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LAコンフィデンシャルに見る女性像

若いときに観たときはそんなに面白いかな、と思っていたのですが、

インスタのazushi.317さんのレビュー(本作品に限らず、紹介されている映画がエンタメと作品性と絶妙なバランスでセレクトされたラインナップです)を見て、とても魅力的に紹介されていたので、見返してみました。

作品紹介はそちらに譲るとして、まずは感想です。

セットや服など、どれも古き良きアメリカの粋が詰まっていて、見ているだけで楽しいです。登場人物たちのスースもお洒落です。ファッションのお手本です。話の筋も謎の黒幕を追いかけていくのですが、黒幕がわかってきた後半もそれはそれで「どうなるんだろう」とハラハラドキドキの展開です。不朽の名作とか芸術とエンタメを両立させた、というのがこの映画の評ですが、まさにそのとおりだなと思います。


主人公の一人、ガイ・ピアースはお坊ちゃんキャリア警察官なのですが、見事にはまってます。メメントのときと異なり、ナイーブな表情の移り変わりがいいです。そしてキム・ベイシンガーの妖艶さが華を添えます。本作でのアカデミー助演女優賞受賞ももっともです。


少し話が逸れますが、本作でちょっと疑問を持ったのは高級娼婦であるキム・ベイシンガーが真実の愛に気づいてめでたしめでたしのところです。


高級娼婦は恋愛のプロです。恋愛は闘牛士の赤い旗のごとく、あるあると思わせてお金だけ払わせ、あれだけお金をかけたんだから、俺はあの娘が好きに違いないと、中毒にさせていくものです。お酒など様々な快楽をお供に恋愛中毒にしていくという、はまったらそれはそれで楽しそうですが・・・フランスでは高級娼婦を「ココット」と言ってプルーストの「失われた時を求めて」では重要な役割を果たします。日本でも神格化されたキャバ嬢というのがドラマや映画で活躍しますよね(石原さとみ、広瀬アリス、芳根京子など)。あるいは清楚系の女優にすぐにそういう役をさせるところが日本人の独特なおじさん感性かもしれません。きっとマツコなどの感性豊かな女性からはかなり冷ややかに見られている気がします。


それはさておき、恋愛のプロが真の「恋愛」に目覚めるかなあ。あるあると思わせる闘牛士が、「ある」と思うかなあ。麻酔医が決してモルヒネ中毒にはならないように、あれほど妖艶なキム・ベイシンガーが真の恋愛に目覚めるなんて、ちょっと未熟な男性(前述のおじさんたち)の妄想のような気がします。自分に目覚めてもらえたら、とは思いますが、リアリティがちょっと。あえて2枚目を外した役柄づくりをしたラッセルクロウのおじさんぶりからしてもココットが目覚めるとは思えないです。

 話は逸れますが、プリティウーマンのジュリアロバーツもココットから真の恋愛に目覚めるという同じ展開です。


ハリウッド映画は女性を描くのが苦手な気がします。美人上司(映画『メジャーリーグ』の女性社長然り何故か男性集団の上司という役柄が多い)がリチャードギア(とかマイケルダグラスとか?)などが演じる役柄のダメンズジゴロ系にひっかかって顔に泥を塗られる、あるいは不幸になるという展開が多いですよね。大昔のハリウッド近辺は男女比率が8:2くらいで、そもそも女性をゲットできるのが選ばれし男子で、あとは男性同士で愛し合うしかなかったようです。そういえばハリウッド映画の複数の男子の群れ方には、メジャーリーグ然り(あとは40歳のどうてい男なども)、どことなく同性愛的なものが感じられます。だからリチャードギア的な2枚目(中身はない、に違いないと、選ばれない大多数の男たちは考えるでしょうね。私も選ばれない側なのでよくわかります)にひっかかってしまう女はダメな女だ、という描かれ方になるのだと思います。それと同時に選ばれない側の男の「次は俺の番にならないかな」という妄想も女にぶつけられているような気もしますが。


 ハリウッドではモテない男たちのある種の妄想と見苦しさが、女性にぶつけられて描かれているのかもしれません。ヘレン・ハント、デニ・ムーア、後期のジュリア・ロバーツなどの役柄にはそういうキャラクターが描かれています。男たちにキーキーうるさく言う上司、そして美人、そして男を選ぶ目がなくて不幸になる。

 一方で上述のキム・ベイシンガーや前期のジュリア・ロバーツなどのように、「俺でも話しかけたら相手にしてくれそう」な粋な娼婦(ココット)が真の愛に目覚めてくれないかなあ(俺に)という、これまたモテない男たちの妄想ですね。自分もそっち側の人なので気持ちはよくわかります。

 ハリウッドの描く両極端な女性像と対照的なのがジブリアニメに出てくる主人公の女子たちです。理知的でしなやかで勇気があり、確かな判断力と落ち着いたコミュニケーション力。世界の映画祭でこちらのほうにファンが集まるのも当然かもしれません。

だいぶ話は逸れましたが、LAコンフィデンシャル、シンプルに観ていて楽しい映画です。

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