都立自校作成合格のための戦略について(目標点編)



1、はじめに

こんにちは、昭島のルルーシュ・ランペルージこと高橋です。
今回は「都立自校作成に合格するためにはいったいどういう戦略を立てたら良いのか?」という投稿です。
と、言っても勉強法等の戦略ではなく、各教科それぞれ何点くらい取る計算を立てるか?という話です。R☆Sでは「おおよそ」こんな感じだよ、というものなので実際の戦略は生徒によって違うこともありますし、さらには通っている塾や指導している方によって異なる部分も多いとは思います。よって、今回の話が唯一無二の絶対的解答ではございません。
また、R☆S内で秘匿していて公開できないデータもあるので全て語れるわけではありませんし、特定の生徒を対象とした話ではないので最大公約数的な話になってしまいますが、それでも自校作成校を検討している生徒にはある程度参考になる部分が多いかと思います。
共通問題校を考えている生徒であっても多少は当てはまる部分があるはずです。(特に理科・社会)

2、理社について

『戦争からきらめきと魔術的な美がついに奪い取られてしまった。アレキサンダーやシーザー、ナポレオンが兵士と共に危険を分かち合い、馬で戦場を駆け巡り、帝国の運命を決する。そんなことはもうなくなった。』
                 ウィンストン・チャーチル(1874-1965)

まずは理社から考えます。理由は
・国数英と違って共通問題であること
・そのため、毎年の平均点に大きな変動がなく点数が読みやすいこと
(=自校作成の国数英は学校ごと・年度ごとの変動が理社に比べて大きい)

ためです。
自校作成入試の黎明期は講師側も、
「理社?まあ合わせて200点が目標だよね」
「悪くとも180点でしょ」
「理社ではそんなに差がつかない、なぜならみんなできるからね」
「失点した人から脱落」

といった感覚でした。
ところが、近年は
なんとか160点は取ろう
180点とれたら貯金だよね
といった具合です。

ここで「20~15年前」と「5年前~現在」の理社の平均点を比較してみましょう。

・2003~2007年の5年で見た平均点  社会60.7 理科63.1
・2018~2022年の5年で見た平均点  社会55 理科58.2

と、理科社会共に約5点ずつ下がっています
中でも2022年の社会は49.2、2021年の理科は47.8と言った恐ろしい平均点が叩き出されています。
平均点が下がった理由は「最近の若者の学力低下は嘆かわしい」「これだからZ世代は……」といった話では決してなく、単純に問題が難化しているからです。(ひとくちに「難化」と言っても様々な要因がありますが、今回は各科目の細かい話をする投稿ではないので詳細は省きます)

過去には「理社は暗記科目!追い込みが効く!」「中3の夏からでヘーキヘーキ!」といった風潮がありました。もしかしたら今でもそう思っている方、そう指導している方がいらっしゃるかもしれません。それはすべてが間違いというわけではありませんが、

理社は暗記(しているのは当たり前。それをどう使いこなすかという)科目!追い込みが効く(ただししっかりとした知識力がある子に限る)!

というのが、現状としては正確な表現になりますでしょうか。
以前の都立高校入試(社会)は「ちょっとした知識力+資料を読み取る力」があればある程度の点数が確保できました。乱暴な言い方をすれば「地頭のいい子であれば、大して勉強しなくてもそれなりの点数を取れる」科目でした。忌憚のない意見ってやつっス。
が、マークシート方式を導入した2016年度入試から少しずつ解答形式等が変わり始め、そこから現在の平均点が50点を切るような問題に至っています。
(一番大きかったのは「完答型」の問題が増えたことでしょうか)
社会の話なので、第一次大戦にたとえるならば「開戦時」と「1918年春季攻勢時」くらいの差があります。騎兵戦から塹壕戦へ。
自校作成校の理社の平均点を見ても

自校作成校を受けるレベル、合格するレベルの生徒でも思ったより得点できてないんだな…

という印象です。

自校作成校、と一口に言っても実際は各学校ごとの理社平均点に多少の差はありますが、まずは「理科社会ともに80点ずつ」の160点を目指そう、というのが現在の基本線になります。ここから加点できればできるほど国数英が楽になりますし、反対に150点、140点…と下がるごとに国数英で求められる点数が高くなってしまいます。

近年は「都立の理社?国数英に比べたら簡単だしなんとかなるっしょ、あてぃし学校の成績も5だし~定期テストで90点以上しかとったことないし~」と軽視して本番で大きく失点するパターンが多いようです。
もちろん、どこかの塾に通って理社を受講さえすれば良いといった話ではありませんが、少なくとも「市販の問題集をなんとなくやって~あとは過去問をやって~」と言った勉強だけでは他の受験生に大きく差をつけられてしまう教科となっています。

3、国数英について

『本当に勝負を分けるのは 得意が霞むほど苦手をなくすこと』
                   須藤暁人(「ちはやふる」より)

国数英についても、自校作成入試の黎明期は「数学が苦手かあ、それなら国語と英語で計150点とって数学は何とか30点だな、計180点目指そう!」といった戦略も可能でした。
これもちょっと現在では難しいですかね。「帰国子女で英語は余裕です」といった特殊なケースを除き、どの科目においても「70点」を超えることは至難です。もう本当に問題の難化が著しいです。自分は自校作成の国語については毎年一通り目を通していますが、「いやいや、この難易度と分量のものを15歳の子が50分で解ききるって無理でしょ……」という学校が多いです。昔は共通問題に毛が生えた程度の感覚だったんですけどね……

もしかすると、国語は「小さい頃から国語が得意です!」といった生徒であれば特別な対策をせずとも50~60点前後取れる可能性があるのかもしれません。ですが、数学や英語はしっかりとした対策をしていないと試験中に涙の途中帰宅をするレベルです。中学校の定期テストで満点近く取っている子でも、対策をせずに自校作成の問題を解くと10点や20点が当たり前の世界です。

「私立高校並みに充実した進学指導です!」「予備校に行かなくても難関大学に合格できます!」といったことを謳っている自校作成校が、塾に通って訓練しないと到底解けないような問題を出してくるのは果たしてどうなんだろう……という気もしますが、そのことの是非はここでは置いておきます。
大学入試を見据えて、そういった試験を課す理屈はわかるんですけどね。わかりはしますが……

閑話休題。

そんなヒジョーに難しい国数英なのですが、まずは「その高校の平均点」を目指すことになります。(なぜ平均点が目標なのか?ということについては自校作成校の倍率を見て考えてみてください)
そこから過去問を解いていく中で「国語と英語は行けそうだから平均点プラス5点ずつを目指そう」「苦手な数学は何とか平均マイナス10点までで耐えよう」というように細かい戦略を立てていきます。

前述の「国数英はどの科目においても高得点を取ることが難しい」という理由で、20点や30点をとってしまう科目が出てくると他の科目で挽回することは厳しいです。よほど自信があるなら得意教科を伸ばして苦手教科は捨てる、という考えもあるかとは思いますが、まずは「大幅に失点する教科をなくす」ことが自校作成校合格への「王道」ではないでしょうか。

あとはやっぱり塾(先生)選びですかね。「ここ(この人)が良い」というのは生徒による部分もあるので「おススメ」というのは難しいですが、「その塾(先生)では自校作成に受かるのはちょっと難しいんじゃないかな……」というものは確実に存在します。Goodは十人十色、千差万別だと思いますが、確実にBadはあります。何がBadなのかはあんまり言うとマズいのでここには書きませんが。

でも本当に国数英の指導者は重要です。おそらく理社よりも。
個別指導塾の経験の浅い学生だと「国語ができるようになりたい?じゃあ読書をしよう!」みたいなアドバイスをどや顔でしますからね。

結局何がBadなのか書いてるな、これ……。

4、おわりに

いかがでしたでしょうか。
「理社は得意だから3教科はこのぐらいでいいか」「国語で加点できそうだから数学はまず40点を……」といった感じで、自身の過去問の正答率やその学校の近年の平均点を参考に目標点を練っていくのが基本スタンスとなります。

「自校作成?普通の子でも頑張れば受かりますよ」と言ってあげたいのは山々なのですが、「普通の子でも中3の時点で内申がオール5に近く、しっかりとした指導者についてきっちりとした勉強をすれば受かりますよ」というのが(個人的な)現状です。それを「普通の子」と言うのかはさておき。
ともあれ、まずはある程度の内申を確保することが必要不可欠です。

周りの塾を見渡しても最近の昭島地域からは自校作成校に行く子が少ないようで一抹の寂しさがあるのですが、とは言え受ける前からのハードルが上がってるのも事実だから仕方ないのかな、というアンビバレントな気分です。
「自校作成校を受けること、行くこと=正義」というわけではまったくないと思いますし、いざ受けるとなると本人もご家庭も指導側もエネルギーが要りますからね、自校作成。

ただ、自校作成校に進学した在校生や卒業生から話を聞くと「マジ楽しいです!」「充実した高校生活でした!」という声は本当に多いので、興味と覚悟←ここ重要)があるなら気後れすることなくまずは学校見学に行ってみると良いのかな、と思います。結果としてその高校を受けなかったとしても「こういう高校もあるのか」という見聞が広がることは間違いありません。

今回は「目標点編」ですので、他の「編」があるかもしれませんし、ないかもしれません。
俺たちの戦いはこれからだ!
高橋先生の次回作にご期待ください!

著者プロフィール
栄光ゼミナール、市進学院、四谷学院、Z会などでのプロ講師経験を経て
現在はR☆Sゼミナールの国語・社会科担当、教材・模試担当として活躍中


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?