マンテカ
このアメリカは西海岸にしか展開していないというバーガー屋、In-N-Out Burger(インナンアウト)。一度だけ旅行したときに食べた。美味かった。味の詳細は覚えていないが、この料理人トニー・ボーデインのクリップをさっきみてたら、シンプルで美味い味がちょっと蘇ってきた。
もう5年前になるが、家族で夏休みにカリフォルニアに行った。サンフランシスコでジャイアンツの試合を見てシーフード食べて、レンタカーでヨセミテ国立公園まで行って、そこで知り合い家族と合流して山歩きをして、下山して帰りにナパのワイナリーめぐりという予定だった。ちょっとゴージャスに聞こえるかもしれないが、フライトはマイレージ、アメリカはレンタカーがかなり安い(日本も安くなったが)、ヨセミテの宿泊は山小屋、道中の宿もモーテルのようなとこ。僕は運転手だったのでワインテイスティングもできず(夜、ホテルでしこたま飲んだ)。
ヨセミテへの途中、遅めのランチ休憩でフリーウェイからある街に降りる。マンテカ(Manteca CA)という街。
子どもたちにうんちくをたれる。”manteca” はスペイン語で「ラード」のこと。豚の脂肪。本来のスペイン語だと “mantequilla”がバターなんだが、中南米のいくつかの国ではバターのことを“manteca”という。ここカリフォルニアは19世紀半ばまでメキシコ領だったから、たぶん、ここは「ラード」じゃなくて「バター」という名前の街か。なぜこの街がバターという名前なのかは謎(バターの名産地?)
米墨戦争で1848年にメキシコは今のカリフォルニア・ネバダ・アリゾナ・ニューメキシコなどの領地を失っている。カルフォルニアあたりの地名がことごとくスペイン語だというのはそういう歴史の背景。
うんちくに反応なく、こどもたちは、はら減ったよ~、という反応。
街にはいり、あまり目的なく、うろうろと飲食店を探すと、In-N-Out Burgerのサインがみえる。あ、これあの美味いと噂のカリフォルニアのチェーンだ。そこに入ることにする。
非常にベーシックなバーガーメニューから普通のバーガーを頼む。後で知ったが、いろいろカスタム・メイドしてくれる店らしい。我々は、ごく普通のバーガー、勧められるままに、オニオンとかトマトとかいれながら。なるほど美味いバーガーだった。モス・バーガーのアメリカ版というか、それだとどっちが本家なんだかごっちゃになるか。まあ、おいしかったのは、ランチが遅れて、腹が減っていたというのが大きいが。
家族で日本語で話していたからか、バーガーを運んできてくれた高校生くらいの女の子が我々に聞く。「日本から来たんですか?」
実際にはシンガポールから来たので嘘だが面倒なので、「そう。日本から」というと。
“Nice, I like Japan”と、さりげなく言って、にこっとする。
行ったことがあるのかと聞くと、”No, but someday” という。
バーガー屋の外には視界をさえぎる高い建物はなんにもなくて、ひたすら平らののんびりした田舎の街の景色がみえた。
遠くで大きな警笛みたいな音がしたなとおもったら、しばらくすると、近くを通る線路に電車がくる。
電気でなく、先導するディーゼル機関車?がひっぱる貨物車だったので、電車でなく機関車というべきか。コンテナやら、家畜やら、燃料タンクやら、いろんな貨車を引っ張ってゆっくりと通り過ぎていくが、とてもとても長い。子供が数え始めたが、30とか40を越えたあたりでギブアップ。たぶん100くらいの貨物車がつながっていた。
その間、たぶん15分とか、踏切は閉ざされ、車はずっと貨物車が通り過ぎるのをまっている。車がまばらで、まったく渋滞がなかった田舎町で、踏切を先頭に10台とか渋滞がおこっている。
でも誰も文句は言わないんだろう。たぶん、日に2度か3度起こる踏切の渋滞。このバターという名前の街、マンテカでの日常。
(タイトル画は、Note Libraryから、アボカドバーガーを描いたクリエーターのを拝借。とくにIn-N-Outとは関係ないですが、おいしそうな絵なので)
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