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サッちゃん

「サッちゃん」という童謡。
私は幼少期、あの歌が苦手でした。
2番の
“だけどちっちゃいからバナナをはんぶんしか食べられないの
かわいそうね サッちゃん”
という歌詞が、
少食だった当時の自分への悪口のように感じて。

よく食べるいとことは対照的に
どう頑張ってもすぐお腹がいっぱいになってしまう私。

祖母の家に遊びに行った時のことです。
祖母と近所の方の会話を耳にした私。
これを聞いてますますサッちゃんという歌が苦手になりました。

「⚫︎⚫︎(いとこ)はよく食べて偉いよ。
 蕗衣は食べなくてね。
 ⚫︎⚫︎はご飯山盛り2杯は食べるよ、
 本当にいい子。
 蕗衣はね、茶碗1杯だって食べないよ。」

祖母に悪気がないのはわかります。
が、傷付いたんですね。
後から生まれたいとこ、性別も同じ。
比べられた、劣っていると言われたような気がして嫌だったのです。

というのはいいとして
なぜ“サッちゃん”の話かと言いますと
この歌って一体誰目線で歌ってんの問題が
私の中で浮上したので取り上げたわけです。

3番の歌詞のはじめの方を失念していて
“だけどちっちゃいからぼくのことわすれてしまうだろ”
だけを思い出して
離婚か単身赴任かでサッちゃんと離れる父親目線の歌なのでは?
と唐突に思ったのです。

そこでこの歌の作詞家は誰なのかを検索。

阪田寛夫さんという方であることが判明。
2005年までご存命でした。

…作詞家が判明した途端誰目線で書かれた詩なのかがわかりました。

まず“サッちゃん”って何者なの?

阪田さんが幼稚園に通っていた頃に出会った、
1歳年上の女の子。

要するに、この歌は
年下の、幼稚園に通う男の子目線で書かれたものであることがわかりました。

なるほど。
とは言えですよ。
3〜5歳の子どもがこんなことを思うのか?
という疑問は拭えないわけです。

たぶん、
当時出会ったこの“サッちゃん”を
大人になった阪田さんが回想して
「大丈夫かな?」
と心配している歌なのではないでしょうか。

それこそ真相はわかりません。
わからないからいいんです。

詩でもなんでも
誰かの作ったものって、
わからないからいいんです。

わからないから好き勝手考えを膨らませることができる、それが魅力です。

でも一つ言わせてください。
バナナ、はんぶんしか食べられなくても可哀想ではないです。

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