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屋上

コロナ前の話。時々、カラオケでやっていた遊び。

メロディーを知っているが歌ったことがないそれなりに有名な曲を、その場でぶっつけ本番で歌ってみる。

ある時、このギルバート・オサリバンのアローン・アゲインでやってみた。ちゃんと聞いたことがなかったが、メロディはよく知っていた。

… naturally というコーラスの語尾が、「ナチュラリイ~」とイギリスなまりぽっくて印象に残っていた以外は、どんな内容の曲かは知らなかったが、ゆったりめで静かで、失恋の歌かなくらいに思っていた。

酔いの勢いもあり、知り合いだけのゆるい飲み会でもあったので、マイクを持って歌い始めた。

あまりうまくできないけれど、アメリカ人がよく飲んでしまう"t"の音をちゃんと発音しようとしたりして、ちょっとイギリスなまりっぽい発音を試みながら。

そして、歌詞をたどりながらそれが展開していくにつれて、唖然とする。

これって、なんだ?

えらい悲惨な内容じゃん。

この上のリンクの和訳に詳しいが、まず、主人公がビルの屋上から飛び降り自殺してしまおうかと悩むところから始まる。

教会で彼女に待ちぼうけにされる、ということは、結婚式当日に彼女の気が変わったということなのか。

それで、またひとりぼっちになっちまった、naturally にね。

このnaturally は、自然とねと言うか、いつも自分によくあることだけどねというようなことかな。まただよ、俺、という風にかな?

次のセカンド・コーラスはちょっと詩的でもあり内容がはっきりはしないが、昔を振り返っても、もともと自分は明るかったのに、突然、どん底に突き落とされて、神様にすがっても助けてくれなかった、自分は結局ひとりぼっちなんだと続く。

そして短いサビ。まあ、僕よりも悲惨な人が世の中にはたくさんいるが、僕らはいったいどうしたらいいんだ?と問いかけ。答えのない問いかけ。

そして、間奏はオケをバックに物悲しいアコースティック・ギターがつまびく単音のメロディ。ところどころ、ブルージーに語尾がフラットになる。切ない。

次に、その若い頃の悲劇がでてくる。

おやじさんが急に死んだ時、大泣きしたっけと言う。突然だったのかな、事故だったのかな、自殺だったのかな、それは歌詞からはわからない。

そして、愛する伴侶を亡くしたお母さんは、それ以降、ふさぎこんでしまって、自分がはげましても口数少なく、孤独に65才で一生を終えた。

その時も自分は泣いた。また、ひとりぼっちになった、いつものパターンで。

それでこの歌は終わる。

正直、それまでの宴の心地よい酔いがすっと冷めた。なんだ、この歌詞?悲しすぎる。

誰かのポストに、悲しいマイナーな曲を聞くと逆に元気になるということが書いてあったが、これはどっちなんだろう。悲しい内容が、とても優しい、きれいなメロディーで歌われている。歌詞の内容を知らなければ、甘~い、エレベーターBGMのような曲。

歌っているギルバート・オサリバンはアイルランド人らしい。そうだよな、オ・サリバンさんだもんな。アイルランドは行ったことがない。

これはダブリンのパブにでも行って、ひとりで黒ビールを飲みながら、考えないとわからないな。

パブのおやじに、"Are you here alone?" とか聞かれたら、"Alone, naturally" とか答えたらかっこいいかな。「いつものことさ、ひとりだよ」みたいな。「一人だよ、見りゃわかんだろ!」みたいな意味にならないといいが。

以上、さっき読んだポストに触発されてというか連想を引き起こされて書いたもの。そのポスト:

いろんなタイプの曲もこなしたミュージシャンだったんですね。

それと、このカラオケエピソード、以前Noteで書いたことあったかな?そんな気も。それを自分で忘れているとしたら、ボケ注意ですね。

(タイトル画は、Note Gallaryで「屋上」でさがしてでてきた写真を拝借)

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