京大理系数学2024を解く 大問3

2024年に実施された京都大学の理系の入試問題の数学を無理のない考え方で解く。
大問3


大問3はねじれの位置にまつわる問題で分野はベクトルとなっている。前日に行われた大阪大学の入試でもねじれの位置に関する問題が出たことで話題を呼んだが、ねじれの位置について理解していなければこの問題への挑戦権は失われる。
ところで、ねじれの位置とはなんだろうか?
中学生で学習する分野にあたる以上、京都大学を受験するならば知っていて当然であってほしいが忘れた人も一定数いるであろうことから今一度思い出してみよう。
端的に言うと、ねじれの位置とは平行でなく、かつ交わらない2直線のことである。
つまり、この問題では直線QYと直線PXが(1)平行でないことと、(2)交わらないことをベクトルを用いて表現することが求められる。しかし、解答を考える上では確率で余事象を考えるように今回も逆の事象、つまり平行条件と交わる条件について考えた方がやりやすいだろうという見通しは立てておきたい。
これを踏まえて問題へと踏み入っていくことにしよう。
まず①平行となる条件について考える。
ベクトルの平行条件は知っての通り、一方のベクトルがもう一方のベクトルの定数倍で表せること、つまり今回の問題に落とし込むと、
$${\vec{PX} = k \vec{QY}}$$となることである。(kは実数)
これを始点をOとするベクトルで書き換えていくと
$${\vec{OX} - \vec{OP} = k( \vec{OY} -\vec{OQ})}$$ ー(*)
ここで、問題文の条件から
$${\vec{OP} = 1/2(\vec{OA})}$$
$${\vec{OQ} = 1/2(\vec{OA} + \vec{OB})}$$
$${\vec{OX} = x(\vec{OC})}$$
$${\vec{OY} = (1-y)(\vec{OB} )+ y(\vec{OC})}$$
を代入し整理すると、(*)は以下のような式となる。
$${(1/2-k/2)(\vec{OA}) + k(1-y-1/2)(\vec{OB}) + (ky-x)(\vec{OC}) = 0}$$
ここで、4点OABCが同一平面上にないことから$${\vec{OA}}$$,$${\vec{OB}}$$,$${\vec{OC}}$$は一次独立の関係にある。だから、(*)の式が成立するなら3つのベクトルの係数は全て0にならなければならない。
ゆえに(*)が成立する条件は
1/2-k/2=0
k(1-y-1/2)=0
ky-x=0
であり、これを解くとk=1,x=y=1/2が得られる。
これより平行にならないための条件はx=y=1/2ではないことである。
次に②交点を持つ条件を考える。
交点を調べる上で、直線PX上の点Sと直線QY上の点Tを考えると、交点を持つ条件はSとTが一致する条件に等しいとみなすことができる。
ここで0ではない実数s,tを用いてS,Tを次のように表す。(今回はSとTが一致する場合について調べるから、PとS、QとYが一致しないものとしてもよい。直線PXがQを通るまたは直線QYがPを通ることはないことについてはあとでもう少し書きます。)
$${\vec{PS} = s(\vec{PX})}$$
$${\vec{QT} = t(\vec{QY})}$$
そしてOを始点とするベクトルで揃えるとSとTが一致するとき、$${\vec{OS} = \vec{OT}}$$となることを上手く活用していくことを念頭に置いて上の2式から条件を求めていきたい。

途中式が読みづらくなる可能性から写真にしました。

これより①同様、ベクトルの一次独立からSとTが一致する条件は以下のようになる。
t/2-s/2=0
t(y-1/2)-1/2=0
sx-ty=0
これを解くとs=t,x=y,y=1/2(1-1/t)が得られる。
これより交点を持つ時のx,yの条件はx=y,y=1/2(1-1/t)
となる。後者に関してはtの取りうる値の範囲から1/2を除く全ての実数をyが取ると分かる。
これより
①または②を満たす条件はx=yとなるから、
ねじれの位置にあるための条件はその反対のx≠yである。

こうして答え自体は出たのだが、他に解き方はないのだろうか?
見た目はベクトルではあるものの空間図形である以上、座標や幾何での解法についても模索してみよう。もしくは面倒な場合は何が原因かを少し探ってみよう。
まず座標だが、OAをx軸上に取り、平面OACがxy平面に重なるように取ってみる。

これがおそらく文字を最も少なくする取り方ではあるがそれでも6文字入っていて、ここからQの座標だけでなく、PXとQYの方程式を出さなければならない。そう考えると、非常に計算が煩雑になることが予想されるから、座標設定はあまり推奨されないだろう。

次に幾何的に考えてみる。
そこで直線PXについてもう少ししっかり考えてみると、PとXがそれぞれ平面OAC上にあるということは直線PXは平面OAC上にあるということである。(これに関してはベクトルで考えれば明らかな話である。)これは直線QYについても同様のことが言えるから直線QYは平面ABC上にある。
これらから、直線PXと直線QYが交点を持つ時、その交点は平面OAC上かつ平面ABC上になければならない。つまり、交点を持つとき、その交点は直線AC上に表れると言えるし、また反対に直線PX,QYとACとの交点をそれぞれS,Tとすると(このときx=1/2またはy=1/2、つまりACと2直線が交点を持たない場合についてはあとで考えるものとする。)SとTが一致しなければPXとQYは交点を持たないと言えるのではないだろうか。
そこで平面OACについてまず考えてみる。

するとxの場合に応じてこのような4種類の図になるが、この形に馴染みを感じないだろうか?
そう、メネラウスの定理が使えるではないか。
メネラウスの定理を使えばAS:SCが求まり、Sの位置を比を用いて表せるから、SとTが一致する条件について比較的真っ直ぐ示すことができる。
また、Sの位置についても平行線の補助線を入れたことでACの中点をMとすると、
xが1以上の時には線分MC上、xが0未満の時には線分AM上にあることが分かり、あるSに対してxもただ1つの値を取ることが分かる。
(平面ABCについても同じことをして一致する条件を考えれば確かに一致する条件はx=yとなるのでまたやってみてほしい。)
また、平行に関してもx=y=1/2の時は3直線PX,AC,QYが全て平行関係にあることが中点連結定理(これまた懐かしい)から明らかであり、片一方のみが1/2であるときには1/2の値を取る方の直線はACとの交点を持たないから必ずねじれの位置になると言える。
このようにして幾何的に考えても解答へと持っていくことができる。
個人的にはこの幾何での解法が鮮やかに感じるから好みではあるのだが、いかんせん図の数が多すぎて25分で解ききるには向いていないだろう。
やはり、実戦的な解法としてはベクトルで素直に解くのが1番のようだ。

大問4へ続く。

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