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軽度片麻痺でクリアランスが低下した歩行の症例

以下に記す症例について、見方、知識の使い方、考え方の流れが参考になれば幸いです。

情報)
右脳梗塞の左片麻痺の高齢の方である。

麻痺の程度は軽度で、上肢は実用手である。

左下肢はBRSⅤ以上ある。

しかし、歩行でクリアランスの低下が見られる。

遊脚期、足関節の背屈に左右差はないが、左膝関節の屈曲が右に比べて少ない。

Q)何が問題か?

A)遊脚期に膝関節屈曲に働く大腿二頭筋(短頭)の筋力低下、あるいは大腿四頭筋の緊張亢進による膝関節屈曲筋への抵抗が考えられる。

Q)評価では?

A)BRSⅤ以上あるので、MMTでグレードは4以上あった。

Q)大腿四頭筋の緊張亢進は?

A)安静時では触診してもわからなかった。

Q)ところで、なぜ、大腿四頭筋の緊張が亢進するのか?

A)筋連結で考えると、遊脚期で骨盤を引き上げるのに、大腿四頭筋とつながる体幹筋の収縮を促している。

Q)何筋か?

A)大腿直筋と腹直筋である。

Thomas W.Myers 著 坂場英行 他 訳:アナトミー・トレイン 徒手運動療法のための筋筋膜経線 第3版 より引用 


Q)評価は?

A)体幹筋への負荷が大きい動作は起き上がりである。
この時、左下肢が突っ張りと左右差があれば、つながりがある。

評価したところ、起き上がりで左下肢だけが突っ張り、大腿直筋の緊張が確認された。
この時、左足関節は強く背屈した。

Q)アプローチは?

A)大腿直筋とつながりのない体幹側屈筋の収縮を促す。

Q)方法は?

A)端座位で前傾姿勢になって、腹直筋の収縮を避けながら左骨盤の引き上げをする。

矢状面          前額面前面


しかし、左骨盤が上がらなかったので、前傾位から体幹を右に傾け、姿勢反射を利用して収縮を促した。


この時、セラピストは腹直筋を触診して収縮しないよう確認しながら行なった。

休みを含めて10分間実施した。

Q)結果は?

A)高齢者の場合、ex後のすぐの歩行は筋疲労により歩容が悪くなるので、2分ほど休んでから歩いてもらった。

5m程は膝関節が屈曲してクリアランスは確保できていた。

その後、徐々に元に戻った。

しかし、結果が出たのでexを継続することにした。


最後までお読み頂きましてありがとうございます。


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