トラブル対応で気をつけていること等
このnoteは普段話を聞ける先輩がいないような(昔の自分のような)若手の参考にもしてもらいたいので、普段2年目後輩に伝えていることや対話の中身について記録します。今回はサービス管理のサブマネジャーとして、顧客や顧客以外からのご不満対応をする際に気をつけることについてです。
1.上司として「矢面に立つ、飛んで会いに行く」といった「リスクを取った」時点で終わっている仕事は実は半分くらいあること
金融のサービス管理をしていると「急に大きい声出した人が来店されました」「とにかく上司出せと言ってます」「今晩来いと仰ってます」など、状況不明の中でまず矢面に立つことが求められることって日常茶飯事です。不測の事態が起きた時に「とにかく争点を明らかにしてから持ってきて」と後ろに引っ込むのでなく、最低限の情報整理だけして「まず前に出ることを厭わない」という姿勢を持っているだけで社内外のどちらからもぐっと信頼を得られます。そして、矢面に立った中の半分くらいのケースが「出るだけで終わる」ものです。全て自分でやる訳にはいかないのですが、部下が明らかにSOSを出しているケースは少なくとも逃げない姿勢を見せるのはミニマムですよと。人材育成の観点から少しずつ任せていきたいものの、任せるかどうかの判断は端的に「部下が自分でやれそうな顔をしているかどうか」ここで決めてしまってあまり問題ないように思います。(日頃からの信頼関係ありきですが。)
事後のFBをしっかりやりつつ、「次からはここまで聞いてみて」と部下のできる仕事の範囲を広げていけるのが理想ですね。
2.専門知識を含めてロジカルに準備するけれど、実際の交渉ではロジックで勝負しようとしないこと
1.の「矢面に立つことを厭わない」という話と並列してですが、少しでも時間があるならできる限り用意周到に準備します。各方面の専門知識をフル動員して(時に専門家の先生方にもババっと問合せをして)現状を整理していくつかのシナリオを立てて、「最終的にできることはここまで」というシナリオを書ききる作業というのはわかっていても意外とヌケモレがありますね。
自分の準備を客観視するためには現状整理と今後の方針についてテキストで事前記録することが便利です。「判断」しないと方針を書けないですし、他の担当者が記録を見て「こんなふうに整理できるのか」とわかるので人材育成の機会にもなります。面談の場で自分がいくら動転してもブレない方針を持っておける安心感もありますよ。自分は忘れ事をしやすいので普段からメモ魔なのですが、トラブル時の方針メモは「未来の自分への手紙」のようなつもりで書いています。
あと、ロジック面で用意周到に準備するけれども現場の対話ではロジカルに勝負しすぎないこと、これが非常に重要と思います。ロジカルな話で納得してくれる人なんてお客様で1割未満、社内で3割未満という感じではないしょうか。「ロジカルに考えるのは大事だけど、ロジカルに勝負してもせいぜい社内で論破できるくらい」「実際にはその場で共感して信頼してもらうかどうかが最大の肝」「けれど準備不足だと必ず転ぶ」とそんな感じです。では、相手に信頼してもらうにはどうするか。次に続きます。
3.伝えることに必死にならず「相手の想い」をよく聞き出して思い切り共感してみること、相手の目線から自分の主張を批判的に見つつ一緒に受け止めようとしてみること
ロジカルに勝負しないことと繋がりますが、共感を示すと相手に安心が生まれ、安心できる相手から丁寧な説明を聞いたら、何かしらの妥協点が生まれることが多いという話です。手元の引き出しの中はあらゆる事前準備で溢れていても、伝えることに必死にならずに相手の話をよく聞き出して共感して「今ここにこだわっている理由」についてよくよく考えてみると求められていることがわかってきますよと。そして相手目線で自分の主張を批判的に見つつ、丁寧に説明しながら一緒に受け止めていくと「誰も対立していない」ような状況で合意に至るというようにもなります。最後までロジックを振り回さずに(エッセンスはもちろん伝えますが)、共感を全面に出しつつ最後は「ご期待に沿えなくて申し訳ありません」と頭を下げて終わるような交渉は、一般のお客様との話し合いではベストに近い(結果として時間もかからないしわだかまりも残しにくい)と後輩に伝えています。これは主観ではありますが。
4.こちらの条件提示を早く明確に伝えること、なるべく持ち帰らないこと
条件面でのこちらの姿勢を曖昧にしている限り、相手は基本「待ち」になってしまい次のアクションの機会を逸してしまうことも多いので交渉は基本的に「その場の即断即決」がベストです。自分を振り返ると若手の頃は話し合いをしたことに満足してしまって「それでは持ち帰って検討します」となることも多かったように思います。自分が決められるという意思決定力(その背景としての知識量)を見せていくことは、社内外から一目置かれる存在になっていく上で不可欠な要素とプロセスだと思います。
5.上司対応をして「あなたで良かった」と言ってもらうことで満足せず、その先にある個人・組織へのFBと改善までをしっかりやること
きっと上記のような対応を繰り返していくうちに、「あなたが最初から出てきてくれたら良かったわ」と感謝されることも増えてくるでしょう。ただ肝に銘じたいのは、「争点がはっきりしてから対処することの難易度はそれほど高くない」「上司と部下はただの役割分担」ということです。自分個人の満足で終えていては同じことの繰り返しで「問題対処型」のリーダーになっていくだけ(厳しく言えば自己満足の繰り返し)なので、必ず一つ一つの出来事を「メンバーや組織の次の行動変化」に繋げることで「再発防止・問題予防型」の組織運営に活かしていくようにしたいです。濃い体験を通じた気付きを組織にFBして改善し続けることが、サービスマネジメントの仕事の醍醐味の1つだと感じます。そこまでできたら、楽しくなってきますよ。
6.記録や報告する際には情報整理の「型」を持っておいてなるべく簡潔にまとめること
前にも書きましたが、情報整理の「型(かっこよく言えばフレームワーク)」を持つことは時間と頭を浪費しない観点で非常に大事です。面談の記録であれば「①伝えたこと、②伺ったこと、③話し合いの結果決まったこと」等、トラブル案件を組織内やメンバーにFBする場合には「①お客様からのお申し出、②実際に起きていたこと、③今後改善のための具体的に行動を変えること」等。無駄な頭を使わずに、簡潔に過不足なく情報処理をしていきましょう。
又、元の当事者であるメンバーにはあれこれ共有したいことがありますがなるべくポイントを絞って「強いて言えば次に向けて何を改善してもらいたい」と対話するようにしましょう。平時では聞いてもらいにくい話も、問題対処の直後ならまず聞いてもらえることが多いです。「この人無茶ですね」が本音だったとしても、もし全く同じことが次に起きた時に何ができるかを考えれば改善点は必ず見つけられます。
7.イレギュラーケースでの誠実な対応の積み重ねと組織の改善姿勢が、社内外での信頼関係構築に繋がっていくこと
上記のような対応の繰り返しで、まず自分個人に問題対処のノウハウが溜まっていき、徐々に組織へのFBまでが習慣化してきます。「自分がいつでも矢面に立つ姿勢、相手に100%共感してみる大胆さ、組織へのFB・メンバーとの振り返り対話、簡潔な報告」これらを繰り返し繰り返し行っていくことで組織内外からの信頼が積み重なっていき、やがて自分や組織を守ってくれることに繋がります。一つ一つの対処は「誰が見てるんやろ」と思ってしまうこともありますが、皆さんよーく見てくれているので、背筋を伸ばして安心して仕事していきましょう。
少し、ある局面に特化した話だったので普遍的ではないかもしれませんね。少しずつ見直していきます。(以上)
※本の紹介
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→新人が入ったらよく買ってあげる本です。35円くらいで買えます(笑)。ご不満対応で「相手の置かれている立場を考える」「背景にあるストーリーに思いを巡らせる」ことは本当に大事ということを学びました。
◆フィードバック入門 耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術 (PHPビジネス新書) 中原 淳
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