宝塚に行ってきた! その2
(注:ここからは「蒼穹の昴」についてのネタバレがあります)
幕が上がる前にどこの劇場でも「携帯の電源切ってください」等観劇中の諸注意があります。その後男役トップの彩風咲奈さんから「これから『蒼穹の昴』を開演いたします」というような挨拶がありました。声かっこいい!
そしてオーケストラのチューニングの音。あっ、生オケなんですね。よく見たらオーケストラピットがありました。そしてそのオケピを取り囲むような張り出しがあります。公演中結構そこも使ってくれたので、最前列の方はものすごく近くでスターを見られるんですね。羨ましい。
そして舞台が始まりました。
まず、主役の梁文秀(リャンウェンシウ)が、普段着で友人と居酒屋で飲んでいるシーンから始まります。こんなシーンなのに既にかっこいいのはどうしてなの?
文秀役の彩風咲奈さんは公式プロフィールによると身長173センチだそうで、ヒールも履いてましたがとにかくかっこよくて。スタイルが良いんだろうなあ。
と、初手から引き込まれてみたら春児(チュンル)役の朝美絢さんも春児にふさわしい美少年。わたしは前々から「春児をやるのは神木隆之介くんか羽生結弦くんじゃなきゃ許さん」と思っていましたが、その誓いが一瞬で瓦解しました。春児の妹、玲玲(リンリン)はヒロインで娘役トップの朝月希和さんがやってましたが、初登場時はボロボロの服を着ているのに本当に可憐でこれはもう文秀放っておけないよなあ、わかるよウンウン。
そんなジャブを喰らっていたらいよいよ舞台は大清帝国の紫禁城へ。
やけに奥行きのある舞台だなと思ってたら、大きな階段が出てきました。ああ、奥行きはこのためにあったのか。それはともかく!
いーやー、居並ぶ女官達の舞。圧巻。そして高御座にいらっしゃる光緒帝の龍袍(ロンパオ)よ、西太后のお衣装よ。なにこれいくらかかってるの?くらくらしていたら京劇が始まりまして、その衣装もキラッキラ。そして衣装に負けないくらい、槍を振り回す演技も素晴らしくて。
どの場面になっても気が抜けません。すぐ撃ち抜かれてしまう。
前半、わたしが好きな黒牡丹(ヘイムータン)が出てきましたが、蒼穹の昴中で一、二を争う名台詞「人間はできないと思ったら、まっすぐに立つことだってできやしねえんだ」と言ってくれたりして涙腺が崩壊しました。
それから、個人的には順桂(シュンコイ)役の和希そらさんの声がめちゃくちゃ好みでした。なんというイケボ。
そんなこんなで圧倒されているうちに一幕が終わって休憩。
もう?半分終わっちゃった?の?なんだかホヤホヤした気分のまま友人からきていた全く関係ないLINEに返信したのですが、後で読んだら返事になっていなかった上に「今蒼穹の昴の幕間。いやーーーーー………すばらすい……やばいよ…………」とか書いてました。語彙力も崩壊。
休憩中ぱらぱらとパンフレットを読んだのですが、んん、やっぱり栄禄(ロンルー)は「えいろく」って呼ばれてたよね。私の聞き間違いじゃないよね。そういえば西太后も「シータイホウ」じゃなくて「せいたいごう」だったし。と思ったら「分かりやすさを重視し、日本語読みと中国語読みを混在した形にしています」と注意書きがありました。そっか!耳で聞いてわからないといけないですもんね。そうですね納得。つい先日「後宮の◯」に対して「なんで『花娘』が『かじょう』で『花娘々』が『ファニャンニャン』なんだよ」と悪態をついていたことは天井の棚に放り投げておきます。
そして衣装は、一見地味に見える文秀の衣装の裾(!)すら総刺繍だからミシン7時間かかったとか、図案は当時のものを忠実に描くところから始めたとか、頭がくらくらしました。
さすが宝塚。
舞台は演技力が勝負というけど、やっぱり正しく金と手間をかけたものにはかなわないのだと思い知りました。
後半はもう泣きっぱなし。
「蒼穹の昴」は、高い志を持った才能溢れる若者が上りつめていく出世物語なのですが、同時に誰がどうやっても倒れていくしかない清という大国の滅びの物語でもあって、ベクトルが逆なんです。
彼らが生まれるのがあと30年早かったら、もしかして運命は違っていたのかもしれない。そう思わせられます。宦官となってこの先子孫を望めない春児と年老いた西太后というある意味「未来のない」組み合わせが、文秀と若き光緒帝を清国の中心から結果的に追い出す、というのも滅びに向かっている清国を象徴しているかのようです。
それでも彼らは運命に抗って精一杯生を全うし、清国はともかくも欧州列強の植民地になるという最悪の事態だけは避けられた。
それまでの蓄積があって、最後の李鴻章の台詞「人間の力をもってしても変えられぬ宿命など、あってたまるものか」に繋がって、本当にスケールの大きな、熱量の高い物語だなと思うわけです。
浅田次郎先生特有の暑苦しさと宝塚の非日常的ドラマティックはこんなにも相性がよかったのか。
そんなこんなで本編が終わり、涙で前が見づらくなりつつもう終わっちゃうのかと思ったら最後には壮大なフィナーレ!
途中で死んじゃったので退場した順桂役の和希そらさんが華麗なスーツに身を包んで歌っていたのに見とれていたら、いずれ劣らぬ美女達のラインダンス(ロケットというらしい)。うおお、おみ足がなんと美しい!そしてそして、ラインダンスの後ろで閉じていた幕が開いたと思ったら、でたーーー!!大階段!こ、これが噂のっっ!!!
は、話には聞いていたけどこんな、すご……これ、そんなにヒラヒラしたマントで(男役)、そんな煌びやかなドレスで(娘役)どうして転ばないんですか?宝塚の歴史の中で転んだ人っていないんだろうか。
トップの彩風咲奈さんおよび朝月希和さんは勿論一番華麗な衣装に身を包まれていて、ダンスも素敵で本当に眼福でした。見惚れていたら終わってしまった。
いや、これ、本当に見られてよかった!!
というわけでドブンと沼に浸かりまして次の日から「なんとかもう一度行けぬものか」と公式リセールのチケトレのリロードを繰り返し、どうにかもぎ取ったので行ってきました2回目。
今回は1階席でした。2階席ほどぎゅっと詰まった感じがなくて、もう少し足が伸ばせました。しかしその分傾斜としては緩くて、すこーし前の人の頭が気になった箇所もあったかな。帝劇より全然ましでしたが。
さておき前回は初回だったから、ちょっとわたしのテンションもおかしかった。2回目見たらきっと冷静になれるはず。ほら、「君◯名は」だって1回目はハラハラしたけど、結末をわかった見た2回目は安心して泣かなかったじゃない?大丈夫。
……たかをくくって行った自分を幕間で殴りたくなりましたね。馬鹿かお前!1回目と同じところで泣いてるじゃん。どうしてハンカチ1枚しか持ってこなかったのばかばかばか。後半はハンカチしまうのめんどくさくて、ずっと目に押し当ててる変な人になってました。隣の人ごめんなさい。
他のミュージカルだったら「再演があるだろう」と思って呑気に構えてしまうのですが、宝塚はあまり再演もないみたいだし、玲玲役の朝月希和さんはこの公演で退団が決まっているというので、一期一会感もすごかったんですよね。
本当にもう一度見られてよかったです。
てなわけで素晴らしい宝塚体験でした。
1月のディミトリも楽しみです!
(終)
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