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『ロクでもないステきなblog』 ― 今年何聴いたのよ 2022 (はづき)

あけましておめでとうございます。ロクステのはづきです。

1年が経つのはとても早く、この前2022年になったと思ったらあっという間に2023年になってしまいました。そのあっという間に聴いた色々な音楽の中から、印象に残ったアルバム/EPを紹介します。リリース年はバラバラですが、どれも私が2022年繰り返し聴いた作品です。

The Blackbyrds 『Action』 (1977)

The Blackbyrdsは1973年に結成された、R&B・ジャズ・ファンクを中心とするグループです。このアルバムに出会ったきっかけは3曲目の「Mysterious Vibes」です。完璧なシンセの音色、滑らかなコーラスワーク、感情的なサックスのメロディラインが唯一無二の心地よさを作り出しています。この曲だけでなくアルバム全体として、それほど熱いわけでも激しいわけでもなくむしろ淡々とした印象なのに、でも確実に踊らせにきています。静かな作り手の気合を感じるのが大好きなポイントです。


Moonchild 『Starfruit』 (2022)

LA出身のマルチプレイヤー3人組Moonchildの最新アルバム。他のアルバムもそうですが、耳が蕩けるような心地よい楽曲ばかりです。一曲目の「Tell Him」の冒頭にノック音と扉が開く音が入りますが、それがアルバムの世界に入る合図のような感じがしてうっとりします。本作は多数のゲストボーカルを迎えており、それによって少しずつ曲の味わいが変わってくるのも魅力的です。どの曲もどこまでも甘くて柔らかくて優しくて、音響的にここまで気持ちいいアルバムってないんじゃないかと思います。寝る前や、少し落ち着いた気分になりたいときにおすすめです。


Robert Glasper 『Black Radio lll』(2022)

アメリカ出身のジャズピアニスト・音楽プロデューサーRobert Glasperによる、『Black Radio 2』から約8年半を経てリリースされた続編です。どうしてか分からないのですが、彼の音楽って聴いた瞬間切なくなるというか、すごく郷愁にかられる感じがするんですよね…。全部の音が琴線に触れるように作られている気がします。(たとえ作り手の意図や解釈から外れていたとしても)音がしっかり感情や映像と結びつく音楽が好きなので、音だけでタイトル通り輝いているイメージが浮かぶ3曲目「Shine」とか、少し憂いを含んだ感じがする10曲目「Heaven's Here」とか、聴いていると本当に心が洗われます。



Bahamadia 『Kollage』(1996)

アメリカのラッパーBahamadiaのデビューアルバム。私はヒップホップに疎くてあまり引き出しがなく、聴く機会もそれほどないのですが、このアルバムは確かどこかでシャザムしたのをきっかけに聴きました。トラックは基本的にシンプルで、ソウルっぽさやジャズっぽさが垣間見えるものもあり、かなり聴きやすいアルバムです。ラップは終始冷静な印象で、そのクールさが気に入っています。聴いていると自分もかっこよくなった気分になれる一枚です。



Jacob Collier 『Djesse Vol.3』 (2020)

※ごめんなさい。前もって断っておきますが、この作品に関しては、アルバムのレビューではなくライブレポをさせてください。ちょっと長くなります。 

 Jacob Collierはロンドンを拠点に活動するミュージシャンで、作曲やアレンジだけでなく、どんな楽器もこなすマルチプレイヤーです。このアルバムは「Vol.3」ですが、これは『Djesse』という一連のプロジェクトのうちの3番目で、Vol.1もVol.2もあります。現在は『Djesse』のワールドツアー中で、私は7月ベルリン、11月東京の計2公演に行きました。そしてそのライブは、私にとっての人生ベストライブになりました。
 まず、一度目のベルリン公演は間違いなく2022年一番の、いや人生一番の衝撃音楽体験でした。演奏しているJacob本人がとにかくエネルギッシュで本当に楽しそうで、「音を楽しむ」ということをまさに体現している人でした。またパーカッションと照明を同期させるシステムが導入されており、その演出も曲の世界を彩っていて、目も耳も嬉しいライブでした。「世界中の幸福がいまこのホールに凝縮されてる!」と本気で思ったのを覚えています。
 二度目の東京公演で印象に残ったのは、観客の音楽愛の深さとそれを引き出すJacobの凄さです。ライブ映像を見たことのある人はわかると思うのですが(見たことのない人はこちら https://youtu.be/AzQKID8AUHM )、彼のライブは観客参加型で、彼が指揮をして観客も一緒に歌い、ライブを作ります。こう書くと「参加とかいいから普通に音楽聴くのを楽しみたいんですけど…」と思ってしまいそうですが、そこを「ぜひとも歌いたい、音楽って楽しい最高」という気持ちにさせてくれるのがJacobです。ただ、日本公演ではコロナのこともありおそらく声出しNGで、という方針になっていたのだと思います。Jacobは歌の指示ではなく手拍子の指示を出していました。それはそれで楽しかったのですが、ああやっぱり歌えないんだな…と少しがっかりしていたのは私だけではなかったと思います。しかし、アンコールで、Jacobが煽ったわけではないのにも関わらず観客が歌い始め、それを察知したJacobがいつもの(上記動画参照)合唱パートの指揮をし始め、結局皆で歌ってライブは幕を閉じました。声出していいのかな、ダメかな…という葛藤を超えて、観客が一体になった瞬間、幸福感や音楽への愛が共有された瞬間は忘れられません。そしてその気持ちは、Jacobの音楽への愛と情熱がこもったパフォーマンスにより引き出されたものだと思います。終演後にEarth, Wind&Fireの「September」が流れると、皆帰らずすっと踊っていたのも感動しました。音楽ってなんて楽しいんだろうと思える素晴らしい時間でした。


ペペッターズ『Croftick』 (2019)

ペペッターズは神戸出身のスリーピースバンドで、ポップさとカオスさが共存する不思議なバンドです。前から好きで聴いてはいたのですが、このEPだけ聴き残していたので聴いてみたらまさかの一番好きでした。ペペッターズの他の楽曲は割と音数が多い印象でしたが、このアルバムでは空白が活きています。心地よいコーラスワークと、隙間が多いけれど薄くない絶妙な音のバランスが、何度聴いても飽きない音楽を作り出しています。歌詞の音へのはまり具合や知的な雰囲気もとっても好みで、2022年何度も聴きました。


一寸先闇バンド『ルーズ』 (2022)

一寸先闇バンドはシンガーソングライターのおーたけ@じぇーむずを中心に結成され、東京を中心に活動するバンド。バンド名がインパクトありますね。2022年に初めてこのバンドのライブに行ったのですが、熱量のあるパフォーマンスに度肝を抜かれました。その帰り道の電車で聴いたEPがこちらです。特に2曲目の「意外と静かな街」がお気に入りで、緊張感のあるギターのイントロ、力強いボーカル、強さも弱さも内包したような歌詞がぐっときます。「祈らなければ楽だと 寂しいことを吐(ぬ)かして」というフレーズが特に好きです。飄々とした力強さを感じる、元気がでる作品です。

ここまで読んでくださってありがとうございます。どれも素晴らしいアルバム/EPなので、気になる作品があったらぜひリンクから聴いてみてください!2023年もよい音楽に出会えるように沢山音楽を聴こうと思います。ロクステの企画も準備中なので、お楽しみに。


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