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映画「ベル・カント」 日本大使公邸人質事件

何故か、日本が誇る世界的男優Ken Watanabeがでるハリウッド映画は、残念ながら駄作が多いと思う。彼がダメだというのではなく、映画作品自体がいまいち。これも数年前飛行機でみた映画だが、いまひとつだった。日本でロードショー公開はされたのだろうか。

ともすれば面白い素材のストーリーが、脚本が悪いのか、監督が悪いのか、なんとも残念。自分が観た渡辺謙のハリウッド映画でよかったのは、トム・クルーズとの侍のだけかな。

これは明らかに、90年代のリマの日本大使公邸人質事件を題材にした、人質と犯人が心を通わせてしまうというストックホルムシンドロームの話で、数か月の籠城中にロマンスや友情も生まれる。

映画では、とある南米の日系人大統領の国(リマというより高山の街ラパスのような雰囲気がしたが)で、渡辺謙扮する富豪日本人ビジネスマンがホストするパーティにジュリアン・ムア演ずるアメリカ人オペラ歌手が呼ばれて、副大統領とかフランス大使も出席している宴が、反政府左翼ゲリラに占領されるという話。数か月後に大統領が率いるSWATチームが乗り込んで犯人は全員射殺、人質にも犠牲がでる。渡邊謙はゲリラの女の子をかばって撃たれて死ぬ。

ドラマの始めの方から、英語、スペイン語、日本語の会話がとても自然に扱われていて、展開にちょっと期待してしまったが、ストーリー展開があまりにもくさいのに辟易。もうちょっと工夫できなかったのかな。

唯一の救いは、加瀬亮(たけし映画のインテリやくざとかがよかった役者)が英語とスペイン語が堪能な秘書の役ででていて、彼はかなり練習したのだろう、しゃべる外国語がとても自然で、本当に英語やスペイン語が流ちょうな日本人ビジネスマンという感じのリアリティがあった。

劇中のゲンという役だが、カルメンというゲリラの一員と恋に落ちる。恋におちるといえば、渡辺謙がジュリアン・ムアと恋におちて人質中なのにベッドシーンがあったりもする。ジュリアンが音楽が好きなゲリラの若者に音楽を教えたりと、人質事件に、ちょっと無理していろいろ詰め込み込みすぎだよ。

実は、メキシコ留学時代に何度かあった日本人でその後にペルーの日本大使館の専門職(学者がなるアタッシェのような)をしているときに人質事件に巻き込まれた人がいて、事件後に一度あったことがあった。いっしょに人質になった日本の人たちと、その後も定期的に会ったりしているという。自分も若い頃の一時期は中南米専門家の訓練を受けていてもしかしたらそういうほうに進んでいた可能性はいくばくかあったので、この加瀬亮扮するゲンさんがゲリラと恋に落ちるあたりには、ちょっと感情移入してしまった。まあ、現実では、ペルーの事件も4ヶ月の籠城となったわけだが、人質の間あるいはゲリラとの交流はあったかもしれないが、恋物語はさすがになかったのでは。

エンディングで、事件の1年後に生き延びたジュリアン・ムアのオペラ歌手がパリでコンサートを開くシーンがある。何故か、加瀬亮のゲンさんがオペラ歌手のマネージャーになってたりしておもしろかったが、コンサートホールの暗闇で、事件で死んでしまった人物たちが全員正装して参加して聴きに来ているのがステージから見える、というので終わっている。映画ならではの表現法というか、特に説明もなくそういうシーン。それが意外感のあるエンディングで、あれはよかった。

死んでしまった人が、コンサートの暗がりにひょいと聴きにきてくれていてステージからそれがちょっとみえる、というのは、体験したことはないんだが(あったら心霊現象だ)、そんなような感覚におちいったことは個人的に何度かあったので。


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