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豪快と気づかいの音声配信術【〆¨芥川..AKUTAGAWAさんインタビュー】

Radiotalkで活躍する音声配信者「ラジオトーカー」を紹介していく連載インタビュー企画。今回は、番組『少し元気が出るラジオ』を配信する〆¨芥川..AKUTAGAWAさんにフォーカスを当てます。

〆¨芥川..AKUTAGAWAさんは、埼玉県在住の23歳。2021年3月にRadiotalkで自身の番組を立ち上げ、現在はライブ配信を主戦場に長尺トークをアップし続けています。

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軽妙な語りと痛快な笑い声を持ち味とする〆¨芥川..AKUTAGAWAさんは、Radiotalkデビュー直後の2021年夏、ニッポン放送『NEXT-RAD 超発掘!尖ったキッズたち』のアシスタントオーディション2次選考に進出。さらにRadiotalk内でも有名トーカーとのコラボ配信を繰り返し行うなど、大きな存在感を発揮していますが、実は元々、別の音声配信アプリの配信者として活躍していました。

1年半続けた人気番組を閉じ、半年の充電期間を経てRadiotalkでのリスタートを切った真意とは。BGMやジングルも完全オリジナルで、機材やエフェクトまでこだわり抜く彼が目指す場所、その動力源となる人間力について深堀りしました。

(取材/文:鼻毛の森

2時間のライブ配信を週5で

──「〆¨芥川..AKUTAGAWA」という名前が特徴的ですが、その由来は?

〆¨芥川..AKUTAGAWA:この名前は、Radiotalkの前に利用していた別アプリの配信でも使っていたものなんですが、実は途中で変更しています。もともと本名ベースの名前でしたが、熱心すぎるファンの方もいて、ちょっと身の危険を感じたと言いますか。

で、まったく関係のない名前にしようと当時の配信仲間に相談したところ、「芥川」か「羅生門」と即答されて(苦笑)「今読んでる本がバレバレじゃねえか!」とも思ったんですが、せっかくだし、と、消去法で「芥川」を選びました。「どーも、羅生門です」と挨拶する自分の姿だけは想像できなかったので……(笑)

──現在は社会人の傍ら活動されていると伺いました。

〆¨芥川..AKUTAGAWA:お金に関わる職業に就いて5年、埼玉の会社に勤務しています。出身は鹿児島なんですが、高校を卒業してからはずっと埼玉です。アパートがたまたま防音壁だったこともあって、夜8時過ぎに帰って来てから準備して、9時半ごろから、週5回ペースでライブ配信するという生活を送っています。

──2時間のライブ配信を週5回とは、かなりのハイペースですね!

〆¨芥川..AKUTAGAWA:その代わり、収録は現時点で12本と少ないんですよ。前のアプリの頃から短い話が苦手で。30分と長めのライブ配信をベースにしながら、制限時間をさらに延長(※)して、毎回1時間半から2時間は喋ってます。それが終わってから、プライベートの時間ですね。
(※Radiotalkでは、リスナーからの「延長チケット」1枚ごとに配信時間を30分延長できる)

──音声配信自体を始めたのは、かなり前だと伺いました。

〆¨芥川..AKUTAGAWA:音声配信そのものを最初に始めたのは、2019年の2月ですね。最初の配信は1年半続けていたんですが、一旦辞めて。さらに半年たってから、Radiotalkで番組そのものを復活させたというのが、僕の配信歴です。

そもそも配信をはじめたのは、僕自身が小さい頃からラジオを聞いていたからで。好きなバンドの意外な一面が見える夜のラジオが面白かったので、「自分でやるのも楽しいに違いない」という、シンプルな衝動からでした。

──数ある音声配信アプリの中で、なぜRadiotalkを?

〆¨芥川..AKUTAGAWA:Radiotalkとニッポン放送とのコラボ企画だったNEXT-RAD アシスタントオーディション』がきっかけでした。

自分の好きなアーティストも喋っていたラジオ局の番組にアシスタントで出られるかもしれない、このチャンスは逃す手はない、とRadiotalkのアプリをインストールして、オーディションに参加しました。以来、いまはRadiotalk一筋ですね。

「少し元気が出る」タイトルに込めた思い

──強いキャラクターとは対象的に、番組タイトルは「少し元気が出るラジオ」と控えめなのが印象的です。

〆¨芥川..AKUTAGAWA:人って、365日元気ではいられないじゃないですか。僕は面白半分でしゃべっていても、聴いている人は元気じゃないかもしれないですし。

ただ、「芥川さんの話を聞いて元気になった」とコメントを貰えることはあって。その積み重ねの中で「しゃべるだけで誰かを少しでも元気づけられるなら」との思いが深まったことで、自然にコンセプトも固まり、このタイトルに着地しました。

笑いたいときだけじゃなく、泣きたいときや悔しいときに寄り添う番組にしたいなと。リスナーさんに元気になってもらえたら、僕もその元気を分けてもらえるので。

──自由度の高い展開が印象的ですが、参考にしている番組はありますか?

〆¨芥川..AKUTAGAWA:基本的には自分が楽しくないと意味がないので、「これっぽい感じ」とかは定めないようにはしています。

とはいえ、元々ラジオファンなので、自然と身についている要素はあるかもしれませんね。とくに「マイナスなことを言うしゃべり手は嫌だ」という思いが強いので、無意識に反面教師としているパーソナリティや番組が、もしかしたらあるのかもしれません(笑)

20万円の高級マイクで収録「音に妥協したくない」

──現在の収録環境を教えて下さい。

〆¨芥川..AKUTAGAWA:防音壁を張った自宅の部屋で、外部マイクを使って収録しています。

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ただ、防音壁のはずなんですけど、離れた部屋に住む同僚いわく「笑い声が筒抜けだ」と。同時期に両隣の部屋の住人が退去したときは「まさか」とは思いましたが、たぶん違う理由だろうと思うようにしています。

マイクはもともと3万円ほどのコンデンサーマイクを持っていて、オーディオインターフェース経由でiPhoneにつないでいたんですが、最近ノイマン社製の高級機に新調しました。ライブ配信でもお披露目して、「以前より格段に音がよくなった」と好評を得ています。さすが20万円するだけのことはあるなと。

──20万円のマイク?!

〆¨芥川..AKUTAGAWA:聴く側の心地よさを考えれば、音には妥協したくないですから。どんなに番組が面白くても、ノイズがあるとそこに気を取られるだろうなと。せっかく聴いてくれるリスナーさんにはゆっくり長居してほしいので。次は、オーディオインターフェースやミキサーも新調したいですね。

──番組のBGMやジングルにも非常に凝っていますよね。

〆¨芥川..AKUTAGAWA:オリジナリティの出し所ですからね。番組中に使用するBGMやジングルは全てオリジナル音源です。音楽作成ソフトを使って自分で作ったり、友人に作ってもらったり。

──もともと音楽経験が?

〆¨芥川..AKUTAGAWA:いえ、音楽経験はありません。「番組のため」と突き詰めていたら、作れるようになっていました。

──やはり根底には「ラジオ番組ぽさ」というのがあるのでしょうか。

〆¨芥川..AKUTAGAWA:Radiotalkはトークを楽しむアプリだという性質は理解していて。僕もトークだけで評価されたい気持ちもあるのですが、リスナーさんに番組をパッケージごと楽しんでもらいたいという制作目線もありまして。

といいつつ、僕には陰キャの性質もあるので、自分語りだけの物足りなさをサウンドエフェクトでカバーしようとしているのかもしれませんね(笑)

収録配信とライブ配信”使い分け”の基準

──番組の企画はどのように考えていますか?

〆¨芥川..AKUTAGAWA:ライブ配信のときは、1時間前くらいに箇条書きのメモを作っています。2時間喋ることを想定するなら、ネタの大筋を5つ6つ。それを膨らませながら、アドリブで展開するのが基本ですね。

とにかく本番に時間を割くので、収録も基本編集なしの一発録りです。これも、これまで配信しながら身に着けたもので、完全に自己流ですね。

──番組に臨む上で、大切にしていることはありますか?

〆¨芥川..AKUTAGAWA:「自分の元気がないときはやらない」ということですね。

とくにカラ元気って、声だけでバレてしまうみたいで。初めて聴いたというリスナーさんに「元気ないですね」と言われたこともありまして。「少しだけ元気が出る」と言っておきながら気を遣われたら意味がないですし、申し訳ないじゃないですか。

あ、あと、人を中傷しないようにしています。これは絶対です。

──収録配信とライブ配信は、どう使い分けていますか?

〆¨芥川..AKUTAGAWA:用意したネタによって使い分けていますね。「このメッセージを確実に伝えたい」と決まっている場合は、”濃くて短い”(※)収録配信を選びます。逆にライブ配信では濃い話をしないようにしています。それも聞きに来る人が求めるものとは違うと思うので。
(※Radiotalkの収録「トーク」は、1回あたり最大12分まで収録が可能)

「他人に優しい」リスナーが集まってくれる

──トーカー同士のコラボ配信で意識していることはありますか?

〆¨芥川..AKUTAGAWA:とにかく相手に話してもらうこと、相手が話したい話を察知して引き出すことですね。そのために、相手が話しやすい接し方を心掛けていますこれまでトリオの番組もやっていたので、自分が一歩引いたり、場を回す技術は身につけることができていると思います。

あとは、配信が終わるたびに聴き直して、反省する習慣ですね。 実は自分の声が苦手なんですが、その日の反省はその日のうちに、と言い聞かせながら、今も聴き直しは継続しています。

──豪快なキャラクターとは対照的な謙虚さですね。

〆¨芥川..AKUTAGAWA:豪快に笑ってしまうのは昔からのクセなんです。突然自分の中でツボに入ってしまうと、つい……。もっとも、それがリスナーさんにとっては”事故”と受け取られることもあるので、「違ったな」と思えたときはしっかり反省するようにしています。

──リスナーにとっては、そのギャップがたまらなかったり……?

〆¨芥川..AKUTAGAWA:そもそも僕は「察する」タイプなようで。実家の家族や身の回りに無理をする人が多かったからだと思うのですが、「人は無理をする」という先入観が沁みついていて。誰にでも気を使いすぎてしまうんですよね。

ただ、その本性が漏れているのか、僕の配信に集まってくれるリスナーさんは、他のリスナーさんにもとにかく優しい人ばかりなんですよ。なので、僕の番組の魅力は豪快な面白さというより「気づかい」の部分なのかなと思ったりもしています。

トーカーもリスナーも「じっくり話を楽しんでいる」Radiotalk

──音声配信サービスの利用経験が豊富な〆¨芥川..AKUTAGAWAさんから見て、Radiotalkと他サービスの違いはどんなところにあると感じますか?

〆¨芥川..AKUTAGAWA:やっぱりRadiotalkは、トーク内容をじっくり聞いてくれるリスナーさんが多い印象ですね。「ちゃんと聞かれている」ことを理解しているからか、トーカーさんの実力も格段に高いと思います。

いろいろな配信アプリを試しましたが、Radiotalkのトーカーさんはみんな、リスナーさんを意識して話しかけているなと。じっくり聞いてくれるリスナーさんばかりだと、自然とコメントも控えめになってしまうんですが、だからこそ見えないリアクションを感じ取ってやらないといけません。そんな状況は、自然と成長の糧になりますね。

──〆¨芥川..AKUTAGAWAさんにとって、リスナーはどんな存在ですか?

〆¨芥川..AKUTAGAWA:僕から元気を送っているように見せかけて、実は元気をくれている人たちだと思います。

自分の話に耳を傾けてくれて、しかも大事な時間を割いてくれている。これってすごいことで、かけがえのない繋がりなんだなと感じています。

──〆¨芥川..AKUTAGAWAさんにとって、Radiotalkとはどんな場所ですか?

〆¨芥川..AKUTAGAWA:元気をくれるリスナーさんと、刺激をくれるトーカーさんがいる、大切な場所ですね。

心地よいことはもちろんですが、とにかく日々勉強、勉強なので、頭の痛くなる場所でもあります(笑)。ただそれは成長痛みたいなもので、その先には「気持ちいい」結果があることも理解していますので、まとめると”イタ気持ちいい場所”ってところですかね。

──これから取り組んでみたいと思うことはありますか?

〆¨芥川..AKUTAGAWA:聞きたいと思われる話し方や、進行スキルを高めて、ゆくゆくは地上波ラジオでの番組を任されたいですね。できれば、『少し元気が出るラジオ』のパッケージごと進出したいです。

まだまだいまは「なにかが足りないな」「まだまだ吸収するべきものが残っているな」と感じているところですが、ヒントを親身になって教えてくれる先輩トーカーさんや業界関係者の方ともRadiotalkを通じて繋がることができたので、もっと交流を深めて広げていくことが目の前の目標です。