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絡まった毛糸に人生を見た

編みかけの毛糸玉、見えないどこかで絡まって、糸口から出てこなくなった。いくら引いても糸が出てこない。どこかで引っかかっているらしい。

仕方なく、編みかけのアームウォーマーから糸を切り離して、糸端を作る。その糸端を思い切り引っ張ると、毛糸の中から糸の塊が飛び出してきた。
そういえば、こういう毛糸の塊を、英語では「ボム(爆弾)」っていうんだそうだ。最近、教わった。ほんと、見事にボム(爆弾)みたいに飛び出してきた。爆弾毛糸は完全にこんがらがって、縮れた焼きそば麺みたいに、ぐちゃぐちゃに絡まってしまっていた。
編みかけのアームウォーマーはまだ片手の途中。せっかく上手くできていたのに、毛糸がダメになったからって、完成を断念するのは悔しいではないか。

元は一本の毛糸。絡まっても、元に戻せるはず。
一つ一つ、糸端を絡まった糸をすき間にトンネルや輪くぐりみたいにくぐらせて、少しずつほどいていった。

絡まった糸の塊を揺すって、ほぐしながら、一つまた一つと絡まりをほどいていく。

次第に、絡まった毛糸の塊が人生の悩みのように見えてきた。「解決の糸口」とはよく言ったものだ。
頭の中がぐちゃぐちゃで事実と感情がこんがらがった状態を、揺すってほぐして、糸端の通り道を見つけて、糸をくぐらせ、絡まりを取って、元のシンプルな1本の糸にもどしていく。
一つ戻すと、その先でまた塊が現れて、ほぐして、直して・・・・・・
押しても引いても動かなくなった毛糸の塊に途方に暮れて、「もう、だめか-」と諦めかけたとき、ふっと自分の持った糸端ではなく、糸端の周りを取り囲む糸をどけると、すっと糸が動き出したりする。動けなくなったら、一旦立ち止まって、視野を広げたらいいんじゃないかと考えたりする。
まっすぐになった糸を巻き取って、まん丸の糸玉に戻していく。
素直になるってこういうことかも・・・・・・

などと、くだらないことを考えながら、400m以上ある毛糸の、8割を元に戻した。ふと時計を見ると、午前3時。1話から流し見していたドラマは7話が終わっていた。
ああ、明日は月曜日ではないか。なにをやっているのだ。

——

ただいま、月曜日の夜。
ここまできたら、あと一息。全部やりきる。

やり切った。苦節9時間。長い戦いだった。


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