東北大理系数学2023を解く

まず、全体の感想からだが、そこまで難しくなかったと思った。比較対象がそこまで多くない自分にとっては最近解いた2024年の東北大理系数学の問題と難易度を比べているのだが、大きく違うのは大問を完答する難易度だろう。

この年の問題は大問6つのうち4つの大問が小問2つ、残りの2つが小問3つでかなりあっさりしていた。難易度に関してもどれもこれも難しくはないが、確率(大問1)や複素数(大問4)、ベクトル(大問5)といった得意不得意で個人差の出やすい(と個人的に思っている)分野からの出題が多かったので数学が苦手な人はそこまで簡単に感じなかったかもしれない。
ただ、簡単であるのは事実なので数学が得意なら大問1〜5に関してはどれも25分で完答できるぐらいの実力があってもいいだろう。(東大や京大、東工大あたりの数学が難しい大学を受ける人は得意不得意に関わらずこのレベルの問題は絶対に落としたくない。)
大問6は難しいわけではないのだが、なんせ計算が面倒なのでもう少し時間がかかってもいいだろう。数学が苦手な人でも大問1,2(1),4(1)(2),5,6(1)ぐらい取れていたら十分すぎる出来だし、実際それぐらい取ることは不可能ではないと感じた。逆に得意な人は1,4,5を完答した上で2,3もしっかり取れていると、かなりアドバンテージになったのではないだろうか。それ以上は実力があっても制限時間が許さないかもしれないだろうし、満点を取る試験ではなく合格点を取る試験である以上、時間があっても見直しに回してしまう方が得策だろう。

大問ごとの難易度評価だが、難易度順に並べると、

1<5<4<2<3<<6

になると思っている。1は確率が苦手な人でも具体的にイメージしやすいから計算さえ頑張れたら十分合わせられる。
4,5は典型問題の詰め合わせなのでちゃんと練習していたらそこまで目新しさを感じることはなかっただろう。ただ、大問4の方が計算量が多く、書くことも多いので少しだけ難易度が上だと判断した。
2,3はそれぞれ整数及び極限と数列からの出題で典型問題とまではいかないがどちらも計算量が少なく数学が得意な人ならこの2つも完答できる実力は欲しい。2(1)は簡単なのでそこは苦手な人でも必ず取りたい。ただ、3は手も足も出なかった人もそれなりにいるだろうから、難易度は少しだけ2の方が簡単だろう。
6はそこまで難しいわけではないのだが、苦手な人が多いであろう領域が絡んだ求積問題で、面積を求める際の計算がかなりしんどい。実際計算量を減らすテクニックはあるが、それでもなおしんどいぐらいには計算する必要がある。

ということでここからは大問ごとの解答とそのポイントを見ていこう。

大問1

とりあえず2通りの解法を考えてみたが、確率が苦手な人は本解(別解にしていない方)ができれば十分である。本解では問題で扱われている試行を比較的簡単にイメージできることを利用して、そのままゴリ押して解答している。条件付き確率が少し絡むが、玉を取り出す試行が9回までしかないから計算が可能だし、そもそも問題文にかかれている状態をイメージしてそのまま確率が求められるから条件付き確率がどうとかそこまで深く考えなくても答えは出せてしまう。そういう観点からこの問題は簡単なのだが、もし別解を書かなければならないとなったら途端に難易度が少し跳ね上がるだろう。というのも例えば赤玉が100個、白玉が101個みたいに計算が辛くなるくらい大きな数になっていたり、それこそn個とn+1個とかのように文字にされて出題されてしまうと、ほぼ必然的に別解を取らなければならない。でも、別解では確率の問題に特有の日常的、具体的な事象を確率に影響しないように注意しながら抽象化することが必要になる。だから数学が得意であったり、確率が得意な人(数学の学習にそれなりの余裕がある人)は別解のような解法が出せるようにしておきたい。また、入試の数学の難易度がかなり高い大学(主に東大京大東工大など)を受ける人もこのような考え方ができるように普段から問題演習を積んでおきたい。まあ別解を使うと今回に限っては計算が楽になることぐらいしか利点がないのだが。

大問2


三角関数から始まったかと思いや、(2)で急に整数がらみの極限の問題になっている。ただそこまで難しくないのは事実である。
まず(1)だが基本的な三角関数の処理を問う問題でここでは絶対に落としたくない。3倍角の公式を覚えている人はそれを使った人のほうが多いかもしれないが、個人的にはこの程度の問題なら和積の公式でもいいと思う。できるなら、この問題で3倍角の公式を使っても和積の公式を使っても同じスピードで解けるくらいには和積の公式に慣れていてもいいのではないだろうか?ただこれは和積の公式を覚えろということではない。別に覚えていなくてもそれくらいはできる。(あくまで個人的イメージだが、無駄に3倍角の公式は覚えているのに和積・積和の公式は覚えていないはおろか使い所すら見極められない人が多い気がする。)
三角関数の和や差がでてきたら三角関数の合成と和積の公式(不等式評価ならベクトルの内積も)、三角関数の積が出てきたら積和の公式にパッと手が出せるようにはしておきたい。

続いて(2)だが、整数絡みで個数と言われたらまずはガウス記号([x]で表されるやつ)を思い浮かべてほしい。解答には一切出していないが、基本的な考え方はガウス記号と同じである。それがわかっていればこの問題は簡単になる。
また極限が絡むので一旦は$${p_{(m)}}$$を$${m}$$の式で表すことを考えるのだが、先程ガウス記号の話をしたので薄々わかっているだろう。当然そんなことはできない。となれば、極限に関する公式はどれも使えないので残っている手段ははさみうちの原理しかない。このくらいは数学が苦手でも必ず気づいてほしい。はさみうちの原理しかないなら、当然$${p_{(m)}}$$についての不等式を用意するしかない。
$${p_{(m)}}$$はガウス記号と同じように扱うこと、$${p_{(m)}}$$についての不等式がほしいこと、この2つがちゃんとわかっていれば、ガウス記号は不等式と関係が深いことも踏まえてまっすぐ正解へと向かっていけるだろう。

この問題がスラスラ解ける人は個数と極限が絡む次の問題も解いてみてはいかがだろうか。(ちなみにこの問題と題材が似ているだけで難易度は割と上がるので注意)


大問3


この問題のポイントは(1)だが、できなかった人が多いのではないだろうか。というのも(1)で漸化式を解かなければならないことぐらいは誰でもわかると思うが、ちょっと考えて解けなくてパスした人がいるだろうとは思っている。結果論で語ると特性方程式を考えたら解ける形に持っていけるのだが、$${a_n}$$の係数に$${n}$$がいるとどうしても躊躇してしまう人がいると思う。(僕が実際にその類の人間である。)
ただ、これまで漸化式を解いてきたときに使ってた解法なんて他にあまりないし、漸化式を解かなければならなくてそのための誘導もないことを踏まえるとメタ的に「いけるんじゃないか?」と思う。(数学という観点ではあまり良くはないのだが、受験数学という観点ならそういうメタ的要素も加味していいだろう。)
するときれいな形になって「これならできる」と思えてくる。おそらくきれいな形にしてからは別解みたいに両辺に$${(n+1)}$$をかけるというのをおそらく教わったり、参考書で目にしたことがあるとは思うが、そんな方法を暗記するくらいなら本解みたいに力づくで解いたほうがいいと個人的には思っている。こっちの方が応用が効くし、単純に頭を使わなくても解ける。一度はこういった解法にも慣れておいたほうがいいだろう。
(2)はいかにも部分分数分解を使いそうな部分が出てくるから、その処理さえできれば解ける。やっぱりこの問題は(1)が勝負になるだろう。

大問4


(1)は整式の割り算、(2)からは複素数についての問題だが、はっきり言って受験生ならこの手の問題は解法を暗記するくらいには慣れていてほしい一問だと思う。
まず(1)だが、「$${f_{(x)}}$$で割り切れる」ときたら次の2つをすぐに思い浮かべてほしい。
$${f_{(x)}}$$で割った余りが0になる。
$${f_{(x)}}$$の解を割られる整式に代入すると=0になる。
今回は本解で①、別解で②を使っている。本解の方が計算量が少なくて簡単だが、$${a}$$の処理がうまくできないと本解ですら辛かったかもしれない。ただ、$${\frac{\sqrt5-1}{2}}$$という形を見て二次方程式の解を連想するのは難しくないし、難関大学を受けるなら解から二次方程式に戻して使うみたいなのも経験しておきたい。別解は個人的には好きなのだが、ちょっと推奨できない。というのも別解を使うならまず解と係数の関係を使うというワンクッションを挟んだ上で見たら分かる通りまあまあな計算量を要求される。($${f_{(x)}}$$を使って字数下げすることもできるがそれでもそれなりの計算量は結局要求される。)ただ、別解もできるくらいの実力はあってもいいのでぜひとも練習はしておきたい。

続いて(2)だが、ここから急に複素数の問題へと方向転換していく。ただ(2)は超典型問題なので絶対取っておきたい。ここまでで得られる手がかりとしては、①明らか偏角が有名角ではないこと②(1)で証明した$${x^4+x^3+x^2+x+1}$$が$${f_{(x)}}$$で割り切れるという事実③最終的に極形式で表すことができること
からやっぱり②を使って$${{\alpha}^n=(実数)}$$の形に持っていってそこからド・モアブルの定理を使いたい。このように考えられていたら十分解くことができる。また数学の演習量をそれなりに積んでいる人なら$${x^4+x^3+x^2+x+1}$$の形を見た瞬間に$${x-1}$$をかければ$${x^5-1}$$になることにもすぐに気付けただろう。公比$${x}$$の等比数列の和の形だと見えたらそんなことを知らなくても同じように変形できる。

また(3)だが、(2)で極形式で表示できている以上、指数が2023というバカでかい数になろうともド・モアブルの定理という味方がいるのでへっちゃらである。次数を下げられたら最悪わからなくなっても解を直接放り込んで計算したっていい。僕自身改めて解答を見ると$${\beta}$$なんて用意せずに単純に$${f_{(x)}}$$を利用して次数下げすればよかったなと思っているが、当時の自分はちょっと迷走していたのだろう。(まあ答えはあっているので一応OKの範囲内ではあるのだが。)

大問5


空間ベクトルからの出題だが、やることが決まっているので全く難しくない。あえて言うなら、問題文にある線分OCと線分ABが垂直であるという条件がかなり大事なのだが、地味に読み飛ばしてしまいそうになったので僕から言わせればそこが一番時間がかかったまである。(冗談である。)

(1)は内積を求めるだけで使える条件の整理がちゃんとできていればできることが少ないので迷うことがない。
(2)では
あるベクトルが平面と垂直→そのベクトルと平面上の一次独立なベクトル2つがそれぞれ垂直
ということさえ分かっていればあとは計算するだけである。この読み替えは基本の1つだろうから絶対覚えておきたい。
(3)では「ベクトル2つが平行→一方のベクトルが他方のベクトルの定数倍で表される」を使うがこれまた頻出なので絶対覚えておこう。

大問6


今回の6問の中で一番難しいのである意味捨て問になるかもしれないのだが、難しすぎるわけではないので練習できる間にこのレベルの問題にも十分手が出せるようにしておこう。

難しいと言ったのだが、この問題が難しいのは最後のSの面積を求める部分だけなのでそれ以前、つまりは(1)と(2)のSの領域図示まではできているといい。(1)は微分して$${(傾き)=1}$$の方程式を解くだけで、(2)の領域図示は$${f_{(x)}}$$のグラフさえ描けたらあとはそれを平行移動させたものを描けばQの軌跡も描ける。
一点だけ言うとするならば、領域図示する時に(1)で求めさせられた傾きが1の接線の意味に気づかなければ微妙に違う図になるかもしれない。

問題は面積を求める部分にある。もちろん普通に積分してもいいのだが、場合わけから計算量がかなり多くなってできなくはないが、試験時間内でやるのはちょっと厳しいと思う。だから、線分の通過領域の一部を上手いこと平行四辺形に変形することで計算量を減らしているのだが、どれくらい記述すればOKなのかとかそもそもこれが使える範囲はどこまでなのかとかが非常に怪しい。
どこまで使えるかは分からないが平行四辺形の面積と同じであることを示す時に次のような考えを使っているということは知っておいてほしい。

僕の書いた解答でもこれを一応使ってはいるが、かなり適当になってるので少し気をつけて欲しい。(僕の解答に関していえば、ある程度本番を意識した解答にしてはいるが、ところどころ分かりやすさを優先していたり事前に計算しているために途中式を省いているところがあるためその辺は理解してもらえるとありがたい。)とりあえず面積を求める部分に関しては、線分の通過領域で平行四辺形に等積変形することがあるということを知れたら一旦はそれで十分である。


(これで大問1〜6のポイントチェックは終わりです。
最後に興味がある人は2024年の東北大理系数学の記事も読んでいただけると幸いです。)


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