグビーやデフラグビーが有名ですが、負けず劣らずの面白さがBlind Rugbyにはあります。このnoteを通して、Blind Rugby に興味を持っていただけると幸いです。

こんにちは、ぶららぐ東海 Sun Rabbits愛知 監督の神宮寺です。ぶららぐ初心者の私が、監督/コーチ目線で感じたことをぶらっとお散歩感覚でnoteにまとめていきたいと思います。Blind Rugby の面白さを皆さんへー。

ブラインドラグビーの面白いところ #4 「配慮と遠慮」

先日、ブラインドラグビー 西日本代表 vs 東日本代表 の試合がヨドコウ桜スタジアムにて開催されました。私は西日本代表の監督を務めさせてもらったのですが、今回も面白い ”学び” がありましたので綴りたいと思います。

前回の大会、3月末の試合では、中京大学ラグビー部のコーチングスタッフに晴眼者プレイヤーとして参加してもらっていましたが、今回の試合では、中京大学ラグビー部の練習スケジュールの関係上、彼らが不参加になったので、私のラグビーフレンズ(東京のSuperman R.F.C ならびに YGUのOB)に参加していただき試合に挑みました。

前回「#3 ボーダレスな世界」の時にも綴らせてもらったのですが、やはりブラインドラグビーは「配慮と遠慮」のバランスを間違えると競技そのものが成り立たなくなると実感しました。

ブラインドラグビーという競技はプレイヤーの性質上、特に安全面が最優先されるべきだと思います。そして安全面が担保された上で、気持ちよくフィールドを駆け抜けて欲しいと私は思います。

そこで今回はじめて参加する晴眼者4名に対し、ブラインドラグビーとは?から、配慮すべき内容、チームとしてのルール、プレーコードなど、事前知識をインプットしてから当日をむかえることにしました。

今回のチームテーマはトリプルA(安心安全アグレッシブ)を掲げ、勝敗よりもブラインドラグビーの未来のためにリスクを背負ってもダイナミックにボールを展開するラグビーにチャレンジ しようと、選手をグラウンドに送り出しました。

ところが・・・

事前のMTGや試合前の確認時には出来ていた動きが、それ以前に、そもそも選手の配置(セットアップ)さえもうまくいかない。ブラインドラグビーの未来のためにダイナミックに展開したいのだけど、ボールが回らない。。。

むむむ・・・

ブラインドラグビーは10分ハーフ。悪い流れを試合中に改善できなければ、あっという間にノーサイドの瞬間は訪れます。
なんでボールが回らないのだろうか? その時に気がついたのは、晴眼者の「配慮と遠慮のバランス」がおかしいという点でした。

晴眼者はリンクプレイヤーとしての役割を担うことが多く、人とボールを動かすという仕事があります。ただ彼らが「配慮と遠慮」の捉え方を間違えると一気にゲームは壊れてしまうのです。

前半出場した晴眼者のプレイヤーは、ロービジョンプレイヤーに対して必要以上に近くに寄ってパスをしたり、腕の中にボールを入れてあげたり、ゲームの流れを考えず、ロービジョンプレイヤーを探してボールを渡してプレーさせたりと、 まるで接待しているようなプレーを繰り返したのです。
果ては相手のロービジョンプレイヤーに対しても様子を見ながらDEFをしたりしていました。とても悪いプレーです。

しかし、これらは一般的な感性かもしれません。ブラインドラグビーはロービジョンプレイヤーに配慮することは大前提です。ただ配慮しすぎる必要はありませんし、遠慮する必要は全くないのです。

配慮しすぎると、ラグビーの第1原則である「前進」が失われ、結果的に「継続」することも難しくなります。
そして遠慮はチームのモメンタムさえも奪います。

ロービジョンプレイヤーにボールを持ってもらいたい気持ちはわかりますが、ただボールを渡すだけではトライをするどころか、いつまで経ってもゲインラインを突破することも出来ません。

配慮はするけど「前進」するためにベストを尽くすべきだったし、遠慮は相手選手にも失礼です。これでは選手達のモメンタムは上昇しません。
遠慮なく本気でぶつかってこそ熱い気持ちが湧き上がり良い試合になるものだと思います。

今回はヨドコウ桜スタジアムという素晴らしい環境での試合でしたので、リスクを背負ってでもチャレンジして、ブラインドラグビーの本当の面白さを伝えたいと思っていたのですが、ミスはないが人もボールも動かない、相手のプレッシャーによるミスではなく自滅のような、なんとも言えない試合展開になってしまいました。

グラウンドの中にいる選手はその状態に気づくのが難しく、この状況をみていたリザーブの選手達が後半戦に状況を変えてくれたおかげで、最終的に逆転勝利という最高のシナリオになったわけですが、この経験は私にとっても、深い学びになりました。

(前半メンバーは、後半途中から再出場してもらい、逆転のトライを演出してもらいました、前半の苦戦が良い教訓になったようです)

配慮しすぎるなと言っても、配慮のバランスがわからない。
遠慮するなと言っても、遠慮してしまう。

前回は前日練習や1日に3試合というタフな状態だったので、自然にチームビルディングが出来ていたのだろうけど、やはりブラインドラグビーは時間をかけて「お互いを知る」ことが重要 なんだと思います。

配慮と遠慮でガラッとゲームの内容が変わってしまう。お互いの信頼度が試される、これが「ぶららぐ」の面白さかもしれません。

私たちが目指すボーダレスな世界をお見せできるようなラグビーにはまだまだ時間がかかりそうですね。

最後に、リーグワンの試合は中止になってしまいましたが、NTTドコモレッドハリケーンズの皆様、スタジアム関係者の皆様、ボランティアの皆様、突然の声がけにも関わらず大阪まで助っ人にきてくれた Superman R.F.C / YGU OB皆様、皆様のおかげで楽しく試合をすることができました。
ありがとうございました。

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