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お坊さんが感じた音声配信の魅力【お寺ジオさんインタビュー】

Radiotalkで活躍する音声配信者「ラジオトーカー」を紹介していく連載インタビュー企画。今回は、番組『midnight temple radio』を配信する仁部前誠(にべ・ぜんじょう)さん仁部前叶(にべ・ぜんきょう)さんにフォーカスします。

埼玉県北葛飾郡杉戸町のお寺「妙見山 上原寺(みょうけんざん じょうげんじ)」 の副住職兄弟という肩書きを持つお二人は、ユニット 「お寺ジオ」として番組を制作しています。

プロフ写真

仏教に関して兄弟で語り合うコンテンツは人気を集め、2020年の年末にはRadiotalk上で「オンライン初詣」といったイベントも開催! コンセプトは「耳からご縁を結ぶ寺」、仏教の世界観が堪能できる番組の魅力を聞きました。

(取材・文/ヨシムラヒロム

僧侶と音声配信は相性が良い

──ご兄弟で音声配信を始めようと思ったキッカケは?

前誠(兄):第一回目の緊急事態宣言になったときですね。お寺に人を呼んで何かをする、そういったことがなかなか出来ない状況じゃないですか。そういった中で余裕ある時間も生まれたので、始めることにしました。明確な日付を言えば、令和2年5月23日のことですね。

ただ私にはずっと何かをやりたい! といった気持ちもあって。積み重ねのお話ができる場所を作った方がいいとは常々思っていました。そして気づいたのが、僧侶と音声配信の相性の良さです。日頃、人前でお話をしたり、お経も音楽的要素があったりするので。

前叶(弟):音声配信は兄から誘われたんですが、以前から僧侶として顔と名前を出し情報発信はしていたんですよ。SNSで活動する事はもともと好きだったので、「ラジオ」って聞いた時も何の抵抗もなく参加できました。

──動画ではなく音声配信というカタチを選んだ理由は?

前誠(兄):「どうせやるなら長く続けていきたいな」といった気持ちが強かったんです。動画編集は結構な負担と聞いていたので、私の性格的に動画だとあまり長く続けられないな…… と。

前叶(弟):兄だけじゃなくて、兄弟の性格的にですね。
お互いに動画編集を押し付け合う、なんてことが安易に予想できた(笑)

前誠(兄):実際にやってみて気づいたことですが、音声だけだとムダなリスクを回避できるんです。お寺は秘匿性の高い情報を取り扱うことが少なくない。身近なところで言えば、お塔婆に書かれたお戒名。プライベートな情報なので、「本堂で撮影しました!」といった動画にチラっとでも映ったりすると良くないなと。

前叶(弟):収録に多くの時間を割けないのも理由のひとつです。仮に動画で配信すれば、衣を着たりとしっかり身支度をしなければならない。常にどんな状況でも100点を取れるのは「声だけだな!」と、兄弟で結論を出しました。そして色んな音声配信アプリを試して、「Radiotalkがいいんじゃないか」と選んだんです。

前誠(兄):「色んなのを試して」と弟が言いましたが、実は私が最初にインストールした音声配信アプリがRadiotalkなんですよ。

当初、兄弟間で「ラジオってのはライブ配信だよな!」と思い込んでいたところもありまして。ただその時、まだRadiotalkにはライブ配信機能がなかったんですよ!結果、色々なアプリを試すことになったのですが、結局はRadiotalkに戻ってきたという。

──戻ってきてくださり、ありがとうございます。

前誠(兄):「Radiotalkの運営さんの考え方に共感した」というのは、戻ってきた理由のひとつですね。ちゃんと段階を踏んで、丁寧にRadiotalkというアプリを育てていることに温かみを感じました。

運営さんから、「収録を繰り返しやったトーカーは、トーク力がアップする」という話も聞きました。実際にライブ配信をはじめる際、しっかりと収録配信で場数を踏んでいたトーカーは、生でも対応できると思います。

「ゲストを招待」機能で、別々の場所の兄弟を結び収録

──僧侶のお二人がどのように収録しているのかも気になります。

収録風景1

前誠(兄):基本的に私の方から「今日やる?」とボールを投げて、弟の都合が合えば収録します。何曜日に収録、週に何回配信とか全然決めてないですね。完全不定期でやってます。

唯一決まっているのが、私個人でやっている30分の配信『サタデーお寺ジオ』。毎週土曜日の夜11時に配信しています。最初の10分間は生のお経をお届けして、残り20分間はリスナーとお話をする。実際にお寺に足を運んだような空気感を味わっていただけます。

前叶(弟):お坊さんのお勤めって、日中が多いんですよね。おのずと収録は夜になることが多いですね。法務に支障がないカタチでやっています。支障がでるようになっちゃうと、もう続けられないなと思ってるので。肩肘張らず、気軽にやることを心がけています。

だから、収録環境もスマホにマイクを繋げるだけとラフな感じなんですよ。兄が「ゲストを招待」機能を使って、僕と話すだけ(笑)

前誠(兄):僕はお酒を飲みながらなど、リラックスして収録することもあります。シラフだと兄弟で信仰の話をするのが少し恥ずかしかったりも(笑)けれどお酒が入れば、「弟ってこんなこと考えてたんだ……」と素直に受け止めることもできたり。

──Radiotalkだからこそ、兄弟で仏教について話そう! となるわけですね。

前誠(兄):今ではコミュニケーションの一環ですね。これも実際にやってみて分かったことなのですが、自分が喋ることによって思考が整理されるというか……。メタ認知なんですよ(笑)

前叶(弟):配信されている8割5分、Radiotalkがなかったら兄にしなかった話ですね。収録を重ねていくほどに、兄弟というより僧侶同士で対話をしているといった感覚になってきました。

同業者が「パクりたくなる」内容を

──仏教の伝え方で気をつけている点などありますか?

前誠(兄):お釈迦様は、受け手に合う表現や言葉を使った「対機説法」をされていました。全ての人に同じ言葉やテンションでお伝えするのではなく、受け手の段階に合わせて教えを説かれていたんです。

『midnight temple radio』を、誰でも聴けるコンテンツに育てていきたいんです。だらか伝わりづらい言葉を現在風にアレンジしたり、風通しの良い内容にすることを心がけてますね。

実は業界内聴取率が結構高いんです。だからプロのお坊さんが聴いても「あっ、これ面白いな」と感じてもらえるポイントは抑えています。プロ、リスナー共に楽しめるバランスがベストですね。

前叶(弟):同業者が聞いて、バカにされないコンテンツにはしたいですね。言い方はちょっとキツいですが、プロがパクりたくなる内容を話していきたい。真似したくなるクオリティであれば一般の方も、「すごく深い、プロのお坊さんが話しているな」と魅力に気づいてくれるはず。

Radiotalkで配信できる時間はマックス12分、その中に「一般向けの言葉」と「プロ向けの言葉」の両方を織り交ぜることを意識しています。

前誠(兄):そうだね。内側の人から認めてもらわないと、外側の人にも波及しないよね。外側だけ意識して噛み砕いても、やっぱり内側から炎をじわじわ広めていかないと最終的には広まらないのかなっていうのはあるので。

「教え」というより「世界観」を伝えたい

──「お坊さんのクリスマス」「死後の世界」「陰陽師」と様々なことを話されているお二人ですが、トークテーマはどのように決めているのですか?

前誠(兄):お題は僕の方から投げて、弟が「それいいね!」となればテーマ決定です。僕は本当に「火付け役」、弟のトークが走り出したらリスナーと変わらない(笑)

前叶(弟):私達がただテーマに沿った話をするだけでは意味がない。だから「テーマと仏教の結びつき」とか「日常生活と仏教の関わり」そして「リスナーさんに共感してもらう部分」は考慮していますね。

兄弟だけで盛り上がっても仕方がないので、落とし所だけはざっくりと決めています。あとは出たとこ勝負! 頭の中で出たワードを雪崩のようにダーッと喋っちゃうって感じです。

前誠(兄):「仏教の教え」というよりは「仏教の世界観」を伝えたい。「かたちないもの」や「めにみえないもの」を大切にするお寺や僧侶の「世界観」を話したいんです。それこそ布教って言うと、「相手を説き伏せる」といったイメージもあるじゃないですか。

前叶(弟):リスナーさんが僕らの世界観に踏み込んできてくれるのが、ありがたいです。それこそ、実際にお寺で待っていても突然の来訪者が来るってこともない。『midnight temple radio』に、リスナーさんが「もっと聞きたい」と集ってくれることが嬉しいことですよね。

番組内でもよく話しているのですが、僕らの番組は本当にリスナーさんあってのもの。誰も聞いていなかったら兄弟で談笑しているだけなので(笑)
我々は聴いてくれる人を「お檀家さん」と呼んでいますが、その中にはラジオを支えてくれてるといった親しみも込められているんです。

前誠(兄):『midnight temple radio』がリスナーさんにとって、サードプレイスになってくれたら嬉しいですね。

それこそ、「お寺ジオ」がリスナーさんや配信疲れしたトーカーさんの駆け込み寺になって欲しい。Radiotalkの社長さんから相談が届いても、しっかりと答えさせていただきます(笑)

──リスナーとの交流でいうと、昨年末には「オンライン初詣」といったイベントも開催されました。

前誠(兄):Radiotalkの本社でやらせていただたきました。私達の大晦日って除夜の鐘と同時に108杯、煩悩の数を水行するんです。普段はこのように新年を迎えるわけですが、昨年は住職に許可をもらい、2人で車に乗って都内にあるRadiotalkの本社に行くという……。

前叶(弟):オンラインでリスナーさんにお経を届けたり、おみくじを引いてもらったり、あれは大変いい思い出になりました。実際にやってみて、こんなに世間に受け入れられるんだっていうのが少しビックリしましたね。Radiotalkでイベントをやってみて、「お寺ジオ」が電波に乗っけてももっとできることがあるんだな、と気付かされたというか。

──Radiotalkは、お二人にとってどういった場所ですか?

前叶(弟):私はハッキリしていて腕試しですね、腕試しの場所。結果はもう二の次ですね。

前誠(兄):どういう場所だろう……、難しい質問です。縁の力を感じられる場所でしょうかね。

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