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動作時肘痛の症例 前半

情報)
洗顔や髪をとかす動作などで、右肘関節を屈曲・回外させると右肘にズキッとした痛みが生じる。

痛みが生じる肢位
屈曲・回外


痛みの部位
右肘関節前面の中央やや橈側の奥


きっかけは、半年前に同部位に痛みが出現し、それが数日間続いた。
それについて、心当たりはない。
その後、痛みは減ってきたが、上記の動作時に時々痛みが起こる。

また、右肘関節の屈伸自動運動では、左に比べて重く、すぐに疲れる。

他に、右肩関節屈曲位(120度ほど)から水平伸展方向に動かすと、結節間溝当たりに痛みが生じることがある。

但し、既往はない。

Q) 何が原因か?

A) 部位にある痛み組織として筋・腱・靱帯・関節包・腕橈関節や橈尺関節がある。

痛みの部位
右肘関節前面の中央やや橈側の奥


Q) どれか?

A) 肘関節屈曲・回外で痛みが起こる。

肘関節屈曲で起こるので、前面にある結合組織の伸張ではない。

前面での圧迫を考えると、腕橈関節の圧迫が考えられる。

ただ、症例は若いので、OAとは考えられず、その部位で関節包が挟み込まれている可能性がある。

Q) 回外で痛みが起こるが?

A) 回外では腕橈関節に隙間が生まれる。

回内で近位橈尺関節の骨は合致する。

J.CASTAING 他著 井原秀俊 他訳 : 図解 関節・運動器の機能解剖 上肢・脊柱編 より引用


その隙間に関節包が入り込み、肘関節の屈曲で圧迫される。

Q) 何故、そのようなことが起こるのか?

A) 肘関節屈曲で緩んだ前方関節包が挟み込まれないようにする、上腕筋の収縮力が低下している可能性がある。

Q) 評価では?

A) 肘関節の屈曲運動で、右が左に比べて上腕筋の収縮が少ないのが確認された。

Q) アプローチは?

A) 上腕筋の収縮を促す。

ここで、抗重力位で実施したが、上腕二頭筋や腕橈骨筋が疲労してしまう。
また、その後の判定でも変化がなかった。

※このことからも、肘関節屈曲作用の上腕筋の補助が少ないことが伺える。

そこで、重力除去位で実施した。

この時、上腕二頭筋の収縮を押さえために、回内位で実施した。


写真の肢位で肘関節屈伸を休憩を含めて5分間行なった。

Q) 結果は?

A) アプローチ前の痛みを10とすると、7であった。

微妙である。

そこで、別の手だてはないか考えた。

Q) 何か?

A) 上腕筋と類似作用の上腕二頭筋が主に働き、その分、上腕筋を使わなくて済み、低下したのではないか? と考えた。

これは、肩関節屈曲、水平伸展で結節間溝当たりに痛みが起こることからも推測される。

Q) それは?

A) 右肩関節屈曲位から水平伸展方向に動かすと、結節間溝当たりに痛みが生じるのは、上腕二頭筋長頭腱が結節間溝で圧迫を強めるからである。

Q) でも、右肩だけに痛みが起こるが?

A) 普段から、右の上腕二頭筋長頭腱と結節間溝の間で摩擦が大きい。

Q) 何故、摩擦が大きくなるのか?

A) 骨頭が上方偏位しており、それが圧迫を強めている。

Q) 何故、骨頭が上方偏位するのか?

A) 骨頭を下方に牽引する棘下筋・肩甲下筋の低下が考えられる。

Q) 評価では?

A) 触診や自動運動で問題なかった。

Q) 他には?

A) 上腕二頭筋が過活動状態にある。

Q) 評価では?

A) 肘関節屈曲exを実施した後なので、右上腕二頭筋の緊張が高く、普段の状態を確認できなかった。

Q) それでは、もしも、右上腕二頭筋の緊張とした場合、何故、そのようなことが起こるのか?

A) 上腕二頭筋は、筋連結で体幹筋につながる。

上腕二頭筋→鎖骨胸筋筋膜→大胸筋→腹直筋


Thomas W.Myers 著 坂場英行 他 訳:アナトミー・トレイン 徒手運動療法のための筋筋膜経線 第3版 より引用


脊柱安定化の体幹インナーが弱い分をアウターがカバーして、その収縮を活性させるために活動した。

Q) 評価は?

A) 脊柱安定化の代表筋である腹横筋と内腹斜筋を腰三角部で触診し、左右を確認すると、右の緊張が低かった。

AnneM,Gilroy 他著、坂井 建雄監訳、市村浩一郎 他訳:プロメテウス解剖学コアアトラス第2版より引用


Q) アプローチは?

A) 骨盤後傾運動で内腹斜筋、そこから息を吐くことで腹横筋の収縮を促した。

骨盤前傾               骨盤後傾


Q) 結果は?

A) 肘の痛みは1/10に下がり、効果があった。

ここで、何故、右の内腹斜筋と腹横筋が低下したかについても検討した。

後半に続く


最後までお読み頂きましてありがとうございます。









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