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衝撃の出会い

演劇に携わる人ならだれもが知っている世界的に有名な演出家、ピーター・ブルックが今月2日亡くなりました。

彼は、私の原点です。
今日はそんな原点を振り返るお話です。

タイトロープ

私が彼を知ったのは一本の映画だった。
それが「ピーター・ブルックの世界一受けたいお稽古」

たしか原題は「The Tightrope」だったと思う。
世界で活躍する役者たち数名がピーター・ブルックのもとに集い行われたワークショップの様子を撮影したドキュメンタリーのような作品。

そのワークショップはエクササイズ「タイトロープ」を中心に進んでいく。

タイトロープというのはその場に一本のロープが張ってあると想像してそれを綱渡りしていく、というもの。
もちろん想像だからその場にロープはないし、客観的に見れば単に床を役者たちが歩いているにすぎない。でも役者は自分がロープの上を歩いていると信じて、高さや足の裏から伝わるロープの感触、身体が揺らぐ感覚などを五感を使って繊細に感じながら進んでいく。

そのため映像を見ている私たちもだんだんそこに本当にロープがあるかのように見えてくる。

そしてそのタイトロープはタイトロープを通して自分を知ることで、演技の原点だけでなく人生や存在を考える哲学にまで発展するのだ。


衝撃的な出会い

私がこの映画を観たのはまだ演劇なんて興味ない、演技なんて一度もしたことないときだった。そんな当時の私がどうしてこの映画を観に行ったのかいまだにわからない。

全く畑違いもいいところで
「寝るかも…」と思いながら一人で映画館の端っこに座った私は、結局90分間食い気味で観ることになった。

当時の私がイメージしていた演技・演劇とは程遠い内容で、でもとても魅力的な空間がそこには広がっていて、何よりもそのワークショップを受けている役者たちの目がキラキラ輝いていて居ずまいがとても美しかった。


この世の中にこんなに不思議で、儚くて、濃密で、美しい空間があるのかと思った。

家に帰った私は早速タイトロープをやってみた。録画しながら何度かやってみて映像を見返してはそこにロープがあるように見えるのかどうか確認した。
今思えば何もわからないなりにそこまで一人でやってみるって、凄い熱量だったと思う。


そして私の熱量はそれだけでは収まらず
「私も実際にああいう空間でああいうことしたい!」と思い、演技ワークショップに通い始めたのだ。

(ちなみに通い始めて1年半くらいたった時にレッスンの中でタイトロープをやる機会があった。初めて自分一人でやった時とは集中力の高さも含めて雲泥の差だった。
楽しかったなあ。憧れてたタイトロープができる喜びでいっぱいだった(*´-`))


思い出してここから

今回この記事を書くにあたって映画「ピーター・ブルックの世界一受けたいお稽古」の予告編を見たのだが、一度見だすと何回も見返してしまった。

あの時のワクワクを思い出し、忘れていた何かがフツフツと湧いてくる感覚がある。
私のやりたい表現・やりたいことがここに詰まっている気がする。

間違いなく私の原点だ。



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