東大理系数学2024を解く 大問6

東京大学で2024年に行われた入試の数学(理系)の問題を思考を交えつつ解いてみる。

大問6

関数の問題かと思いきや分野は整数。(1)は解きやすいので勝負どころは(2)となる。一般的には素数絡みの問題では有効な解法は次の2つである。
積の形
これが作れたら片方を±1と決定できるため、方程式に持ち込める。
倍数判定
積の形にならない場合はmod3,5あたりを試すと上手くいきやすいケースが多い。(特に京大)
(1)では積の形を作ることを意識してみよう。

あるあるではあるが、積の形に直した時に負の数を考慮し忘れることが時々あるので注意しよう。

続いて(2)だが、先に言っておくと、難しいのは難しいのだが、難しいというより面倒や大変という言葉の方がお似合いな問題だ。下調べで予備校の解答を読みはしたが普通に長くて頭が痛くなったくらいで、本番1問25分しか時間をかけられないなら捨てるべき問題だと感じた。難しいとしている評価も多いが、個人的考えとして「(25分で解くのが)難しい」であって「(時間無制限で解くなら)他の大問と同じくらいの難易度」だと踏んでいる。(書いてる人がどちらかというと整数問題とかの方が得意な方なので多少バイアスがかかっているとは思うが。)
ということで解いていくのだが、ポイントがいくつかあるのでそこを1つ1つチェックしていこう。
まず大きな方針だが、素数になる可能性がある整数xは最大6個であるから、そのうち3つが素数にならないことを示す方針で行きたい。a,bを含んだ式が素数であることを示すのは無理に等しいが、素数じゃないことを示すのはできるからだ。


①、②、③の番号を以下で使います。

次に何をするかだが、ここで(1)で素数になる可能性があって調べたけどダメだったときの値に着目する。(否定するにしても否定する理由のヒントを(1)から得られると良いのだが、現実味が薄れる。)
すると、$${-11,-5±\sqrt6}$$から素数どころか、整数ですらなかったり、正の数ですらない。ここから察するに素数であることの必要条件が自然数だから、自然数にならないのをまず弾いていって、それでも候補が4つ以上残るなら偶奇や3の倍数といった倍数で絞り込みをかけようと思えると話が進む。正の数や有理数といった素数よりも大きい枠組みから外れているものを探す感覚だが、この時点で十分難しいだろう。
次にどれから否定していくかだが、いきなり①の時を否定するのは厳しそうだから、一旦①の時は両方素数になるとしておいて、②、③のうち素数になるのが2つ以上ある時がどんな時かについて探っていこう。
(厳しいというのは①の時は必ず$${f_{(x)}}$$は整数になるが、②、③の時には無理数になる可能性を秘めている。だから、無理数を弾く→0以下の整数を弾く→倍数判定の順番で外側から埋めていく感覚で絞っていきたい。すると、整数が確定している①は比較的厳しいとなる。)
②、③から2個以上素数が出てくる時、次の3パターンに分けられる。

(ⅰ),(ⅱ),(ⅲ)を以下で使います。

この中で制約が厳しそうなのはどれだろうか?と言われるとなんとなくでもみんな(ⅲ)だと思うだろう。というのも、(ⅲ)だけ2つの式を扱うので他の2つより圧倒的に厳しいために、$${x,a,b}$$のいずれかの値、もしくはその範囲を決定できたり、そもそもありえないことを証明できる可能性が十分にある。(今回は(ⅲ)にはなりえないという結論に辿り着く)
まず先に綺麗な証明から。


二次方程式の解に関する問題で解を文字でおいてみるという解法は共通解を持つみたいな問題とかで経験済みだとは思われる。
しかし、僕は前々から書いていた通りここでは、素数以前に、有理数解を持つ条件や正の解を持つ条件から絞って整理してみた。


ポイントとしては、素数であるための必要条件を使って最終的にaの範囲を絞ったところで、前に書いたように無理数を弾く、負の数を弾くというつもりで進めたらこのようになる。正の解を持つ条件に関してはそれぞれ2つのうち大きい方が正であることを必要条件にすればよい。
他には$${D=k^2}$$,$${d=l^2}$$とおいたところにある。あまりにも長くなるので証明は一旦省いたが書く場合には次のような証明が必要となる。別に大した証明ではないので作業感覚でこなせるはずだ。


あとk,lを求めるところは初歩的な部類の整数問題だから、手順をすっ飛ばしたが、一応軽く触れておくと、$${k+l}$$,$${k-l}$$に因数分解したら8の素因数分解と合わせて連立方程式が立てられる。ここで詰まることはこの問題に手が伸びているならないだろう。
続いて(ⅰ),(ⅱ)だが、これは(1)を見る限り成立するパターンがあると考えられる。(実際(1)では(ⅱ)が成立している。)だから、(ⅰ),(ⅱ)が成立するとして、一旦成立するとしておいた①を否定する方針で行こう。

ちょっとギュウギュウです。


ポイントは正負をベースに否定しようとした点にある。やっぱり未知数$${a,b}$$を含んでいる状態で倍数による否定は難しいから$${x=±1}$$の時に$${f_{(x)}}$$が負の数になることを示す方針で進めた。だから$${y=x^2+ax+b-1}$$のグラフを考え、$${f_{(±1)}}$$に形を寄せるために$${x=±1}$$を$${y=x^2+ax+b-1}$$に代入した時の正負から不等式を作った。
(ⅰ)の方が少し簡単で(ⅰ)ができれば(ⅱ)は(ⅰ)を真似れば良い。しかし、1つポイントとして、矛盾に持ち込むために(ⅰ)では$${f_{(-1)}>0}$$としているが、(ⅱ)では$${f_{(-1)} \geqq 2}$$としている。どちらも$${f_{(-1)}}$$が素数であるための必要条件としては同じだが、不等式の絞り具合が違う。そこを場合ごとに上手く活用できるかどうかが鍵となる。

この問題のポイントは必要条件からうまく絞りきれるかどうかと混乱せずに1つ1つ潰していく冷静さだと思われる。25分で解くのは厳しいと思うが、もし整数問題が得意で大問3の確率とかに手が出ないならその分この問題に時間をかけて解くのもアリかもしれない。

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