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「抱え込むより相談したほうが楽」な職場をいかに作るか

会社の不祥事とか、職場の問題とかを見聞きする度に「その瞬間の本人にとっては不正をしたほうが他よりマシな状況だったんだろうな」「もし抱え込むよりも『上司や同僚に相談したほうがマシ』な状況だったら、多分不正は起こらなかったんだろうな」といつもいつも思います。ボスコンの本の言葉で「人は皆インセンティブ(何が評価されるか)の奴隷である」というくだりがあったと思いますがそれにも少し似た話です。ポジティブな方向の「評価されることをしたい」というインセンティブと、ネガティブな方向の「怒られたくない、面倒くさい」というコスト意識の両方(どちらも自然なもの)をどうコントロールするか。目的は「全員が外に向かって濃い仕事をしつつ、イレギュラーな事が起きた時にすぐにホウレンソウできる体制作り」ようなイメージです。

例えば自分のサービスマネジメントの仕事はサービス改善やトラブル解決、コスト管理、オペレーションの改善、社内外の組織外連携等が主だったものですが、地道な仕事ではなくて派手な企画立案とホウレンソウばかりが上司に評価されると思い込んでしまったら、メンバーの地道な仕事への関与はどんどん薄くなりますね。結果として起きた不祥事に対して「なぜ、メンバーの不正に気づかなかったのだ」と厳しく指摘されても本人にとってはインセンティブから考えて地道な仕事への関与は割りに合わないし、その時点では合理的な行動だったのだと思います(合ってるかどうかは別として)。そして、プロセス段階で気づいていれば小さく収められた問題が「気付いた時には手遅れ」の大問題になってしまうというような。

また、上司に仕事のミスを報告できなかった部下は、報告した時のコスト(怒られること、リカバリの手間)と報告しないことによるコスト(後ろめたさ、関係先への迷惑)を天秤にかけて前者のほうが大きいと思ったから黙っていたのでしょう。「言って怒られるより言わないほうがマシ」と。それぞれの立場で合理的な判断の積み重ねとしての、全体では不合理な事例が生まれるというような。

以下、自分が普段から心がけつつ、正式なマネジメントの立場とになった時に忘れないでおこうと思っていることです。

①組織メンバーにとっての「合理的な行動」つまり「何にインセンティブを感じてもらうか」を顧客への付加価値に対して正しく設計し伝えること(日頃の賞賛など非公式のFBも含めて)

②日頃のコミュニケーションの頻度を増やしてメンバーから「抱え込むより相談したほうが楽」な状況を作ること。悪い情報を耳にした時に決してネガティブな反応を示さないこと(そこからどう対処するか、再発防止をどうするかという姿勢を見せること)。そのことで悪いことのホウレンソウの心理的ハードルをできる限り下げること。

③マネジメントする側から仕事の中身に踏み込んでチェックし続けること(良い意味でプロセスをごまかせない状況を作っておくこと)

この話を書きながら、8年前くらいに社会人大学院のクラスで自分の知っているある支社長(当時)にインタビューした時のことを思い出しました。ボロボロの組織を立ち直らせたこの方に仕事で何を大事にしているかと尋ねたところ、「部下の不正に気づいてあげられる上司で常にありたい」「自分が昔、ある不祥事で処分された時に上司は絶対気付くことができたはずなのに、そこまで踏み込んで関わってもらえなかったという原体験がある」と言う話をされていたのでした。当時は正直「??」という感じだったのですが今はすごくよくわかります。部下の不正に気付けるマネジメント、本当に大変ですが肝に銘じます。

少しずつ内容を更新していきます。(以上)


※参考図書
◆組織が動くシンプルな6つの原則 https://www.amazon.co.jp/dp/B00R216QZ8/ref=cm_sw_r_cp_apa_PWqzBbFA10D64

◆大惨事と情報隠蔽 原発事故、大規模リコールから金融崩壊まで https://www.amazon.co.jp/dp/B0765SYLMM/ref=cm_sw_r_cp_apa_yRJzBb933B8F4