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【014】専門業務の変遷

4月もあっという間に中旬ですね。今週は若手会計士の方々と飲んでました。個人的には最近あまりお会いすることのない会計士試験合格後2~6年目の方々との一席でした。※以下では個人の特定を避けるべく、その方々のプロファイルを多少変えています。

◆それぞれの課題

印象的だったのは、その席での最年少の方(大手監査法人所属)のコメントとして「自分は凝り性なので、割り当てられた時間に関係なく、必要以上のクオリティの監査調書を作ってしまう」ということ。若者のメンタリティとしては良いですね、非常に好感です。

確かに、車輪の再発明って意味ないですし、次に入ってくる方が最初から頭だけを使えるようにする工夫は組織的に重要です。

何より良いと思ったのは、一つのことをとことん磨き上げる姿勢で、これは職人の生き方としては重要だと思っています。

他方で、次に若い方はすでに監査業務は離れており、コンサルティング業務など、私の仕事に近い業務をされていました。その方は「言語化して、専門的な知見を広く普及させるのが好き」なんだとか。他方、ネタとなるプロダクトにはこだわりがないので、興味を持てる業務の探索が難しいとも。人の悩みはそれぞれですね。

こんな話を聞きながら、改めて、専門家として生きていくうえで自分の業務がどのフェーズにいるのかを理解するのは結構重要だ思いました。

◆時間軸でみたときの専門技能の変遷

J-SOX構築支援、IFRS導入支援、M&Aアドバイザリーなど、提供するサービス内容は違えど、それらのサービスが普及されていく変遷は全て同じだと思っています。

-世の中に広く流布されるまでの流れ

個人的にはこんな感じのステップで広く世の中に普及するのではないかと思っています。

  1. 自分でやる:自分自身が特定領域の専門家になって対応する

  2. チームでやる:仲間を作って、少数精鋭で1チームとして業務提供する

  3. 専門部隊でやる:複数のチームを作って業務提供する

  4. ファームでやる:会社として組織的に業務提供する

  5. ファームでやらない:会社として専門サービスとしての業務提供をやめる(代わりにファームのナレッジをつかって、勝手にやってもらう)

最初に作るのがカルピスの原液みたいなものですね。最初の濃い原液は、少量でも1杯分の働きをしてくれます。最初は自分自身が役務提供をし始めますが、(筋が良ければ)あとは他の人が勝手にその業務を拡散していくという。
他方で、会計士が主戦場とする業務は、ほとんどのケースで法規制による影響を受ける場合が多く、自分自身が特定領域をそもそも創造することがないですね。ただ…

-この流れにどう乗っかるか

逆にいえば、何かしらの規制が出来た際には、勝手に2.以降のステップが始まります。近年だとESGアドバイザリー業務などがまさにその典型で、Big4はこぞって専門部隊を立ち上げました。

他方で個人としてはどうするべきでしょうか。新しい領域が出てきたときに自分が乗っかるか否か、この意思決定は極めて重要だと思います。

◆流れに乗っかるか否かを考えるポイント

-これから創造される新規領域であれば、市場規模、市場の成長速度、想定されるプレイヤー

新規領域についてまず考えるべきは市場であり、想定される同業他社の検討です。どれぐらいのニーズがあるのか、その市場はどういう成長ドライバーで拡がっていくのか、参入が想定されるプレイヤーは何か、この辺りを見定める必要があります。

例えば、IFRS導入支援。これは国内においては、日本の上場企業数が上限値になるし、いま200社を超えていますが、これが1年で500社になる(成長率になる)ことはないかと思います。

https://www.jpx.co.jp/equities/improvements/ifrs/tvdivq00000056g7-att/20220722.pdf

-実務的には、既にある市場への参入の可否

務的には既にある市場に自分が乗っかるか否かですよね。自分がキャリアチェンジを考えたときに、たまたま魅力的な市場がいきなり創造されることなんてあり得ないので。

特にヤバいケースが自分自身が上記でいう4.のステップだと思って転職したけれども、既に5.のステップになっていたケース。外から見たときと、中で感じる実際の趨勢は往々にして異なるものです。
例えば、上記にも記載したESGアドバイザリーは果たして外から見るほど活況だったのか、こういう問に対する答えはだいたい数年後に出ますが、個人の意思決定として見誤らないためには、やはり情報収集大事ですね。

監査調書というプロダクトへの拘りを持つことも、自身の専門的な知見を広く普及させることも非常に素晴らしいと思います。ただ、客観的に見て、自分がいま提供しているサービスは既に飽和状態であり斜陽産業となりつつあるのか、これから二桁以上の成長を遂げる未知の領域なのか、(自分への戒めを込めて)その見極めは定期的に必要だと思いました。

今週は以上です。ありがとうございました。

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