東大理系数学2023を解く 大問6

2023年に実施された東京大学の入試問題のうち数学(理系)の問題について思考を交えながら解き進めていく。

大問6

分野は空間、中でも立体の体積についての問題で2023年の東大理系数学の中だとこの第6問は他の問題に比べて難しかったと個人的には思っている。なぜ難しいと思ったかというと、そもそもの立体のイメージが難しく、かといって回転体でもない以上断面積だけ図示して後はすべて式で処理するみたいなこともできないからである。だから、この問題に挑んだ人の中にはそもそもこの問題で扱われている図形を間違ってイメージしていた人もいると思われる。
と言っても、正しいイメージをするのに必要なのは数学にかける時間よりも地頭に近いところがあるのでそういう意味では本番想定の場合、この問題は取れなくてもいいのではないだろうか。実際、この年の大問別難易度は3<5<1<<2<4<<6(人によっては3と5,2と4は上下するだろう。)だと思っているので6は取れなくても十分受かりうるはずだ。

と言ってはいるが、ここは入試本番ではなくあくまでこの問題について細かく見ていく場所なのでこの問題の解く上でのポイントとかについて書いていく。

まず(1)だが、先ほど言った通りこの問題で最も難しいのは立体のイメージなのだが、とりあえず問題から得られる情報を元に図に描いてみる。(本来、体積の問題では図をできるだけ描かない方が得策ではあるが、非回転体や回転軸が分からない問題に関しては図を描いてヒントを得るしかない時がある。)

描いてはみたものの伝わりづらいかもしれない。

ここで次のような図形を考えた人がいるかもしれないが、それは図を描いて比べてみると間違っているところが分かる。

$${z<1}$$では$${|x| \leqq 1}$$,$${|x| \leqq 1}$$,$${|x| \leqq 1}$$の表す立方体、$${z \geqq 1}$$では半径$${\sqrt3}$$の球

すると、実はVというのは次のような立体を組み合わせたものだと分かりそれさえ気づければ容易に体積は求められる。

右の立方体は上に三角錐型の凹みがあります

どうしてそのようなことが言えるのかについてだが、Vのうち、立方体の外部の部分をWとし、上面以外の5面についても同じWを考える。するとどの2面のWも互いに共有しあうことがなく、6つのWと立方体を合わせたものが球となることがわかる。つまり、Wは球の体積の$${\frac{1}{6}}$$から立方体の体積の$${\frac{1}{6}}$$を引いたものだと言える。ものすごく簡略化して言えば、立方体と球が共に、$${xy}$$平面、$${yz}$$平面、$${zx}$$平面について対称性があるからなのだが、少し記述が難しい。(ちょっと曖昧で記述が難しいところではあるが、(1)では対称性を利用して簡単な図形に分割しその体積を求めるということが分かる解答であればおおよそ丸がつくのではないかと思っている。)

また、こういった曖昧なことをするよりも断面積を求めて積分した方がいいと思った人がいるかもしれないがこれはおそらく無理である。下に僕が散々足掻いた結果をまとめたものを載せておくが、積分しようと思ったらどこかのタイミングで必ず新たに角度の変数を導入しなければならない。それを解消して積分の形まで持っていくことはできるが、その積分が普通に受験生が制限時間の範囲内でできる範疇にない。
ということで(1)で積分を使うのは多分愚策だろう。
(ベクトルを使ってVに含まれる点の条件を揃えてからz軸に垂直に切断する考え方もあるが、これまた場合分けがあって簡単ではない。)

この部分の計算および論証については正確性は保証しない。積分では難しそうだということを感じ取ってほしい。

続いて(2)だが、こっちは積分が必要になる。なんと面倒なことかと思ってしまうが、とりあえずは立体のイメージから始めよう。
ここでのイメージだが、Oから長さ$${\sqrt3}$$の紐を伸ばすイメージがあると非常に分かりやすい。どうやったらそんな発想に至るのかと言われると経験則でしかない。しかし、(1)と似ている上で、(2)ではNという新たな点が登場していて、このNの役割が「Nで折れ曲がっていいようにする」ことにあることが分かっていれば紐をイメージするのはそこまで難しすぎることでもないとは思われる。

すると(1)と何が違うのかだが、(1)に次の部分が付け足されていることがわかる。

やっぱり図が下手くそ…

ということは、その付け足されている部分の体積を積分で求めればよいことがわかる。(ここで全体をまるっと積分するのは(1)で無理だったこと、もしくは(1)の誘導があることを踏まえてあまり良くないと勘づいてほしい。)また、付け足されている部分は立方体の対称性から同じ立体が4面に足されていると見て、そのうち1つに注目する。

そこで$${x=t}$$での断面図を描くと次のようになるから、断面積も求まり、積分も面倒ながらできる。($${t}$$は$${0 \leqq t \leqq 1}$$を満たす。)

ということでこれより(2)で求める体積は(1)で出た答えと合わせて
$${(\frac{2\sqrt3}{3}+8)\pi+\frac{20}{3}-9\sqrt2\alpha\pi}$$
となって答えが出る。

この大問6は解答を見てしまえば、なんてことないと思ってしまうが、空間図形で体積と来れば積分に走ろうとしたり、そもそも図形のイメージを間違える可能性が存分にあると思われる。(1)が解けていても(2)も普通に難しいぐらいの数Ⅲの積分の問題だと思われる。


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