R. Shimada

生活保護世帯から東大に進学し、数学者になりました。このアカウントでは自分の経験を共有し、次の世代を励ますことと既存の社会制度の問題点を指摘することを目的とします。

R. Shimada

生活保護世帯から東大に進学し、数学者になりました。このアカウントでは自分の経験を共有し、次の世代を励ますことと既存の社会制度の問題点を指摘することを目的とします。

最近の記事

中学時代の記憶#1:学級崩壊

上の記事で私の通っていた中学校には素行の悪い生徒もいたということに触れました。 ここではもう少し具体的にどのような状況だったのか説明したいと思います。 「中だるみ」 中学校に入ってすぐの頃はまだみんな落ち着いていたと思います。 ただ二年生になってから担任の先生がしきりに「中だるみ」しないようにしなさいと言っていました。 そのときはあまり意味がわかりませんでしたが、実際二年生の途中から複数クラスでかなりひどい学級崩壊が始まりました。 元々授業中に席を立って教室中を歩き回る

    • 日常生活から感じるトポロジー

      幾何学は元々測量の必要上から生まれたものだとされていますが、現代ではそうした目的を超えて発展してきた多種多様な幾何学の理論があります。 その中で代表的なものがトポロジー(位相幾何学)です。 トポロジーの話をする前に、中学校で教わるユークリッド幾何学について簡単に思い出しておいた方が良いでしょう。 そこでは三角形たちに対して「合同」や「相似」といった関係を考えました。 ここで重要なのは三角形に対して、合同や相似といった複数の関係を考えることできるという点です。 つまり三角形

      • 数学は言語か?

        「数学は自然を記述する言語である」というような言説をよく耳にします。 これ自体間違いだとは言いませんが、数学の重要な側面に言及できていないように思います。 例えばあなたの4m先に高さ3m木が立っていて「あなたの足元と木のてっぺんとの距離は何mか?」と問うたとします。 確かにこの問題は数学の言葉で次のように述べることもできます。 「底辺の長さが4、高さが3の直角三角形の斜辺の長さは?」 ここまでなら数学の果たす役割は言語だと言えるでしょう。 ですが、数学が単なる言語に留ま

        • 私が子どもの貧困を解消するために数学者となった理由

          別の記事でも詳しく書いていますが、私は生活保護世帯の出身で、今日では「子どもの貧困」と呼ばれている問題の当事者でもありました。 それもあって早い段階から貧困に対する問題意識は人一倍強かったと思います。 一方で私の職業は数学者であり、貧困問題とは無縁の職だと言えます。 そもそも数学の研究をしたいというのは私自身の内から出た強い願望でした。 そして私が生活保護世帯から大学進学する難しさという問題に直面したのは研究者を志したからなのです。 私は世の中の不条理に憤り、なんとしても

          長洲事件から考える「生活保護と自立」

          上の記事で生活保護を受給し始めてからは「ただ生かされているだけだったようにも感じます」と書きました。 また⑧では「高卒で就職して家族を助けろ」と言われているような気がしたということも書きました。 今回はこのときのことを振り返りつつ、最近起きた生活保護廃止事件にも触れようと思います。 生活保護と自立 生活保護世帯の子どもが大学や専門学校へ進学するには世帯分離が必要です。 それにより子どもたちは家族か自分の将来かのどちらかを選ぶことを強いられます。 私は自分の将来を選びました

          長洲事件から考える「生活保護と自立」

          東京大学の授業料免除制度を具体的に批判する

          上の記事で学費値上げに「賛成」と書きました。 しかし記事の内容を読んでもらえれば分かる通り、あくまで「学費を払えない層に対する授業料減免制度が絶対のものであることを前提にした上」での「賛成」です。 この絶対の授業料免除制度は不可能であると考えている方もいると思います。 もしその方達の言う通りそれが不可能なのであれば、私は学費値上げに反対です。 最近東大で学費値上げの動きがあります。 授業料免除になる基準の世帯年収を引き上げることも同時に検討しているということですが、あくま

          東京大学の授業料免除制度を具体的に批判する

          なぜ東京大学には貧困層が少ないのか?

          東京大学本部ダイバーシティ推進課は「なぜ東京大学には女性が少ないのか?」という問いを学内に掲出していたそうです。 こういう特定の属性にのみ存在する社会的な外圧を可視化する取り組みはとても重要だと思います。 一方で東大本部の貧困に対する取り組みは不十分というか、何もしてないのではないかという印象です。 それにも関わらず授業料値上げを検討しているということですが、まずは貧困層への支援強化が先だろうと強く思います。 東京大学には学生相談所というのがあって、私自身も利用したことが

          なぜ東京大学には貧困層が少ないのか?

          『化け物の進化』

          今回は寺田寅彦の『化け物の進化』を紹介したいと思い、記事を書くことにしました。 私は高校の実力テストの設問としてこの随筆に出会いました。 (昔、京都大学の入試で出題されたことがあるそうです。) そのときは問題を解くのに必死でそれほど深く考える時間はありませんでしたが、その後科学の営みについて考える度に不思議とこの文章を思い出しました。 寺田寅彦は「天災は忘れた頃にやってくる」という言葉で有名な物理学者であり、随筆家でもありました。 その彼がしばしば相対するものとされる科学

          『化け物の進化』

          大学時代の記憶#2:駒場精神科

          上の記事で大学時代には相当時間アルバイトをする必要があったという話をしました。 実はその結果体調を崩してしまい東大保健センターの精神科に行ったことがあって、そのときの話を書きたいと思います。 この頃はフルタイムで働いているのではないかというくらいバイトをしていて、その結果精神的に追い詰められ身体が重くて動けなるといった鬱のような症状が出てしまいました。 私の知る限り、困窮世帯から大学進学し働きながら学校に通っている人のほとんどが何らかの形で体調を崩しています。 中には休学や

          大学時代の記憶#2:駒場精神科

          私が国公立大学の学費値上げに「賛成」の理由

          最近慶応義塾大学の伊藤塾長が国公立大学の学費値上げを提言したことが話題になりました。 意外に思われるかもしれませんが、私は学費値上げに「賛成」です。 (私の生い立ちについては以下の記事を参照。) 賛成の理由は大きく(1)既に学費は高すぎるということと(2)教育・研究のためのお金がないことの二つがあります。 まず(1)に関して、私自身も学費の問題に直面しましたが、現時点で既に国公立大学の学費は高すぎます。 結局払えないという意味では50万円も150万円も変わりません。 大

          私が国公立大学の学費値上げに「賛成」の理由

          大学時代の記憶#1:五月祭

          上の記事で大学時代について少し触れましたが、 ここではもう少し具体的なことを書いていきたいと思います。 五月祭 東大の学園祭は年に二度あるのですが、最初の方を五月祭と言います。 名前の通りこれは五月に開かれ、国内でも屈指の規模の学園祭だと思います。 五月祭の出店はサークルか一二年生が主体となっているものが多いんじゃないかと思います。 私が一年生のときもクラスで出店することは半強制的なものだった印象です。 こういう出し物は正直苦手なのですが、一方で責任を果たさず自分の目

          大学時代の記憶#1:五月祭

          高校時代の記憶#1:多額の料金未納発覚

          高校時代のことは上の記事で少し触れたくらいでしたが、今後は思い出したことをもう少し具体的に書いていければと思っています。 今回は上の記事に関連して思い出したことを書きます。 高額な携帯電話料金請求の理由 親に携帯電話料金を生活費に替える方法を教えたのは実は自分でした。 その頃、ポイント還元サイトのようなものがあって、そのサイト経由で有料サイトに登録するといくらかポイントがもらえるという仕組みでした。 一部のサイトは実質無料で登録でき、そのポイントは現金等に換金することが

          高校時代の記憶#1:多額の料金未納発覚

          料金未納と銀行口座の現状

          上の記事で携帯電話料金の未納と銀行口座が作れない問題に言及しました。 心配するメッセージを沢山頂き、個々に返信できておりませんで恐縮ですが、この記事で現状を説明したいと思います。 まず銀行口座については地元の銀行とゆうちょ銀行の二つを現状作れていて、最低限なんとかなっています。 警察の側から銀行の方へこの人は危ないですよというようなお達しが行っているようで、それが原因で私は銀行口座を作れないみたいです。 銀行側からするとそういう連絡が来ている以上私に銀行口座を作らせるわ

          料金未納と銀行口座の現状

          社会の溜飲を下げる

          先日以下の一連の記事を公開しました: 大変な反響をいただき、「先週もっともスキされた記事の1つ」に選ばれました。 また多くの「サポート」も頂き、ありがたい限りです。 (恥ずかしながら、noteにこういう機能があることを知りませんでした。) 頂いたコメントも読ませてもらい、noteを含めたSNSで発信することの意義について改めて考えました。 まず上の記事にも書いた通り「次の世代を励まし、生活保護制度や大学・大学院の問題点を明らかにすること」がその一つだと思います。 実際「

          社会の溜飲を下げる

          生活保護世帯から東大で博士号を取るまで⑧

          勉強から研究へ 大学院ではいよいよ研究をすることになります。 自分はそこそこ勉強ができるということは知っていましたが、研究能力については未知でした。 それでも、私に出来るのは精一杯やるということだけでした。 勉強と研究は結構違っていて、その切り替えがうまくできずに失敗する人も多いという気がします。 私はこの違いを理解していたからか、案外スムーズに研究に移行できたと思います。 大学院を修了するまでに、私は8本の論文(内4本は出版済み)を書き、16回の口頭発表(内5回は国外

          生活保護世帯から東大で博士号を取るまで⑧

          生活保護世帯から東大で博士号を取るまで⑦

          大学院入試 東大の他の大学院はよく知りませんが、東大数学科の院はかなり難関で、内部生でも半分落ちると言われています。 もし大学院入試に落ちてしまうと、留年するしかなくなり、そうすると授業料免除と奨学金は止まり、大学の寮は追い出されます。 そういう事態を恐れてだいぶ貯金していたとはいえ、流石に生活が成り立たなくなるでしょう。 だから院試の対策は十分行う必要がありました。 でも正直、大学受験の時ほどではないですが、これは不毛な勉強だったと思います。 この時勉強したことは、数

          生活保護世帯から東大で博士号を取るまで⑦