阪大理系数学2022を解く 大問1

2022年度大阪大学入学試験のうち、数学(理系)の問題について思考を交えながら解いていく。

大問1

複素数からの出題で簡単とは言わないが、上位大学の受験生なら必ず一度は経験しておきたい問題であり、絶対取れるようにしておきたい問題である。この問題は複素数の問題としては定番中の定番の問題と言えるので解けなかった人は複素数の分野が弱点となっている可能性が高いだろう。逆に、複素数をマスターしている人ならあっさり解くことができただろう。

実は2022年の阪大理系数学は「受験勉強で数学にちゃんと時間をかけた人なら必ず取れる」問題が揃っているので入試問題として非常に完成されているなと感じる。どの問題も簡単ではないのだが、各分野の定番のような問題が出題されているのでこの5問セットを解いてみて、見たことがないと感じたり解き方が分からないと感じた問題があったら今すぐにその分野は見直したほうがいい。

ということで問題を詳しく見ていこう。
まずは問題を見やすく整理する。

$${r}$$を正の実数とする。
$${|z-\frac{3}{2}|=r}$$を満たす複素数$${z}$$が等式$${z+w=zw}$$を満たす時、複素数$${w}$$の満たす式を求めよ。

「図形を求めよ」と言われたら三角形とか双曲線とかそういう具体的なものを最終的には求めなければならないのだが、一旦は満たす条件式を求めるということを念頭に置いてほしい。条件式を出してからそれを言葉に直すから、直接図形的なイメージを求めるのではなく式で処理していいということを理解しておきたい。だから、図を考えるのではなく式だけで処理していく。

そして今回欲しいのは$${w}$$についての情報で、すでに与えられているのは次の2式だから、そこから変数$${z}$$を消去する。この時、$${r}$$は定数だから残しておいて良い。与えられた文字が定数なのか変数なのかは常に意識しながら問題を解く必要がある。

$${|z-\frac{3}{2}|=r}$$ ー①
$${z+w=zw}$$ ー②

今回は②を$${z=}$$の形に直そう。

ここで気をつけてほしいのは、0で割ることがないように注意することである。特に文字が絡む割り算ではこの注意が抜け落ちていることがよくあるのでかならずチェックしておかなければならない。
そして①へと代入することで$${w}$$についての式になったのでこれを整理する。

軌跡、領域にまつわる問題は基本的に答えに必要のない文字を消去していく方針で進める

ここで両辺を2乗して$${w}$$と共役な複素数$${\bar{w}}$$を使って計算を進めると次のようになる。

こうして答えは求まる。ここで注意すべきは先程と同じく0で割ることがないかどうかである$${4r^2-1}$$が0でない時には$${4r^2-1}$$で割っているが、こういう割り算には注意深くなっておかなければならない。あと、答えの半径の部分は絶対値を抜かしてしまうと負の数を取りうるのでそこも間違えないように気をつけたい。

こうして答えが出たのだが、実は$${|w-3|=2r|w-1|}$$の時点で答えがわかる。というのも、このような式で表される複素数の軌跡は頻出で「アポロニウスの円」とよく言われる。

一般に$${y|w-a|=x|w-b|}$$で表される複素数$${w}$$の軌跡は
A(a),B(b)として、点A,Bを定めると、
$${x=y}$$の時、線分ABの垂直二等分線
$${x=y}$$でない時、線分ABをx:yに内分する点をC、線分ABをx:yに外分する点をDとして線分CDを直径とする円

これが成り立つからこの問題にも適用すれば簡単に答えが出せる。(答えについては上に同じなので省略)

この問題は複素数の表す軌跡というよく扱われる問題であり、中でもアポロニウスの円を扱ったものでぜひとも解けるようにしておきたい。

大問2へ続く。

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