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成功者の戸惑いと悩みの映画「Yesterday」〜

昨年10月に公開された映画「Yesterday」を映画館で見てすごく好きだったのですが、今週アマゾンプライムで見つけて改めて見てもすごく良かったので自分の「好きなポイント」について備忘で記録しておきます。若干のネタバレありです。

(30代以上の方は覚えていらっしゃるであろう「トレイン・スポッティング」のダニー・ボイル監督の映画ですよー。)

0.一言でストーリー概略(前提)

ストーリーは「ある日、世界中でビートルズのことを知っている人間が自分ただ1人になってしまったら音楽業界でどれだけ成功できるのか」というファンタジーです。一人の青年シンガーが記憶の中のビートルズの歌を再現しながら音楽業界を駆け上っていくサクセスストーリーと、その中の多忙さと周囲の人間関係の変化に戸惑い続けるという話。全編を通してユーモアに溢れていて、一言で言えば「とにかく明るい『ボヘミアン・ラプソディ』」という感じです。

以下、好きな点について。

1.わずかなファンタジー以外は全て「リアルなビジネス」の話であること

話の設定から「あぁ、ありがちなファンタジーか」と思いがちなのですが、「ある日突然、世界がビートルズ(とその他諸々)を忘れてしまった」という5%のファンタジー以外の95%は非常にリアリティのあるビジネスの話です。「今日、音楽業界に『天才』が現れたらどのように口コミが広がってSNSでバズって、音楽業界で売り出されていくのか」という現代の音楽業界の新人発掘と売り出し方のプロセスを見られているようでビジネス目線でめちゃ面白いです。

例えばライブがすぐさまInstagramやTickTockで拡散されてバズっていく様子とか、レコード会社のマーケティング会議で(真っ白な大部屋で全員が何度も拍手する)ビートルズのオリジナルのアルバム名がことごとく却下されていくところなどは当時と現在の社会変化を示しつつ、後者はどこか「マーケティング」そのものへの皮肉も含まれているようで面白い場面でした。

2.ビジネスの成功者を取り巻く人間関係の変化と本人の苦悩もまたリアルであること(エド・シーランの実体験を反映させているそうです)

また、成功者を取り巻く人間関係の変化(特に下積み時代を支えてくれたガールフレンドとの関係)については、ボヘミアン・ラプソディ程の深刻さはないものの同じエッセンスをユーモアを織り交ぜながら表現してくれています。もしかすると、多くの『成功者』が通ってきた道なのかもしれません。

個人的に一番好きなエピソードの一つが、この映画の恋愛模様はエド・シーラン(映画にも実名出演している)の実体験を反映させているという話です。エド・シーランは既にミュージシャンとして大成功していた2015年に高校の同級生と付き合って結婚したそうなのですが、ただのフィクションではなく「エド・シーランの物語」として観れる部分も興味を引く部分だなと思います。(余談ですがこの映画の後、エド・シーランをめちゃ聴くようになりました。)

3.ビートルズを「思い出して」歌う楽曲がどれも素晴らしいこと

個人的にビートルズのコアなファンでは全くないので専門的な話はわかりませんが、映画中の楽曲は今聞いてもさすがに名曲揃いで、かつ現代風にアレンジされていてすごく良いです。ビートルズに詳しい方に聞いたところ「思い出してる設定なので、ところどころコードを間違えているのが面白い」そうで、細かい設定はさすがだなぁと。

4.目指していた「名声とお金」を手に入れたからこそ考える「幸福とは何か」の答えをシンプルに提案していること

映画の終盤に名声とお金を手に入れながらも本当に大事なものを失っているのではないかと苦悩する主人公は、ある重要人物に会いに行って「幸せになる為に必要なことは、愛する人に好きだと伝え、嘘をつかずに生きること、それだけだ(概要)」とシンプルに伝えられます。そして実際に、愛する人に好きだと伝え、嘘をつかないという選択をするクライマックスに向かうのでした。

エンディングはまるで「幸せはずっと昔から自分の目の前にあったんだよ」という、小説「アルケミスト」を思い出させるようなものだったのですが、安易な「夢オチ」や魔法が解けるような終わり方でない、現実的な終わり方だったのも気に入ったのでした。

ビートルズへの思い入れが強い方はまた違った見方をされるかもしれませんが、ライトユーザーとしては映画を見終わった余韻は非常に爽やかで、何度でも見たいお気に入りとなりました。「好きな映画」と聴かれたらしばらくはYesterdayと答えると思います。テンポの良いハッピーエンドの映画を見たいという方に是非オススメします。(おしまい)

※リンク

アマゾン・プライム「Yesterday」https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B084WR9GWP/ref=atv_dp_share_cu_r

さすがBeatlesへのオマージュ作品だけあって、レビューも多様で面白いです。