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文庫のスーツ姿が見たくなる本 ほか

『着せる女』内澤旬子/本の雑誌社/2020.2
 スーツ大好きな著者が、身近な出版業界の男性達にスーツを着せまくる、という設定だけで嬉しくなっちゃう本。
 名言の嵐で笑いころげながら読んだのですが、
「着た衣服と似合う服が同じとは限らないという問題。服が好きな大人ならば、二度や三度は噛みしめて、噛みしめすぎて奥歯を痛くしたことがあるのではなかろうか。」という「我が服装史」の出だしに涙せずにはいられなかったです。我がことを言い当てられたようなこの気持ちを、「刺さる」というのかしら。
 男性用スーツの蘊蓄がすっごく楽しいし、実際のフィッティングの様子が事細かで勉強にもなり、更にスーツを着る前と後のビフォーアフターの写真付きで感動もあり、スペクタクルな本でした。子供のリクルートスーツは麻布テーラーにしよっと。
 何より、一番燃えたのは、本の雑誌社の浜本社長さんにスーツを見立てる打ち合わせ。なりたいイメージの芸能人を挙げてもお互いピンとこない中、「版元でたとえたら、どこ」という内澤さんのクリティカルな質問が。晶文社、平凡社、筑摩書房、藤原書店と並ぶ中で出てきたのが「法政大学出版局」、東大じゃなくて法政大のほう。白水社なら文庫クセジュ……あ~、わかる、わかるわ。岩波文庫がレトロシック、東洋文庫は羽織袴、うんうん、わかる。私にイラストが描けたらめっちゃスーツの単行本や文庫たちを描くのに。どなたか先達がおられたら拝見したい。

 同じ服飾系の本でも、
『Hello!!Work』聞き手・川島蓉子 語り手・皆川明/リトルプレス
 こちらは憧れのミナペルホネン社長皆川さんの話を、これまた憧れの川島蓉子さんが聞き手として引き出すというなんてお得な本。プロダクトの産み出し方と仕事のやり方にフォーカスしていて、職種に迷っている高校大学生に読んで欲しい感じでした。皆川明さん、他の著作もぼちぼち読んでますがブレないなあ~。ミナペルホネンの活動の中に新しく取り入れられた仕事の在り方、これからの人生を考える上でとても指針になりました。見返しにひっそりミナのデザインが同色箔押しで印刷されてて心憎いったら。川島蓉子さんの経営系の本は最近読んでなかったのでまた借りたい。

 経営と言えば
『おいしいデ』梅原真/羽鳥書店/2018
 梅原さんがやってるのはパッケージデザインじゃなくて、1次産業のおいしいものが採算取れるように売れるシステムのデザインなんだよな~とありがたくおもう。食いしん坊なのでおいしいものがコンスタントに売れてくれる世界は有り難いです。

 ここまでは割とエコーチェンバー内の本ですが、今回はのっけから「えっそうだったの?」っていう本もありました。

『アマルティア・セン講義 グローバリゼーションと人間の安全保障』アマルティア・セン/ちくま学芸文庫
 最初の1ページから、グローバリゼーションは新しいものなのか?という問いかけで始まって、えっそれ何知らん、となりました。センさんはノーベル賞経済学者ですが、その研究は哲学だったり社会学だったりと広範で、平等・福祉・厚生などの本を読んだらちょこちょこ引用されてるのでなんか顔なじみの人って気分だったのですが、いきなり背負い投げされました。歴史的視点から見るグローバリゼーションってなんでしょうね。まだ10ページぐらいしか進んでないけど楽しみです。

 ヘッダは装丁がかわいかった本。

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