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弁理士の特許にならない、はあてにならない話。

とあるベンチャー企業さんから、特許出願のご依頼をいただいたときのお話です。このベンチャー企業の事業責任者の方が、うちの事務所のHPをみていただいたようで、ご興味をもっていただき、ご連絡をいただきました。ここでは、Aさん、としましょう。ご相談の内容は、Aさん、自らが企画された新規事業についてです。

当日、ヒアリングをし、明細書作成に取り掛かり、無事、出願をしました。早期に権利化をしたいとのお話だったので、早期審査の申請も行いました。特許庁にて審査が行われ、数か月後、特許庁から拒絶理由の通知が届きました。

出願当初、このポイントであれば、厳しいけれども何とか特許が認められる可能性はあるだろう、と私自身が考えていた独立請求項についても、進歩性がないと、審査官は判断していました。

進歩性というのは、特許が認められるための要件の1つです。その分野の専門家が容易に思いつく発明は、進歩性がないとして、特許は認められません。

対応方針を検討したうえで、Aさんに連絡をします。すると、「社長同席のもと打ち合わせをしたい」とのご連絡があり、打ち合わせを行うこととなりました。

打ち合わせの結果、Aさんは驚くべきことを語ります。「当初の独立請求項と違う内容で権利化をしたい。それも、より権利範囲が広い内容で。」とのこと。

私の心の中は、「えっ?、まじで? 出願のときに話していたことと、全然違うやん。今の独立請求項でも、かなり厳しいのに。。。簡単に言うけど、どんだけ無理筋か、わかってるの?」

おそらく、経験のある多くの弁理士の方にも、この時の私の「相当に厳しい」という判断には、ご同意いただけるかと思います。

以前の記事にも書きましたが、私は、拒絶理由通知への対応を得意にしており、これまでも、「通常は、特許にするのは難しいかな」という出願も、特許にしてきたという自負があります。

が、しかし!!!
こんなの特許になるわけないやん!

というのが、私の本音でした。

相当に厳しいこと、可能性は低いこと、を伝えましたが、Aさんは、頑として折れません。

Aさん「この事業を成功させるには、この内容で特許を取得することが必要です」

おそらく、新規事業を進めていくにあたって、Aさんの中でも考えの変化があったのだと思います。

こうなると、考えを切り替えて、全力をだすのが弁理士の仕事です。お客さんと意見が異なっても、お客さんに大きなデメリットがない限り、お客さんの要望に沿った対応をする。そして、お客さんの要望に沿った対応をする際には、全力をだす、と決めています。

そうして、もう一度、検討をしなおし、意見書を書きあげました。もちろん、私自身がもってるノウハウをすべてつぎ込みました。

結果ですが、もうわかりますよね。

あっさりと、特許査定がでました。
いや~ 思いましたよ。「俺、すげー!!」って。

でもね、ほんとにすごいのは、Aさんです。

Aさんが、どうしてもこの内容で特許にしてほしい、と一歩も引かなかったから。そうでないと、普通に無理だと、あきらめていました。

というわけで、弁理士の「特許にならない」は、あてになりません。

この経験から、新規性さえあれば、そして、その発明について特許を取得することが事業の優位性につながるのであれば、進歩性がきびしそうでもチャレンジをするべき、と考えています。

進歩性がなさそうだから特許出願をしないとか、進歩性の拒絶理由をクリアーするのが厳しそうだから、権利が取れそうな請求項に補正をするとかは、もったいなさすぎます。

それが、どんなに進歩性がなさそうでも。かならず活路があると信じて考え抜くことが大切です。そうすると、ほんとに、特許になりますから。



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