無
少しふらついた足取りで職場のロッカー室に戻る。疲れた。悪い人ではないけれどさっき話した人の言葉が気になった。でもそんなこと気にしていられない。気にしていられない。小さいことにくよくよ悩んだり、そのことについて長い間考えたりする。こういう姿勢だと神経が摩耗していくのでやめたい、やめようか。
でもその時に声がする。
「それがなくなったら私じゃないじゃん」
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大人になる過程で諦めたり捨てたりしたものもあれば、それでも「これは私だから」と守ってきたものがある。どの人にもあるのかもしれない。決して大きくはないそれが、私を励ます。
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私は多分、もういい。もういい。本当は全部わかっているし、わかっていた。もう充分だ。上も下も善も悪もない。ただ毎日は過ぎていって、それだけでもう、ここいらには光ばかりだった。
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