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患者さんを捉える ー股関節術後に歩容の改善を目指した症例ー
以下に記す症例について、見方、知識の使い方、考え方の流れが参考になれば幸いです。
情報)
70代の方である。
右大腿骨頚部骨折で人工関節置換術施行、急性期病院の理学療法1ヶ月後、回復期病院へ転院する。
現在、T-cane歩行は自立し、歩行スピードも実用的なレベルまで回復している。
受傷前は活動的な生活を送っていた。そこで歩容の改善を目標に理学療法を進めている。
但し、痛みはない。
歩容の問題として体幹が右傾斜し、重心が左側にある。
歩行の状態)術側である右下肢中心の歩行周期
![](https://assets.st-note.com/img/1699486474953-wQ93AsiEqq.png?width=800)
Q) 何が問題か?
A) 体幹は歩行周期全般で右に傾斜している。
しかし、その傾斜の程度が歩行周期で変わる。
Q) どのような変化か?
A) 右立脚期よりも左立脚期で大きい。
![](https://assets.st-note.com/img/1699487259967-S5FykpdxaP.png)
上段は左立脚期 下段は右立脚期
Q) 傾斜が最も大きいのは左MStであるが、この原因は?
![](https://assets.st-note.com/img/1699487454946-q0SPlm7uDl.png)
A) 左立脚期の歩行周期で、骨盤と足部の位置の変化から骨盤の左方移動がある。
![](https://assets.st-note.com/img/1699487493211-0VU25v1k0r.png?width=800)
Q) 骨盤の側方移動と体幹の傾斜の関係は?
A) 重心は骨盤にある。
骨盤が左側方移動すると、重心線を支持期底面に入れようと、体幹を右傾斜させる。
Q) 骨盤の側方移動の原因は?
A) 股関節が内転位なため、左股関節外転筋の低下を疑う。
Q) 評価では?
A) 左右差はなく、問題なかった。
Q) 他には?
A) 膝関節の側方動揺や内反変形、外側縦アーチの低下も考えられる。
Q) 評価では?
A) 左右差はほぼなく、問題なかった。
Q) では、何か?
A) 下肢に問題がないので脊柱を疑う。
Q) どのような?
A) 脊柱の側弯である。
Q) 脊柱のどのような側弯か?
A) 左凸の側弯である。
Q) 左凸側弯が左右立脚期の傾斜の違いを説明できるか?
![](https://assets.st-note.com/img/1699487854010-PjaYf1w9hf.png)
![](https://assets.st-note.com/img/1699487870770-GT8eobthUC.png)
A) この時、遊脚側の骨盤を引き上げるために、体幹の側屈筋が働く。
左MStでは右側屈筋が働くので、左凸側弯を助長してしまい、体幹の右傾斜が強まる。
![](https://assets.st-note.com/img/1699487928331-8CuuQjcO19.png)
逆に、右立脚期では左側屈筋が働くので、左凸側弯を押さえるため、体幹の右傾斜が減る。
![](https://assets.st-note.com/img/1699487961251-T528dyQCYQ.png)
以上の左右立脚期の体幹傾斜の変化からアプローチで変えられる可能性がある。
Q) 評価では?
A) 腰椎で左凸側弯が確認された。
また、左側屈筋の緊張が右に比べて低かった。
この緊張の低下は
左凸側弯により、左側の組織が伸張され
その結果、椎体の左側は関節包や靱帯の支持が右に比べて強なる。
その分、筋による安定化を行なわなくて済むことから来る
と考える。
Q) ここで、左ICは右ICに比べて股関節が内転位である。
![](https://assets.st-note.com/img/1699488138779-FcjfjLSPGI.png)
この状態で立脚期に入ると、股関節が内転位なので、股関節外転筋が伸張されて機能が低下し、骨盤の左側方移動が起こる。
上記で述べたように、重心は骨盤にあるので、骨盤の左移動に対して、体幹を右傾斜させて、重心線を足底に納めようとする。
![](https://assets.st-note.com/img/1699488217941-rBc9s6NOr9.png)
よって、この左ICの股関節内転も問題と考える。
これも左凸側弯と関係するか?
A) 左凸側弯はカップリングの影響で、体幹を右回旋させる。
![](https://assets.st-note.com/img/1699488295223-RzNr14ZNtV.png)
そこから正面を向くために、体幹を正面に戻すと、今度は、左骨盤が後方回旋位になる。
左骨盤が後方回旋の状態で、左下肢を振り出すと、股関節では内転筋が優位に働く。
Q) 評価では?
A) 左右の腸骨を触りながら歩行させると、左骨盤は右に比べて後方に位置していた。
また、矢状面で左右の歩幅を見ると、左は右に比べて歩幅が狭かった。
これも骨盤後方回旋を間接的に読みとれる。
![](https://assets.st-note.com/img/1699488398240-emEr0KzSZG.png)
Q) アプローチは?
A) 左凸側弯を減らすことである。
Q) 方法は?
A) 左を下にした側臥位になってもらい、凸の部分にクッションを入れて10分ほど寝てもらう。
これにより、左凸部分の左側屈ROMを行なう。
![](https://assets.st-note.com/img/1699488543673-MRhuNV5QiJ.png)
次に、端座位で左骨盤の挙上(出来る範囲)で行なう。これは休みを含めて5分間実施した。
これにより、左体幹側屈筋の緊張を高めて、ROM後の可動域を維持させる。
Q) 結果は?
A) 目に見える大きな変化はなかったが、本人としては軽くなったと言った。
軽くなったのは、余計な筋の作用が減ったことなので、1週間続けた。
アプローチ1週間後、変化があったので、アプローチをそのまま続ける。
歩行の状態)左立脚期の歩行周期
![](https://assets.st-note.com/img/1699488672442-vAwotEH9aA.png?width=800)
上段はアプローチ前 下段はアプローチ1週間後
最後までお読み頂きましてありがとうございます。
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