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山歩き はじめて尾瀬にいったはなし


10月の半ばに、はじめて尾瀬にいった。

ホシガラス山岳会というユニットさんの本の大ファンになり、その中のおひとりである野川かさねさんの写真が大好きになってから、野川さんが好きだと書いている場所のひとつひとつに、ずっといってみたいなあと思っていた。
ゆるゆると低山ハイクはしていたけれど、今年の夏に野川さんの写真教室のツアーに参加してから、山を歩いて写真を撮るのが好きになった感があり、この気分のまま今年に行くなら今が最後の時期だ、と夫に付き合ってもらい出かけることにした。

ぎりぎりすぎてきっといっぱいだろうと山小屋の予約はあきらめ、日帰りで。高崎線の始発に乗って沼田へ行き、そこから尾瀬戸倉まで1時間半のバス。乗りかえて、鳩待峠までさらに30分ほどマイクロバスに揺られる。人がいっぱいの車内にへとへとになりながらも、窓の外は淡い色合いの紅葉で、気持ちはふわふわしてくる。

ようやく辿り着いた鳩待峠から歩きはじめ。冷たい強い風にあわててフリースを着込み、握ってきた炊き込みごはんのおにぎりを食べてから、歩きはじめる。
前日までの雨で、木道に出るまではぬかるみで大変だった。でも、森の木々は、やはり淡い色合いの紅葉で、なんだかずっときれいだった。よく出かける秩父の山の森とは違う色。夏にくまのプーさん展に出かけ、E・H・シェパードの挿絵に夢中になったわたしたちは、(もちろんイギリスの森にはいったことがないのに)ずっと「百町森のようだ!プーさんがいるような森だ!」とはしゃぎながら歩いた。



横田代に出る。ふっとひらけ、木道が続き、紅葉と霧でぼんやりした景色がとても綺麗で、ああ、尾瀬にきたみたいだ!と思わず嬉しくなる。森に遮られていたらしい小雨と霧、冷たい風が吹きつけ、その後はずっとレインウェアを着て過ごした。
ひたすら木道を歩くのはとてもたのしい。かわる霧と光と、草も水面もかすかにきらきらして、半分寝ぼけて眺めているような景色なのがとてもよかった。


中原山を過ぎてひらけたところのベンチでお昼を食べた。高崎駅で買っただるま弁当と鶏めし弁当(峠の釜飯は、その日は7時半からということで間に合わなかったけれど、大変おいしかった)。サーモボトルの湯でお茶まで入れて、のんびり休憩していたら、晴れ間がでて湿原がきらきらしたり、遠くの霧が一瞬晴れたりする。

野川さんが本で紹介していたアヤメ平は、ああ、ここが、とすごく綺麗でびっくりする。歩いている間はずっと霧で、晴れている日も来てみたいと思ったけれど、はじめて来たのがこの天気でよかった、と心底思うほどよかった。春の花が咲く景色もとても見てみたいけれど、木道のそばに咲いている枯れかけの小さい花もとても好きで、ずっと歩いていけたらいいのに、とうそみたいなことも思った。


富士見峠の手前あたりで折り返し。そこだけ晴れていて、斜面と紅葉が絵本のような景色だった。すごいすごいと何度も言い合った。すれ違った人も「すごいね」と立ち止まっていたので、よい眺めの日だったかもしれないと思った。



後ろ髪をひかれつつ、きた道をもどる。帰るのがただただもったいないと思った。こんなにこんなに、綺麗なところにやってきたのに。きのこや木の実を眺めながらぬかるみと格闘し、予定より1本早いバスに乗って帰路につく。

来年は、来年こそは、ぜったいぜったい泊まりでいこう、と思った。そしてそれまでに、もうちょっぴりでも写真が上手くなりますように。

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