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杖歩行から見えること

こんにちは、理学療法士のおかむーです。

今回は、「杖歩行から見えること」について、お話しします。

言葉だけではイメージしずらいので、症例で説明していきます。

Ⅰ.左股関節術後の方

股関節は順調に回復し、現在T字杖自立歩行です。

術側である左立脚期の歩行の状態は、以下の通りです。


LR                    MSt                   TSt


前額面と矢状面に分けて見ると

①前額面

LR                     MSt                        TSt


荷重がかかる左MStでは、杖は斜め方向についています。

MSt


ここから、重心を右方向にさせて、左荷重を減らしていることが伺えます。

左右のMStを比較すると、足部と臀部中央の位置関係や下肢の外側傾斜角度からも見て取れます。

右      


ただ、これを臨床現場で歩行の観察のみで判断するのは難しいです。

そこで、患側荷重量は、杖の傾斜角度と、杖を使う上肢への支持量が一つの目安になります。

②矢状面

LR                     MSt                        TSt


ここで注目すべきは、TStの杖のつき方です。

杖を斜めにして、後方についています。

TSt


ここから、左下肢の不十分な蹴り出しを、杖でカバーしていることが伺えます。

そこで、蹴り出しに必要な機能について、チェックしていきます。

また、観察後、杖なしで歩行させると問題点が絞られ、より具体的になります。

独歩が難しければ、平行棒内や誰かにそばについてもらって行ないます。

その場合、そう長くは観察できないので、杖歩行から問題点を浮き上がらせ独歩では、ピンポイントで観察します。

Ⅱ.右股関節術後の方

この方も杖歩行は自立しています。

←歩行周期の方向(右下肢軸で表示)

TSw    MSw    ISw    PSw    TSt    MSt    LR    IC


ここで、わかりやすくするために左右の立脚期で比較すると

杖が最も斜めになるのは右TStです。

上段は左立脚期、下段は右立脚期

TSt       MSt       LR      IC


この時期に、術側である右に荷重できない問題があります。

考えられる具体的な問題として

股関節)
右股関節伸展・内転可動域制限、可動域があれば、その状態を維持できる股関節屈曲・外転筋の低下

足関節や足部)
右に荷重させるには、下腿の外側傾斜と前傾が必要です。そのための足関節背屈、外返し可動域制限
可動域に問題がなければ、下腿外側傾斜と前傾を維持させるための足関節底屈・内返し筋の低下、あるいは前足部荷重支持の筋の低下

体幹)
右立脚期では、TStのみ右に傾斜しているので、骨盤の左移動に対して、体幹右傾斜による重心位置の補正と考えられます。

TSt       MSt       LR      IC


よって、右TStで骨盤の左移動による左重心に対して、杖と体幹で右足底支持基底面に乗せようとしてます。

以上から問題は、股関節か足関節で、股関節術後を考慮すると、股関節の問題が浮上します。

次に、健側である左立脚期ですが、この時、杖は全般的に後方に位置しています。

また、臀部中央と左足部の位置関係から、左足底支持基底面から外れてしまう重心を杖支持でカバーしていることが伺えます。

TSt       MSt       LR      IC


しかし、杖はそれほど斜めではなく、左立脚期全般に後方にあることが目につきます。

TSt       MSt       LR      IC


このことから、左立脚期では、左足底に重心を落とす能力はあるけど、重心を前方に移動させるのが難しいことが伺えます。

重心の前方移動は、可動域では足関節背屈、股関節伸展で可能になります。

可動域に問題ない場合は、その状態を維持させる筋力です。

それを踏まえて、再度、左立脚期を見ると、下肢は重心を前方に移動させる方向に動いています。

変わらないのは、体幹の右傾斜です。

TSt       MSt       LR      IC


よって、この重心前方移動を難しくしているのは、体幹であることが予想されます。

以上のように、杖のつき方からいろいろな情報が発信されています。


ちなみに、杖合わせですが

教書では、杖の高さは、立位で肘関節30°屈曲や大転子に合わせ、杖は健側に持たせるとあります。

しかし、臨床では、そうならない場合があります。

特に、高齢者の場合に、それが多いです。

ここで、根本に立ち返ると、杖は歩行の安定のために使用されます。

そのような方は、教書を無理に合わせるのではく、杖歩行を観察して、安定性とリズミカルの有無を参考にされるとよいかと。

また、杖より松葉杖の方が安定します。

理由は、上肢二点支持により、杖のぐらつきが押さえられるからです。

すると、重要になるのが腋窩周辺での固定支持です。

腋窩神経麻痺を防ぐために、腋窩から2~3横指空けますが、ポイントとして、上腕と胸郭で無理のない状態でしっかりと松葉杖を挟められるかです。

それによる手と上腕による二点支持で松葉杖が安定し、歩行が楽に出来るようになります。


最後までお読み頂きましてありがとうございます。






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