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グルグル同じ場所を歩いてるとしても、それがらせん階段だったら

2023年に放送されたドラマ「正直不動産」をAmazon Prime Videoで追いかけ視聴した。
嘘で顧客を欺いて契約させるあくどい手段で営業成績ナンバー1を誇っていた主人公の永瀬(山下智久)が、神様に祟られ嘘がつけなくなる。営業成績も人生もどん底になった永瀬が、逆に正直に生きることで、自分の人生を立て直すというお仕事ドラマ。
正直で生きることは、時に損もするし、誤解もされる。嘘と真実を適度にとりまぜて、世の中をうまくわたっていく人がきっと一番成功するのだろう。

永瀬は、社内のライバルだった桐山(市原隼人)が、退職して独立し、大きな案件を次々と成功させるのを目の当たりにして、「俺は、ずっと同じ所をグルグルと回っているみたいだ」と弱音を吐く。
その言葉を聞いた桐山は、ゆっくり口を開いて、こう言う。

グルグル同じ場所を歩いてるとしても、それがらせん階段だったら、少しずつ上に上ってるってことになるんじゃないですか?

もう10年以上ピアノのレッスンに通っていのだけど、まったく上達した気がしない。もちろん、モチベーションと練習の不足が大きな原因なのだけれど、そもそも不器用なので、両手を同時に使うピアノは向いていないんだろうことは、重々分かっている。
それでも、グランドピアノを弾ける楽しみと、同世代の先生とのおしゃべりを目的に相変わらず月に2回レッスンに通っている。
発表会に行くと、私よりうんと経験年数の浅い方が、さらりと難曲を弾きこなしていたり、ネットのピアノ動画などを見ると、到底、到達できないレベルの人がゴロゴロいる。
同じ曲ばかり繰り返し弾いていて、それすらちっとも上達していない自分が情けない。

今日、時間ができたので、久しぶりにずっと前に練習した楽譜を出して弾いてみた。メロディは覚えているけど、指遣いや左手の伴奏部分が、全然思い出せなかった。ほとんど初めて向かう楽譜みたいになってしまった古い楽譜と鍵盤を見比べながら、訥々と弾く。
不思議と予想以上に弾けた。体が記憶していたから?と思ったけど、多分ちょっと違う。

「あ、次が分かる」と思ったからだ。

作曲の方法を勉強したことがないので、理論は全然分からないけれど、「この曲の和音と、あの曲の和音が似ているな」と気づくことがある。多分、これまで、いろいろな曲を弾いてきたので、曲の調やコード進行が似ていることに気づくのだと思う。受験勉強をやっていると「あ、この問題、昨日やった問題集の問題と似ている」と気づくのと同じだ。

つっかえつっかえでも、憶えては忘れを繰り返して、はたまた同じ間違いを何度も繰り返しながら、それでも懲りずに続けていると、目に見える成功はできなくても、見えないところでは少し成長しているらしい。

正直不動産の永瀬は、正直すぎるせいで、毎回顧客を怒らせたり、損したりする。でも、正直であることで顧客から信頼され、助けてもらったり、大きな仕事の成功につながったり、自分のやりがいを見つけたりする。

現実世界では、なかなかそんなにうまく結果は出ない。でも、誰しも経験と実績を少しずつ積み重ねて、らせん階段をゆっくり上っていると信じたい。

こうして文章を書いているけれど、全く上達した気がしない。以前に書いた文章のほうが良いように思うこともあって、らせん階段を下っているのではないかと感じることもある。相変わらず、noteのコンテストにも引っかからない。

でも、らせん階段が下りのエスカレーターにならないように、一歩でも階段を上がれるように、懲りずに続けていくつもり。


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