モーツァルト:交響曲第41番 ハ長調, K.551「ジュピター」

00:00 I. Allegro vivace
08:07 II. Andante cantabile
16:04 III. Menuetto: Allegretto
20:41 IV. Molto Allegro

演奏者ページ New York Philharmonic (orchestra)
Bruno Walter (conductor)
公開者情報 Columbia Masterworks, 1953. ML 4880.
著作権 Public Domain - Non-PD US
備考 Source: Internet Archive

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

交響曲第41番 ハ長調 K. 551 は、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが作曲した最後の交響曲である。

概要
本作はローマ神話の最高神ユーピテルにちなんで『ジュピター』(ドイツ語ではユーピター)のニックネームを持つが、これは同時代のヨハン・ペーター・ザーロモン(1745年 - 1815年)が名付けたとヴィンセント・ノヴェロ(1781年 - 1861年)の『モーツァルト巡礼』(1855年)に紹介されており、このニックネームは19世紀半ばにはすでに広く知れ渡っていたと考えられる。本作品のスケールの大きさ、輝かしく荘厳な曲想から付けられた通称であり、標題的な意味合いはない。

1788年8月10日に完成され、同年に作曲された第39番(6月26日)、第40番(7月25日)とともに「3大交響曲」と呼ばれる。他の2曲同様、作曲の目的や初演の日時は不明である。

モーツァルトを崇敬していたリヒャルト・シュトラウスは、1878年1月26日にルートヴィヒ・トゥイレに宛てた手紙においてジュピター交響曲を「私が聴いた音楽の中で最も偉大なものである。終曲のフーガを聞いたとき、私は天国にいるかの思いがした」と称賛しており、1926年に自身の指揮で録音も行なっている。

自筆稿は現在ベルリン国立図書館にある。

曲の構成
第1楽章 アレグロ・ヴィヴァーチェ
ハ長調、4分の4拍子、ソナタ形式。

終楽章と同様に、数々の動機を複雑に組み合わせた構成をとっている。序奏なしで、16分音符の3連符による音階の上昇を伴った力強いハ音の連打の動機と、伸びやかで優しい旋律的動機が組み合わされ、それが次にト音の連打で繰り返される第1主題で始まる。弾むようなファンファーレのリズムがこれを受け継ぐ。これらが混合、対位されながら進み、半音階の上昇を伴った柔らかな第2主題に至る。

それを第1主題の伸びやかな旋律が受け継ぐが急に途切れると、モーツァルトならではの無邪気な終結主題が現われ提示部を終える。

展開部の前半はこの最後に現われた主題を引き継いだ楽想が短調で展開されるが、後半は第1主題冒頭の動機が展開され、そのまま再現部を導く。再現部は短調で再現される部分もあるがほぼ型どおりに進み、短いコーダがついて終わる。

第2楽章 アンダンテ・カンタービレ
ヘ長調、4分の3拍子、ソナタ形式[4]。
弦楽器は弱音器が付けられ、ティンパニとトランペットは休みとなる静かな緩徐楽章。

第3楽章 メヌエット:アレグレット
ハ長調、4分の3拍子。
ゆるやかに下降する主題で始まる優美なメヌエット。

トリオの後半では、第4楽章のジュピター音型がイ短調で「ソ#-ラ-レ-ド」という形で先取りされる。
第4楽章 モルト・アレグロ
ハ長調、2分の2拍子、ソナタ形式。
高度で複雑なフガートの技法が用いられたソナタ形式。

ジュピター音型と呼ばれる「ド-レ-ファ-ミ」の動機Aで始まる第1主題はこのジュピター音型のほか、続く5小節からの動機Bと、19小節からのファンファーレ風の始まりオクターブを駆け下りる動機Cの三つの動機を持っている。第1主題提示のあと、36小節からジュピター音型(動機A)によるフガートが進み、56小節から音階を6度上昇する動機D1、跳躍する動機D2が現われる。74小節からの第2主題部は動機Eで始まり動機Cを伴った柔らかなものだが、動機D1が入ってきて力強く盛り上がる。提示部終結部は動機Bで力強く進み、動機Cの上行形も現れて締め括る。展開部は動機Aで始まり動機Cが加わり、主に動機Cが展開される。225小節からの再現部では動機Aが移調しながら繰り返されて緊張を増すが、提示部にあったフガート部分は存在せず、第2主題へ進みその後は型どおり再現される。コーダでは、第2主題も参加したすべての動機が充実した対位法で登場したあと、第1主題が堂々と現われ、華やかに全曲を閉じる。

ジュピター音型
第4楽章で使われる「ジュピター音型」(C - D - F - E、ド・レ・ファ・ミの4音符)は、モーツァルトがたいへん好んだモチーフである。

8歳で作曲された交響曲第1番 変ホ長調 K. 16の第2楽章をはじめ、次のようにさまざまな楽曲に使われている。これは、古くから多くの作曲家に使われていたモチーフでもある。

交響曲 変ロ長調(旧全集では第55番)K. 45b(Anh 214) の第1楽章
ミサ・プレヴィス ヘ長調 K. 192 のクレド
ミサ曲 ハ長調 K. 257 のサンクトゥス
交響曲第33番 変ロ長調 K. 319 の第1楽章
3つのバセットホルンのための5つのディヴェルティメント K. 439b(Anh 229) 第4番 の第1楽章
ヴァイオリンソナタ第41番 変ホ長調 K. 481 の第1楽章
ブラームスの4つの交響曲の調性を番号順に並べると、同じ「ハ・ニ・ヘ・ホ (c - D - F - e)」となる他、シューマンの4つの交響曲の調性を番号順に並べた場合も「変ロ・ハ・変ホ・ニ (B - C - Es - d)」と変ロ長調でこの音型になることが知られている。
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