マガジンのカバー画像

【連載小説】スモール・アワーズ・オブ・モーニング

11
連載全5章 脱力系バンド結成物語か、国際化時代の日本人の在り方を問う問題作か?熱い湿気が覆う島シンガポールで多国籍メンバーのバンドが奏でるブルースが流れていく中で展開する人間ドラ…
運営しているクリエイター

#ミッション

【連載小説】スモール・アワーズ・オブ・モーニング(1)

第一章  みんな愛する人が必要 「シンちゃん、今度のボーカルいいね。英語うまいわ。あ、当たり前か、外人だから。なんか俺たち、かなりいい感じのブルースバンドになってきたじゃん。メンツまだ全然足りないけどね」 白髪の鼻ひげをたくわえた、もう初老といった年のおやじが、ベースを外しながらつぶやく。 「やっぱ、洋楽のボーカルは外人ですよね。今度のオーストラリア人のブルースは誰の知り合いでしたっけ。マルさんの?」 もうひとりの50代らしいほうが、汗だくになったサックス・ストラップ

【連続小説】スモール・アワーズ・オブ・モーニング(2) 第二章 ソウルマン

屋上でのリハの休憩で、教授ことリード・ギターのダニーが、ブルースうんちくをたれる。 「(この曲ソウルマンは60年代のサム&デイブによるヒット曲。60年代後半は、ベトナム戦争が長引いて市民権運動も高まっていた時代で、この曲は67年のデトロイト暴動の後に書かれている)」 茶色のあご髭をぼりぼり掻いて、ダニーは続ける。 「(共同作詞作曲のヘイズは、その年のデトロイト暴動のニュースをみて、黒人がオーナーの雑貨屋とかで、オーナーたちが目印に外に "Soul" と書いたことでデモ隊