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【Jazz】"Sweet Love of Mine" Jackie McLean

好きなジャズ・チューンねたのつぶやき。

これ、あのアルペジオがきれいなのイントロのガンズアンドローゼズのでなくて、1960年代のジャズの曲。あちらは、"Sweet Child O' Mine"。こちらは「我がスィートなあなた(love) 」。


このおどろおどろしいジャケットの60年代のは、我が敬愛するサックスのジャッキー・マクリーンのアルバムで、たしかこの曲の作曲はマクリーンの後にトランペットを吹いているウッデイ・ショーだったはず。

サックスとトランペットの、いかにも「50年代、マンハッタン」っていう感じのイントロで始まる。AABAのBのさびをトランペットが高らかに歌う。やっぱりAの部分がマイナーっぽくてBのさびで転調してメージャーっぽくなる曲はいいな。絶望の日々に希望が差すようで。よくわからんけどドラムがちょっとラテンフィール、サンバっぽい、コンツカツカツカ。

ジャズの変遷を、スウィング、ビーバップ、モダンジャズへと大雑把に捉えたら、ビーバップ全盛期といった感じなんでしょうけれど、僕にとってビーバップはチャーリー・パーカーとかの40年代の短めの曲の数々で、ジャズがダンス音楽から即興音楽の芸術へと革命的に進化したまだ粗削りだった頃で、このクインテットの演奏はその後の時代の洗練されたかっこいい後期のビーバップ?という感じ。

まあ、演奏が60年代だから、モダン・ジャズでしょと言われそうだけど、あくまでもイメージはビーバップが洗練された時期。アート・ブレイキーとか、管楽器が数本のクインテットやセクステットが都会のジャズライブでメロディにハモリがあったりするやつ。ドラムもビーバップ前期よりもっと複雑で、これもラテンとかアフロがはいっていたり。でも、モダンジャズほど難解だったりせず、あくまでもかっこいい洗練された都会のノリ。

サックスのマクリーンは、大好きなんですが、いつか前に書いたけれど、決して楽器の技巧が超絶とかではなく、最初聴いたときはヘタだなあと音も悪いなあと不遜にも思ってしまったが、だんだん、そのドライな音質と音を飲み込みながらちょっと遅れた絶妙なダウンビートで持ちネタのフレーズをつなげていくスタイルに魅入られていったとさ。

この曲でのソロは、哀愁漂う、なんか等身大の、日々面白くない人生のぼやきみたいなのが聴こえてくる感じ。時々、素早いフレーズがピタッと決まるところ、ゆるい感じが引き締まる。大きな盛り上がりもなく、消えゆくようにソロを終える。それがまたいい。

代わって、まってましたとばかりでてくるウッディ・ショーのトランペットは元気いっぱい技巧バリバリ、高らかにスペインの闘牛のようなメキシコのマリアッチのようなラテンっぽいトランペット。

後半、ぱぉーんぱぉーんとトランペットがいななく、というか音をせりあげる。けっこうなテンションでかっこよく吹きこなしてソロを終える。

次なるピアノは、、、これ誰だろう、あまり好きでない感じのソロ。なので、ノーコメント(変な曲紹介で失礼)。

そしてまたテーマにもどって演奏が終わる。

*

この曲、最初は80年代にサックスのアート・ペッパーの演奏で聞いた。それがこれ。


ペッパーのソロも、哀愁たっぷり、泣きをいれてくるこぶしが聞いたフレーズが多いが、マクリーンとは全然違う早吹きフレーズを時々いれてうまく流れを展開していく。

個性的な、彼ならではのフレーズをつなげて、職人技のソロ。とくにフレーズをいっしゅん飲み込むように一呼吸おいて静かにダウンビートで繰り出すのが、哀愁たっぷり、

次にソロを展開するピアノ、たしかジョージ・ケイブルズ。その頃のペッパーは彼とのLPが何枚かあって、たしか死ぬ前の最後のアルバムがケイブルズとのDuoだった記憶がある。静かな曲を二人で演奏していて、郷愁漂う感じでよかったなあ。また探して聞いてみよう。絶対にあれをきいていた20代より、明らかに死期により近づいている今の方が、その演奏の良さがわかるんじゃないかと思う。

ピアノソロの後で、ペッパーは変則的にベーシストと4バース(4小節のアドリブ交換)を始める。ここでみせるペッパーの早吹きソロは彼の独壇場でとても情緒的で美しい。クラリネットも吹きこなせるからか、クラリネットの音色みたいに聞こえたりする。こんなジャズのソロを吹ける人は彼以降いないのでは。

アート・ペッパーの演奏はたしか The Trip というアルバムに入っていて、そのせいか、この曲を聞くとなんだか旅行で移動しながら窓の外の変わりゆく風景をみているような気がしていた。 ■

(タイトル画はジャズで検索してでてきたものから一番いい感じのものをギャラリーから拝借)


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