東大理系数学2023を解く 大問3

2023年に実施された東京大学の入試問題のうち数学(理系)の問題について思考を交えながら解き進めていく。

円と放物線が絡む問題でどちらかというとそこまで難しくない。個人的に言えばこの2023年の6問の中では大問全体としての難易度は1番低いと見ている。実際大問6以外はどれもこれも同じくらいの難易度だとは思っているのだが、あえて微妙な差まで考慮するならこの大問3が1番簡単なのではないかと思っている。
ではやっていこう。

(1)からだが、流石に(1)は合わせたい。領域絡みの問題で一般的な受験生のレベルからしたら簡単とは言えないが、東大レベルの受験生ならこの程度の問題は詰まらずに解く力が絶対に欲しい。
ここでは解答例として2つ挙げておく。
まずは円のパラメータ表示を利用する方法がある。(ここでは(2)で$${\theta}$$を使いたいのであえて$${\phi}$$を使う。)

円が出てきた時には$${x^2+y^2=r^2}$$ばかりで考えるよりも$${\sin{\phi}}$$,$${\cos{\phi}}$$を使った方が変数が1つ減る上に三角関数の公式も利用できるのでぜひとも使いたい。

次に円そのものに注目することによっても解答を書ける。というのも、円周上の点の集合とは「中心からの距離が等しいものの集合」であるから、これを使うと次のようになる。

この解き方でも答えには辿り着けるが、グラフを使った図形的な考察が絡むので直線、円、放物線ぐらいの簡単なグラフの時ぐらいに抑えておいた方がいい。

続いて(2)だが、まず大きく方針として$${L}$$の長さを関数ににしたい。というのも、Pが動くことで$${L}$$の値も連続的に変化するだろうから、$${L}$$を関数にして増減を調べて同じ値を取るかどうかを調べたい。
そこで何を変数に置くかなのだが、候補は2つある。1つはPの$${x}$$座標、もう1つは(1)みたくPと円の中心のなす角である。
置くべきは後者なのだが、理由はいくつかあって、第一に(2)で設定されているPの範囲を次のように$${\theta}$$と置くことで簡単に範囲を$${\theta}$$を使って表現できる。


次に、接線も簡単に書ける。というのも、考えたら分かるが、先ほどのように$${\theta}$$を置いていれば接線の傾きは$${\tan{\theta}}$$になるから、これと$${P(\sin{\theta},a-\cos{\theta})}$$を通ることを合わせれば、接線は$${y=\tan{\theta}x-\sin{\theta}\tan{\theta}+a-\cos{\theta}}$$と表される。

次にLを$${\theta}$$で表しにかかるために、接線と$${y=x^2}$$との2つの交点に注目するが、ここで座標を求めることはしないというのは分かっている人の方が多いことだろう。というのも2式を連立させれば解が出てくるが、解を出してから処理するのではなく、解と係数の関係を利用して座標を求めずに処理するというのは、頻出の解法だからである。
故に、解と係数の関係を用いて$${L}$$を求めると次のようになる。


ここでのポイントは2つ
まず1つは$${\tan{\theta}\sin{\theta}+\cos{\theta}=\frac{1}{\cos{\theta}}}$$の変形だが、これは見慣れておいてほしい。高校物理では時々出てくることがある変形だが、おそらく見たことない人もいるだろう。
もう1つは$${L}$$を求めると言っておきながら、$${L^2}$$を求めているところだが、$${L>0}$$より$${L^2}$$について調べても良いのと、そもそも$${L^2}$$が複雑なのでこれに√をつけたくないという理由からここで止めている。

あとはL^2をしらの増減表を調べていくのだが、理系で数3Ⅲを学んでいる以上このままでも微分して増減を調べられるのだが、ミスを減らすためにここでは$${\frac{1}{\cos{\theta}}=t}$$とした方がいい。その上で関数の増減を調べる。


すると答えは出たのだが、注意が1つだけ。
写真では説明の都合上、大まかにグラフを描いているが、このグラフは正確性に少し欠けるので解答には描かないほうがいい。(正確に描くには極値を求める必要があるが、計算が重たすぎるのでやりたい人はいないだろう。)グラフがなくても今回は関数が単調増加/減少じゃない場合、つまり1よりも大きい$${t}$$で極値を持つ場合には$${L_P=L_Q}$$となる$${P,Q}$$が存在することが示せるのでグラフを描く必要はない。

この問題は数Ⅱの微分や領域の分野の基本を忠実にこなす能力が求められるため、そこまでハードルの高い問題ではない。ぜひとも正解したい問題になるだろう。

大問4へ続く。

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